研究課題/領域番号 |
22K05588
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 南九州大学 |
研究代表者 |
陳 蘭庄 南九州大学, 環境園芸学部, 教授 (40284822)
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研究分担者 |
山形 悦透 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00600446)
杉田 亘 南九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10503071)
津釜 大侑 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10726061)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アポミクシス / ギニアグラス / シロイヌナズナ / ASG-1遺伝子 / イネ / 多胚嚢形成 / 多胚形成 / 遺伝子組み換え体 / ASG-1 遺伝子 / 胚的発育機構 / 全ゲノムシーケンシング / ゲノム編集(CRISPR/Cas9) / ASG-1 / 無性生殖 / 雑種固定 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はイネ科牧草ギニアグラスを用いてアポミクシスを引き起こす生殖幹細胞の存在、その出現時期に特異的に発現する遺伝子(ASG-1)の捕捉及びその機能解析を行っている。HSP prom.::ASG-1::GFPをシロイヌナズナに導入した結果、多胚嚢形成と多胚形成というアポミクシス現象が見つかった。本研究では、HSP prom.::ASG-1::GFPを用いて、1)組換えシロイヌナズナにおける多胚嚢と多胚形成の発生機構の解明;2)組換えギニアグラスの作出とその作用機構の解明;3)組換え四倍体イネの作出と機能解析を行い、ASG-1の胚的発育機構、いわゆるアポミクシス現象の解明とその応用的展開を目指す。
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研究実績の概要 |
アポミクシスは、母親の遺伝子型だけが子供に伝わる生殖様式である。この現象を実利用できれば、一代雑種の固定などへの応用が可能となるなど、「緑の革命」以上の経済効果が期待されている。我々はイネ科牧草ギニアグラスを用いてアポミクシスが特異的に発現する遺伝子(ASG-1)の捕捉及び機能解析を行っている。HSP prom.::ASG-1::GFPをシロイヌナズナに導入した結果、アポミクシス様現象が見つかった。本研究では、HSP prom.::ASG-1::GFPを用いて、1)組換えシロイヌナズナにおける多胚嚢と多胚形成の発生機構の解明;2)組換えギニアグラスの作出とその作用機構の解明;3)組換え四倍体イネの作出と機能解析を行い、ASG-1の胚的発育機構の解明とその応用的展開を目指す。 1)組換えシロイヌナズナにおける多胚嚢と多胚形成の発生機構の解明:本年度は、確立した諸方法を駆使して、非組み換え体と組み換え体系統を育てて、植物体の異なる生育時期にヒットショックをかけたうえ、サンプリングの時期別にサンプルを採集し、固定して観察に用いた。それによってヒットショックの作用が、植物体生育のどの時期に働くかを解明している。 2)組換えギニアグラスの作出とその作用機構の解明:本年度は、ギニアグラスから年中に出てくる脇芽の葉鞘を使って、植物体再生系を確立した。それらの培養系を用いて、構築したバイナリベクターHSP prom.::ASG-1::GFPが入ったアグロバクテリウム法による遺伝子組み換えギニアグラスを作成中。 3)組換え四倍体イネの作出と機能解析を行い、ASG-1の胚的発育機構の解明とその応用的展開を目指す。本年度では、新しい種子を調達した。それを使って構築したバイナリベクターHSP prom.::ASG-1::GFPが入ったアグロバクテリウム法による遺伝子組み換えイネを作成中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)組換えシロイヌナズナにおける多胚嚢と多胚形成の発生機構の解明:本年度は、確立した諸方法を駆使して、非組み換え体と組み換え体系統を育てて、植物体の異なる生育時期にヒットショックをかけたうえ、サンプリングの時期別にサンプルを採集し、固定して観察に用いた。それによってヒットショックの作用が、植物体生育のどの時期に働くかを解明している。 2)組換えギニアグラスの作出とその作用機構の解明:本年度は、ギニアグラスから年中に出てくる脇芽の葉鞘を使って、植物体再生系を確立した。それらの培養系を用いて、構築したバイナリベクターHSP prom.::ASG-1::GFPが入ったアグロバクテリウム法による遺伝子組み換えギニアグラスを作成中。 一方、本年度の令和5年度文部科学省科学研究費 学術変革領域研究「先進ゲノム支援」を申請して採用された。これまでの結果は以下の通りである。イネ科牧草ギニアグラスアポスポリー性系統からPacBioシーケンサーによりHiFiロングリードを取得いただき、予め申請者が取得していたIlluminaシーケンサー由来ショートリードと合わせてアッセンブリーを行い、当該系統の全ゲノム配列を決定いただいた。 3)組換え四倍体イネの作出と機能解析を行い、ASG-1の胚的発育機構の解明とその応用的展開を目指す。初年度では、ジーンバンクより入手したイネ四倍体数品種を用いてIn Vitro培養で成熟種子よりカルス形成が確認された。しかし、入手した稲の種子が古くなったため、カルスの形成能力や再分化能力も弱かったことが分かった。本年度では、改めて関係機関に申請して新しい種子を調達した。それを使って構築したバイナリベクターHSP prom.::ASG-1::GFPが入ったアグロバクテリウム法による遺伝子組み換えイネを作成中。
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今後の研究の推進方策 |
1)組換えシロイヌナズナにおける多胚嚢と多胚形成の発生機構の解明については、新しい観察法に加えて、異なった植物発育時期をヒットショック処理したサンプルの使用によって、アポミクシスらしい現象である多胚嚢と多胚形成の発生機構の詳細な解明が期待される。 2)組換えギニアグラスの作出とその作用機構の解明については、ギニアグラスの培養系を用いて、HSP prom.::ASG-1::GFPが入ったアグロバクテリウム法と、ゲノム編集(CRISPR/Cas9)コンストラクトの両方より、ASG-1の組み換え体を作出して、人工気象室での育成などを経て、(1)植物の形態学的な違いの解明と、(2)生殖成長の蕾や花をサンプリングして、微分干渉顕微鏡による観察を行い、ASG-1遺伝子の機能解析を行う予定。 また、令和5年度「先進ゲノム支援」により、解明したギニアグラスの全塩基配列情報を生かして、ASG-1遺伝子に関する情報、例えば、プロモーターの捕捉、上流と下流の遺伝子領域の解明、同じイネ科のイネゲノムとの比較などによって、ASG-1遺伝子の機能解析が一層スムーズになり、新たな関連遺伝子の捕捉が期待できる。さらに有性生殖ギニアグラス系統の全塩基配列を解明して(令和6年度「先進ゲノム支援」を申請している)、解読済のアポミクシス系統との比較によって、植物共通の有性生殖の仕組みの解明が期待できる。 3)組換え四倍体イネの作出と機能解析を行い、ASG-1の胚的発育機構の解明とその応用的展開を目指すについては、In Vitro培養で二倍体と四倍体イネの植物体再生系を使って、「先進ゲノム支援」で解明されたASG-1遺伝子自身のプロモーターを使ったASG-1の組み換え体を作出する。そこで、あたらしいプロモーターの作用のもと、ASG-1遺伝子とアポミクシス現象の出現とのインタラクションが解明されることを期待したい。
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