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共生細菌による寄生蜂のオスのいらない繁殖様式の機構解明と人為的誘導手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05648
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分39040:植物保護科学関連
研究機関静岡大学

研究代表者

田上 陽介  静岡大学, 農学部, 准教授 (60426476)

研究分担者 杉本 貴史  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 契約研究員 (20726707)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
キーワード寄生蜂 / 産雌性単為生殖 / 共生細菌
研究開始時の研究の概要

農業現場では、減農薬・有機農業取組みの急加速が求められている。生物農薬、中でも害虫の卵や若齢幼虫を駆除する寄生蜂は、農作物の商用生産に適した特性を有し、汎用化に向けた利便性向上・コスト削減が希求される。研究代表者らは 細胞内共生細菌による生殖操作の活用が課題克服に有効と考え、研究基盤整備を進めてきた。本研究課題では細胞内共生細菌による生殖操作(産雌単為生殖化)への関与が想定される3つの現象からのアプローチを中心に共生細菌-寄生蜂間相互作用の全貌に迫る。また、遺伝子機能解析技術を活用し、人為的TP誘導にチャレンジする。これらの研究を通じ、画期的新規生物農薬開発の道筋を示す。

研究実績の概要

生物農薬の中でも特に有効な寄生蜂は、その汎用化に向けた利便性向上やコスト削減が希求される。このような状況において、特に共生細菌により宿主寄生蜂の単為生殖化誘導という現象はその応用が特に優れたツールとなると考えられる。そこで本研究は共生細菌による生殖操作(単為生殖による全メス化:Thelytokous Parthenogenesis:TP)の活用に向けて人為的誘導の研究基盤の整備を目的としている。
①寄生蜂の性決定機構の推測 寄生蜂の性決定機構には様々な説があり、種によって異なると考えられている。なかでも2段階操作仮説というのが近年提唱されており、産卵された卵が単数体から2倍体になり、さらにメス化が働くことでメスになるという機構である。まず、他の昆虫でも見られ普遍的に保存されている性決定遺伝子を寄生蜂から網羅的に探索し、性決定カスケードを探索した。次に、性決定遺伝子の発現について受精卵、未受精卵、精巣で発現調査しwom遺伝子が受精卵と精巣のみで発現し、最下流遺伝子dsxのスプライシングパターンはオスとメスとで異なっていた。以上のことから性決定相同遺伝子は機能しており、予測されたカスケードと一致していると推測された。
②ゲノムの刷り込みによるメス化の検証 寄生蜂の性決定機構にゲノムのメチル化が関わっているとされており、Wolbachiaがゲノム刷り込みに関わっているか検証した。その結果Wolbachiaは雌親によるwomへのゲノム刷り込みを解除か阻害することでメス化を誘導していることが示唆された。
③染色体倍化に関わる遺伝子の探索 WolbachiaにはTP誘導以外にも様々な生殖操作を行っており、共通していると思われる因子としてcif遺伝子があるためTP誘導にも関与しているかcif遺伝子の探索を行った結果相同な遺伝子を複数種の寄生蜂で確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タマゴコバチの飼育・増殖は行えており、寄生蜂のサイズが極端に小さく、また大量に集めることが難しいため、時間をかけてではあるが順調に採集に取り組むことができ、実験を行っている。性決定機構解析については、重要となる遺伝子のスクリーニングはおおむね終了しており、さらに定量的な発現解析や、機能解析を進める準備ができている。
他の寄生蜂についても飼育は順調で、実験を行う基礎的な準備は整っている。
この研究では①寄生蜂の性決定遺伝子の探索と性決定カスケードの推測を行い、②Wolbachiaによるゲノム刷り込みの検証により寄生蜂のメス化メカニズムの推測を行う。さらに③2倍体化因子の候補探索を行った。Wolbachiaには細胞質不和合やオス殺しなどのTP誘導以外の生殖操作が知られており、それらの誘導因子としてcif遺伝子が関わっているとされている。そこで、cif遺伝子について探索を行った結果相同性の高い遺伝子を検出することができた。この結果と他の生殖操作を行うWolbachiaの特徴とを含み考察するとWolbachiaは宿主ユビキチンシステムへの干渉が行われている可能性が示唆された。これらの成果をもとに性決定カスケードの解明、重要遺伝子の働きの解明、メチル化および2倍体化の調査を行う準備は整っている。

