研究課題/領域番号 |
22K05653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松井 英譲 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (20598833)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Type III Effector / Plant immunity / Pseudomona syringae / 植物免疫 / エフェクター / タンパク質間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
植物が備える防御機構の一つ、Pattern-triggered immunity (PTI) 構成因子は病原体の病原力因子(エフェクター)の標的と考えられている。病原体のエフェクターを分子プローブとしたPTI構成因子の同定が試みられてきたが、エフェクターー宿主因子の相互作用は不明な点が多い。本研究では、Pseudomonas syringae pv. tabaciのTypeIII effectorの標的因子の同定に成功した。本研究課題では、effectorが標的とする細胞膜PTI構成因子の機能解明を通じて、病原菌の感染戦略と植物の抵抗性誘導機構の一端を明らかにする。
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研究実績の概要 |
植物の病害に対する抵抗性品種の育成は、作物の収量と品質の確保に向けた重要な研究課題である。植物の抵抗性誘導機構の理解は、抵抗性作物の分子育種そして病原体制御技術の開発のために欠かせない。植物が備えるPattern-triggered immunity (PTI) 構成因子は病原体の病原力因子(エフェクター)の標的とされることから、エフェクターを分子プローブとしたPTI構成因子の同定が試みられているものの、未だ困難であると言わざるを得ない状況である。申請者は最新のプロテオミクス手法を活用し、エフェクター標的因子の高効率な同定系を構築し、Pseudomonas syringae pv. tabaciの病原力因子Effector J (仮称)の標的因子の同定に成功した。本研究課題では、Effector Jが標的とする細胞膜PTI構成因子の機能解明を通じて、病原菌の感染戦略と植物の抵抗性誘導機構の一端を明らかにすることを目指した。 本年度はEffector Jが標的とする宿主因子の同定に向けて、Alphafold2を用いたEffector-標的因子間の物理的相互作用のモデリング、Split GAL4 RUBY assayならびにBiFC assayによる物理的相互作用の検証に取り組んだ。また、Effector Jはシロイヌナズナでは非病原力因子として認識されることから、Effector J過剰発現植物の抵抗性について検証した。その結果、Effector J過剰発現体は親和性病原細菌 Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000に対して抵抗性を示し、病徴進展も抑制されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Type III effectorであるEffector Jの宿主標的因子の同定に向けて、TurboID systemを用いた相互作用因子を同定した。Effector Jの標的因子として、細胞膜上のPTI複合体関連因子が同定された。Effector Jは細胞膜に局在することから、本結果は妥当な結果であると推察された。そこで本年度はEffector Jと標的候補因子間の物理的相互作用の検証に取り組んだ。 細胞膜上の複合体が標的因子である場合、Yeast two hybrid screeningでは相互作用の検証が難しい可能性が高いと考え、物理的相互作用の検証に向けて、1) Split GAL4 RUBY assayの構築, 2) BiFC法を利用したスクリーニングを試みた。1)Split GAL4 RUBY assayについては、実験系構築に成功したものの、Effector Jと標的候補因子間の物理的相互作用の確認には至っていない。そのため、BiFC法を利用した物理的相互作用の検証を進めた。その結果、Protein kinase family proteinとの弱い相互作用が観察された。現在、再現性について解析を進めている。 次に、Effector Jはシロイヌナズナには非病原力因子として機能することから、Effector J過剰発現体の表現型を解析した。Effector J過剰発現体は矮性の表現型を示し、親和性病原菌であるトマト斑葉細菌病菌に抵抗性を示した。シロイヌナズナのEffector J認識機構の解明に向けて、部分長のEffector J過剰発現が引き起こす影響について解析を進めている
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今後の研究の推進方策 |
Effector Jは宿主細胞の細胞膜に局在する。一方で、Effector Jの細胞膜局在に必要なシグナル配列は明らかになっていない。また、Effector Jの細胞膜局在特性が物理的相互作用の解析で障壁となっている。本年度は、Effector Jの細胞膜局在に関わるシグナル配列の同定とEffector Jの機能に果たす役割について検証する。GFP-tag付きのEffector J発現ベクターシリーズは構築済みであり、Effector Jの細胞内局在に必要な領域を絞り込む。 Effector Jの相互作用因子の物理的相互作用の検証を進めたが、現時点で候補となる因子はProtein kinase family proteinのみであった。そこで、BiFC assayでの物理的相互作用の検証を進めると共に、Split GAL4 RUBY assayなども活用し、物理的相互作用について検証を進める。物理的相互作用が明らかにできた場合には、Protein kinase family proteinのVIGS解析に取り組む。 これまでにEffector J過剰発現体が示すETIの表現型について、シロイヌナズナが認識するEffector Jアミノ酸配列の特定を目指す。Effector Jの部分長を発現するシロイヌナズナについて、ホモ化系統の選抜を進めており、接種試験に向けた準備を進めている。
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