研究課題/領域番号 |
22K05603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
肥後 昌男 日本大学, 生物資源科学部, 専任講師 (80708008)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | トウモロコシ / 土壌微生物叢 / 耕起管理 / 土壌硬度 / 不耕起 / 耕起 / 根圏環境 / 微生物共生 / 土壌微生物 / アーバスキュラー菌根菌 / 群集構造 / ネットワーク / アンプリコンシーケンス / 耕起法 / 根圏微生物叢 |
研究開始時の研究の概要 |
土壌圏は多様な根圏微生物の菌糸ネットワークが構築されており,植物の生育に不可欠な土台であることは言うまでもない。しかし農地では耕耘による根圏微生物叢の菌糸ネットワークが破壊される。このことから,攪乱に対する根圏微生物叢の姿を包括的に理解することは根圏微生物を利用した栽培技術開発の一助になると考えられる。本申請課題では攪乱強度の異なる耕起体系から,1)根圏微生物叢全体を左右する中核微生物の選抜,2)トウモロコシ強靭化を制御する根圏微生物叢を基盤とした有用な栽培体系の構築に向け重要な要因の整理,を試みる。
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研究実績の概要 |
研究代表者は,土壌微生物に影響を与える様々な要因の中で,耕起による土壌攪乱が微生物叢の構成やその多様性に影響を与える主な要因であることに気づいた.これまでも,土壌の機械的攪乱,土壌の圧縮,栄養源への接触機会の減少など,様々な要因が土壌微生物叢やその多様性の変化に関連していることがいくつか報告されている.このように,耕起処理による土壌攪乱が微生物叢決定に果たす役割は先行研究によって報告されてきたが,耕起処理だけでなくトウモロコシ側の作物遺伝子も含めて微生物叢が制御されている可能性がある.本研究では微生物叢を基盤とする植物成長促進技術の開発を目指し,異なる耕起処理で栽培されたトウモロコシの根内と根圏土壌を対象に,植物成長促進に秀でた土壌微生物集団(叢)を探索する.次世代シーケンスによる微生物叢の網羅的解析や遺伝子工学的実験を通して,植物成長促進と微生物叢を支える分子基盤を解明するとともに,それらを分子基盤とする持続的農業生産技術の実践に貢献する技術の開発を目指している. 本年度においては,まず,攪乱強度の異なる耕起処理による土壌特性(化学生,土壌硬度)と生育量の関係性を評価した.また,土壌微生物叢全体を把握するため,耕起後土壌,生育初期(第5葉期)のトウモロコシ根圏土壌と根内の微生物叢(AM菌,細菌,真菌)をアンプリコンシーケンス解析から調査した.本研究により,トウモロコシ地上部の生育において,栄養生長期と黄熟期の地上部乾物重は耕起強度で有意に異なることが示され,攪乱強度が強いほど生育が旺盛(ボトムプラウ>ロータリ>ディスク>不耕起区)であることを確認した.また,土壌,根・根圏土壌の微生物叢(AM菌,細菌,真菌)が耕起処理で異なることが判明した.これらの結果は,トウモロコシ生育の強靭化に関わる中核微生物集団を解明するための重要な手掛かりである可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究自体は令和4年度とは異なり,ほぼ当初の計画に沿って進んでおり,この点に関する不安はない.前述のように,本年度においては,耕起処理が土壌特性に及ぼす影響を精査することで,根圏環境の変化を介した微生物叢の形成が,土壌・根圏から地上部への養分供給に重要な役割を果たしている可能性がある.また,前年度の成果をもとにバイオインフォマティクス解析の最適化に取り組み,微生物叢の変動を可視化することで,根圏環境における微生物叢の形成における耕起処理やその外部・内部刺激に応答する微生物集団を特定しつつある.このような微生物叢を制御する根圏環境や,それが土壌や根圏環境における微生物叢の形成についての研究項目に関しては,順調に解析が進んでいる.一方,トウモロコシの生育に寄与する微生物叢の選抜とその決定因子に関連した研究項目に関しては,アンプリコンシーケンス解析を用いた微生物叢の調査は概ね順調に進展しているものの,トウモロコシの養分吸収や生育に関連する具体的な選抜方法については,バイオインフォマティクスによる解析方法を再検討し,年次変動を踏まえて微生物叢データの再現性を確認したうえで,慎重に進める必要があるものと判断している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,耕起処理を含めた環境因子が植物根や表面に存在する微生物叢の組成に影響を与えることがわかっている.しかし,トウモロコシ生産体系において,耕起処理が土壌中やトウモロコシの根や根圏に存在する微生物叢と多様性に及ぼす影響に関する知見は限られている.そこで,研究代表者は,前述したように,土壌,トウモロコシの根・根圏土壌の微生物叢(AM菌,細菌,真菌)が耕起処理で異なることが判明している.さらに,トウモロコシの根を取り囲む根圏の微生物群集の豊富さ,多様性,分類群の相対的存在量が隣接する根圏に含まれない土壌領域とは大きく異なることを明らかにしている.令和6年度(3年目)には,令和5年度と同様にトウモロコシ生育の強化に関わる中核微生物叢の解明を目指し,下記の項目を中心に研究を進めていく. ①アンプリコンシーケンス解析により,土壌,トウモロコシの根,根圏土壌の細菌,真菌,AM菌の群集構造を網羅的に調査する. ②圃場実験については,耕起処理後の土壌硬度と土壌,トウモロコシの根,根圏土壌中の微生物叢の違いとトウモロコシの養分吸収,生育・収量との関連するデータのさらなる蓄積を目指す. ③土壌環境データと作物生育データから土着微生物叢の機能を最大化する要因の選抜に最適なデータ解析方法を検討する. 以上より,3年目の令和6年度は,室内・フィールド実験を実施すると共に,バイオインフォマティクス解析の最適化等を行い,中核微生物集団の関わる具体的な要因やそれらを選抜する条件・整理に取り組む予定である.さらに,土壌,根圏微生物叢を介した作物への養分供給が微生物叢の形成に果たしている役割の解明を目指す予定である.今後,研究成果を着実に出すために助成金を使用する方策を令和5年度と同様に取る.
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