今後の研究の推進方策

来年度は最終年度となるため、これまでの研究をさらに推し進め、以下のような研究を行うことでこの課題をまとめる。
① 性決定に関わる遺伝子カスケードを明らかにするうえで寄生蜂の種類による違いを明らかにすることは重要であり、全ゲノム解析を行うことで網羅的な探索が可能となる。研究対象としている寄生蜂のうちいまだ全ゲノムが明らかとなっていない、タマゴコバチとヒメコバチについては全ゲノムの解析を進めている。得られたデータを解析することで、3種に共通する遺伝子、特徴的な遺伝子を詳細に明らかするよう計画している。
② 得られた重要と考えられる遺伝子、特にwomについてRNAiやCRISPRによる機能解析を行う。さらに性決定に関わると考えられる寄生蜂側の遺伝子、共生細菌側の遺伝子を対象とすることでそれら遺伝子の働きを明らかにすることを計画している。
③ メチル化改変が集中するゲノム領域に座上する遺伝子配列のスクリーニングを行う。これにより共生細菌が持つエピゲノム改変能が宿主にどういった機能を持つ遺伝子、に、どのように働きかけるのかを明らかにする。
④ 2倍体化のメカニズムについてはタマゴコバチに感染し、産雌性単為生殖化しているWolbachiaの持つcif遺伝子は他の生殖操作においても、宿主のプロテアソーム系に作用している可能性が見られた。また、対象としている寄生蜂にはRickettsiaに感染している種も含まれており、cifと相同性のある遺伝子が存在する可能性もあり、検証する。また、2倍体化のタイミングについてはこれまでに明らかになった2倍体化に関わると思われる候補遺伝子の探索を発生ステージごとに発現遺伝子の解析により行う。2倍体化にユビキチンシステムへの干渉が関わっている可能性もあり、検証を行う。以上をまとめ性決定メカニズムの概略を明らかにする。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] Ghent University(ベルギー)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] Institut Teknologi Bandung(インドネシア)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Bacterial community and genome analysis of cytoplasmic incompatibility-inducing Wolbachia in American serpentine leafminer, Liriomyza trifolii.2024

    • 著者名/発表者名
      Ajeng K. Parmono, Ardhiani K. Hidayanti, Yohsuke Tagami, Hiroki Ando
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 15

    • DOI

      10.3389/fmicb.2024.1304401

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Autophagic chemicals effect for male-killing Wolbachia, Atg8 and TOR genes in Ostrinia scapulalis (Lepidoptera:Crambidae)2023

    • 著者名/発表者名
      Achmad Gazali, Takafumi N Sugimoto, Ardhiani Kurnia Hydayanti, Yohsuke Tagami
    • 雑誌名

      Applied Entomology and Zoology

      巻: 58 ページ: 161-169

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of quorum sensing inducers and inhibitors on male-killing Wolbachia, the endosymbiont of the adzuki bean borer, Ostrinia scapulalis (Lepidoptera: Crambidae)2023

    • 著者名/発表者名
      Ardhiani Kurnia Hydayanti, Takafumi N Sugimoto, Achmad Gazali, Yohsuke Tagami
    • 雑誌名

      Applied Entomology and Zoology

      巻: 58

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Autophagic chemicals effect to Atg8 and rice stripe virus relative expressions, and Wolbachia relative density in Laodelphax striatellus (Hemiptera: Delphacidae)2022

    • 著者名/発表者名
      Achmad Gazali, Ardhiani Kurnia Hydayanti, Yohsuke Tagami
    • 雑誌名

      Turkish Journal of zoology

      巻: 46 号: 4 ページ: 351-360

    • DOI

      10.55730/1300-0179.3086

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞内共生細菌による産雌性単為生殖化機構の探索2024

    • 著者名/発表者名
      大畑裕太・杉本貴史・田上陽介
    • 学会等名
      日本昆虫学会・応用動物昆虫学会合同大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] The leaf miner Liriomyza sativae (Diptera: Agromyzidae) acquired CI- resistance incorporating the Wolbachia genome2023

    • 著者名/発表者名
      Yuta Ohata, Takafumi N Sugimoto, Akiko Fujiwara, Hisashi Anbutsu, Keigo Ide, Yohsuke Tagami
    • 学会等名
      Wolbachia conference 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ハモグリバエ類に感染したボルバキアと、そのファージ遺伝子の宿主への水平転移の分布2023

    • 著者名/発表者名
      大畑裕太・杉原音羽・杉本貴史・田上陽介
    • 学会等名
      東海昆虫研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Effect of quorum sensing inducer and inhibitor on male killing induced by Wolbachia in Adzuki bean borer, Osttrinia scapulalis (Lepidptera: Crambidae)2023

    • 著者名/発表者名
      Ardhiani Kurnia Hydayanti, Takafumi N Sugimoto, Achmad Gazali, Yohsuke Tagami
    • 学会等名
      Annual meeting of Applied Entomology and Zoology
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Effect of autophagic chemicals to Atg8, TOR, and Wolbachia density within Ostrinia scapulalis (Lepidoptera: Crambidae)2023

    • 著者名/発表者名
      Achamd Gazali, Takafumi N Sugimoto, Ardhiani Kurnia Hydayanti, Yohsuke Tagami
    • 学会等名
      Annual meeting of Applied Entomology and Zoology
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] トマトハモグリバエはボルバキアゲノムを取り込むことでCI抵抗性を獲得した2023

    • 著者名/発表者名
      大畑裕太、杉本貴史、藤原亜希子、田上陽介
    • 学会等名
      日本応用動物昆虫学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] The leafminer Liriomyza sativae (Diptera: Agromyzidae) acquired CI resistance by incorporating the Wolbachia genome2023

    • 著者名/発表者名
      Yuta Ohata, Takafumi N Sugimoto, Akiko Fujiwara, Hisashi Anbutsu, Keigo Ide, Yohsuke Tagami
    • 学会等名
      Wolbachia conference 2023
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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