研究課題/領域番号 |
22K05586
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
爲重 才覚 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (20725006)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | パンコムギ / タルホコムギ / 気孔 / ナチュラルバリエーション / 顕微鏡 / 機械学習 / 顕微鏡画像解析 |
研究開始時の研究の概要 |
気孔は植物の光合成や乾燥耐性に関わる重要な機能を担う。作物の気孔の密度とサイズを育種により最適化するためには未だ様々な基礎的知見が不足している。本研究では異質六倍体作物であるパンコムギの気孔形質の改変を見据えて、野生二倍体タルホコムギ集団の気孔形質の多様性の解明と、それらを六倍体パンコムギに導入した場合の気孔形質の遺伝様式を解明する。そして気孔形質を制御する遺伝子座の探索と機能解析を行い、実際の作物品種への応用の道を拓く。本研究では並行して表皮形質を計測するための顕微鏡システムの高精度化と汎用化を進め、本研究を効率的に進めるとともに、広範な植物種での気孔の研究に貢献する。
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研究実績の概要 |
気孔は植物の光合成や乾燥耐性に関わる重要な機能を担う。作物の気孔の密度とサイズを育種により最適化するために、特に異質六倍体作物であるパンコムギのための遺伝資源として、本研究では祖先種の一つである野生二倍体タルホコムギを利用する。二倍体タルホコムギ集団の気孔形質の遺伝的多様性を調べその特性を明らかにするとともに、タルホコムギから六倍体パンコムギへ形質が表皮の細胞レベルでどのように遺伝するかを調査し、コムギ育種への応用可能な材料を提供することを目指している。また並行して顕微鏡を用いた形質調査において汎用で有用な顕微鏡システムの開発の一環として、計測システムの高精度化、高機能化にも取り組む。2023年度末までにタルホコムギ集団および合成パンコムギ集団について対象系統数の複数シーズンの葉サンプルの収集を完了した。並行して表皮の顕微鏡画像データの収集も進め、それらの画像から気孔密度、気孔サイズ等のデータを自動取得するための深層学習を進め、予備的ながら良好な結果を得た。 また他の研究者と共に、六倍体パンコムギは二倍体種に比べてNGS解析の精度低下とコスト増が以前より問題でゲノミクス研究の妨げであったが、精度とコストを両立する解析技術を開発して論文発表したこと、植物の遺伝子解析一般に有用な細胞実験技術開発を進めて、基本的開発を完成させたこと、コムギではないが倍数体植物のモデルとなる植物について、画像解析によって倍数体種と祖先二倍体種との形質を定量的に比較し類似性を解明する手法を開発したこと、などの共同研究も本研究の目的に資するとともに関連分野の研究に貢献する成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにタルホコムギ集団およそ200系統を2シーズン分、それらを利用した合成パンコムギ集団およそ80系統1シーズン分の表皮の顕微鏡画像データを収集した。またそれらを画像解析に供することで気孔密度、気孔サイズ等のデータを得るため、気孔画像検出の教師データ作成と深層学習を進めた。このとき気孔だけでなく毛・突起の画像も同時に検出することで総合的な検出精度を高めることを目指して気孔以外の毛などの教師データ作成も実施し、現在深層学習の予備的な結果を得ている。正確な遺伝形質の調査のためタルホコムギ集団、合成パンコムギ集団ともに複数シーズン分のデータ収集および解析を目指しており、最低限の数である2シーズン分のサンプル採取は完了した。タルホコムギおよび合成パンコムギを合わせて大規模な系統集団であるが順調にデータを収集できており、解析の準備も進んでいる。 またGWAS等による遺伝子座の同定を見据えて、合成パンコムギとは別の普通系パンコムギ集団のデータを利用することができたため、これをテストケースとして利用しQTL解析を行い、良好な結果が得られることを確認した。深層学習などを利用した自動データ収集は、効率的である反面人間による計測に比べて精度が劣ることは懸念事項であるが、このQTL解析によって本研究の自動計数システムが、遺伝学的に有用なデータを提供できることを示している。 他に、モデル植物を利用したコムギ類の遺伝子機能解析も目指しているが、シロイヌナズナを利用した精密な遺伝子機能解析の技術基盤を開発して論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにタルホコムギ集団および合成パンコムギ集団の葉のサンプル追加採集と顕微鏡画像データの収集を継続し、当面の目標である3シーズン分の収集を完了する。研究協力者(神戸大学,松岡由浩教授)の協力を得てタルホコムギの調査対象系統数をさらに拡充する目処が立っており、これについても形質データを収集する予定である。 一方で、タルホコムギの表皮の自動計測のため、画像から気孔および毛を計数、計測する深層学習モデルの構築は一旦完了したので、その精度評価を行い必要に応じて精度向上を検討しつつ、タルホコムギ集団の気孔形質等の計測を進める。そしてその結果から各系統の採取地の地理的データとの関連を解析する。合成パンコムギ集団についても並行して同様に計測を進め、親系統の二倍体形質との関連性を調べ、遺伝特性を解明する。また遺伝子座の同定を目指してタルホコムギ集団のGWAS解析を行う。
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