研究課題/領域番号 |
22K05659
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
近藤 真千子 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (40645975)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 植物病原細菌 / エフェクター / イネ / 免疫 / 病徴 / 植物 / 病気 / 細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
我々の研究で、褐条病細菌Acidovorax avenaeのイネ病原性K1菌株がイネ細胞内に分泌するエフェクターK-RHIFはイネの病徴を引き起こすことや、同様に分泌されるエフェクターAKSF1はイネでの免疫抑制能と病徴発現能を合わせ持つことなどを明らかにした。しかし、これらのエフェクターがどのようにイネの免疫反応を回避し病徴を発現するかは不明であることから、本研究ではA. avenaeによるイネの病徴発現機構を分子レベルで明らかにすることを目的として、K1菌株のRHIFやAKSF1のイネ細胞内ターゲットを明らかにし、イネの病徴発現機構を解明する。
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研究実績の概要 |
植物病原細菌Acidovorax avenaeのイネ非病原性N1141菌株のエフェクターであるRHIFはイネの免疫反応を誘導するが、イネ病原性K1菌株のRHIFはイネの病徴を引き起こす。また、K1菌株のAKSF1エフェクターは免疫抑制能と病徴発現能を合わせ持つ。本研究では、このようなエフェクターがどのようにイネの免疫反応を回避し病徴を発現するかについて分子レベルで明らかにすることを目的として研究を行った。 これまでの研究でN1141菌株のRHIFがイネの過敏感細胞死に関与し、K1菌株のRHIFは過敏感細胞死を回避している可能性が示唆された。そこで、今年度はRHIFのターゲットとなるイネタンパク質を免疫沈降や質量分析計を用いて同定するため、N1141菌株のRHIFとK1菌株のRHIFの発現タンパク質の発現と精製を行った。発現タンパク質に用いたGSTタグが過敏感細胞死誘導に影響を与えるかどうかについて調べたところ、GST-NRHIFを導入した細胞はNRHIFを導入した細胞と同等の細胞死が誘導されていた。このことからGST-NRHIFはNRHIFと同様のHR誘導活性を持つことが示された。また、GST-KRHIFを導入した細胞ではKRHIFを導入した細胞と同様に細胞死は誘導されないことも示された。 また、K-RHIFとAKSF1以外にも免疫反応誘導や病徴発現に関与するエフェクターを探索するため、これまでのエフェクター候補の中でTypeIII分泌装置やエフェクターなどの発現誘導に関与することが報告されているhrpXの発現制御下のエフェクターがどれかを調べることにした。K1菌株とN1141菌株のhrpX遺伝子挿入変異株を作製し、イネ培養細胞に接種したところ、過敏感細胞死を誘導しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の研究では、RHIFのターゲットとなるイネタンパク質を同定するため、免疫沈降や質量分析計を用いた同定を行うために必要なN1141菌株のRHIFとK1菌株のRHIFの発現タンパク質の発現と精製を行った。現在までにGST-NRHIFとGST-KRHIFの発現タンパク質の精製が完了した。また、RHIFのN末端側に付加したGSTタグがRHIFによる過敏感細胞死の誘導に影響を与えるかどうかも確認し、GST付加による影響がないことを確認できた。 また、KRHIFとAKSF1以外のエフェクターについて、K1菌株とN1141菌株のゲノム比較やTypeIII分泌予測から分泌されることが予測されたタンパク質の遺伝子のうち、TypeIII分泌装置やエフェクターなどの発現誘導に関与することが報告されているhrpXの制御下のエフェクターを探索することにした。まず、K1菌株と N1141菌株のhrpX遺伝子欠損株の作成を試みた。しかし、K1菌株のhrpX遺伝子欠損株が得られなかった。同じベクターで同様に作製したN1141菌株のhrpX遺伝子欠損株は取得できたため、K1菌株のコンピテントセルによるものと考えられるが、原因の特定には至っていない。そこで次に、hrpX遺伝子挿入変異株を作製することにした。作製したK1菌株とN1141菌株のhrpX遺伝子挿入変異株はイネの過敏感細胞死を誘導しないことが確認できたことから、これらのhrpX遺伝子挿入変異株をイネ培養細胞に接種してRNAを抽出し、今後RNA-seq解析を行う予定である。 さらに、AKSF1とKRHIFの二重欠損株を作製しているが、現在K1菌株の二回交差欠損株の作製が困難であるため、KRHIF欠損株にAKSF1の欠損用ベクターを導入して作製する予定である。K1菌株の各種欠損株の作製が進んでいないため、計画は遅れ気味と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、N1141菌株のRHIFとK1菌株のRHIFの発現タンパク質を用いて、まずは、イネ培養細胞の可溶性画分内に相互作用するタンパク質が存在するかどうかについてBiacoreを用いた分子間相互作用解析により明らかにする。さらに、相互作用タンパク質が存在することが明らかになった場合は、RHIFのターゲットとなるイネタンパク質について、免疫沈降や高分解能オービトラップ質量分析計を用いた同定を行う。また、イネ細胞内で発現させたGST-RHIF と相互作用するイネタンパク質についても同様に解析し、このタンパク質とのイネ細胞内での相互作用についても確認する。AKSF1エフェクターについてもRHIF同様に発現タンパク質を作製し、ターゲットとなるイネタンパク質の同定をRHIFと同様に行っていく。 さらに、AKSF1とKRHIFの二重変異体の作成を進行し、作製した二重変異体をイネに接種して病徴の変化などを観察し、病徴が現れなくなるかどうかを確認する。 また、hrpX遺伝子挿入変異株のRNAseq解析を行い、これまでのゲノム比較や分泌予測から得られたエフェクター候補の更なる絞り込みを行う。絞り込んだエフェクター候補タンパク質の遺伝子変異株をそれぞれ作製し、イネに接種することで、イネにおけるPAMP誘導性免疫反応抑制能や病徴発現能について調べる。
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