研究課題/領域番号 |
22K05675
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
高木 圭子 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (30401938)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 完全変態昆虫 / 昆虫生理学 / 内分泌 / 変態 / Critical Weight |
研究開始時の研究の概要 |
動物は種ごとにおおよその成体のサイズが決まっている。もしも体サイズに大きな差があれば、生殖や集団で生活する上で不利であり、体サイズの維持は種の維持に関わるといえる。成体のサイズを制御する機構はよくわかっていないが、例外的に昆虫では研究が進んでいる。幼虫が特定の体重に達すると、内分泌系の活性が変化し、蛹変態が誘導され、最終的に成虫のサイズが決定される。体重が内分泌系の活性を変化させる分子機構は十分に明らかになっていない。本研究は、体重が内分泌系を制御する機構に関わる具体的な分子を見出し、体のサイズの決定機構の全容を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
動物の成体には種特異的なサイズが存在することから、自身のサイズを認識して成長を制御する機構の存在が予想されている。しかしながら、サイズの増加の停止を把握するのは難しく、どのような機構でサイズを認識し成長を制御するのか、その詳細はほとんどわかっていない。例外的に、完全変態昆虫において、種特異的なサイズを規定する機構の存在が実験によって確認されている。完全変態昆虫では幼虫の間にサイズが大きくなり、蛹になるとそれ以上大きくならないことから、成長する期間を明確に判別できるためである。幼虫はCritical Weight (CW) とよばれる体重に到達すると蛹変態できるようになる。本研究では、最終的な体サイズを規定するCWを中心とした機構の解明を目的とした。 まずはCWを2.0mgと特定した。蛹変態を制御する内分泌系に関わる遺伝子群の発現量がCW前後に変化することをqPCRで確認した。次に、CWの情報を、内分泌系に伝える分子を探索するため、CWを境に発現量が変動している遺伝子をRNA-seq.によって2013得た。そのうち、変動が大きかった34遺伝子の発現量の詳細をqPCRで解析し、CWを境に発現量が変動する遺伝子を絞り込んだ。これらの遺伝子の中には、ホルモンで制御されて変態に関与するものが含まれると考えられる。そこで幼若ホルモン(JH)を投与した幼虫における遺伝子発現量をqPCRで解析した。CW到達後に発現量が上昇した遺伝子TC011180, TC031629, TC032196の発現量がJH投与によって低下した。蛹変態を誘導することが知られているE93も同様にJHで抑制されたことから、JHで抑制された3遺伝子も蛹変態の制御に関与している可能性がある。そこでこの3遺伝子およびTC011180をRNAiでノックダウンしたが、蛹変態に影響を与えるものは今のところ得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNA-seq.とqPCRによって候補遺伝子を得た。また、変態の制御をするホルモンの一つ、幼若ホルモンJHの投与によって発現量が増減する遺伝子を、qPCRで選出した。こうして得た候補遺伝子をさらに絞り込むためRNAiを中心とした解析を行った。まず候補遺伝子のRNAiによってCWが変化するか解析を試みた。当初は、CW直前の幼虫に、目的遺伝子の部分配列を持つ二本鎖RNA(dsRNA)を注射しRNAiを誘導した後、餌を除いて飼育し蛹変態への影響を解析しようとしたが、この方法ではほとんどの幼虫が死んでしまうことが分かった。そこで、解析方法を変更し、餌を十分に与えた状態で目的遺伝子のRNAiが蛹変態の割合が変化するか調べることにした。蛹変態に影響すると既に分かっている遺伝子E93のRNAiによって蛹変態が抑制されたことから、この実験系に問題は無いと考えている。この実験系にて候補遺伝子の探索を、昨年度に引き続き行っているが現在までに、蛹変態に影響があった遺伝子は得られていない。そこで、候補遺伝子には含まれていないものの、栄養に関連する分子であるtarget of rapamycinおよびインスリン受容体遺伝子も解析の対象に追加した。その結果、これらの遺伝子は蛹変態に影響を与えたものの、体重に依存しなかったことから、想定している制御機構の最上流に位置する分子であると考えている。 また、解析の過程で、想定とは異なる興味深い現象を確認した。終齢幼虫であってもCW以上の体重の個体の約2割が、絶食下にも関わらず過剰な幼虫脱皮をした後、蛹脱皮した。この現象は、停留脱皮(休眠幼虫が繰り返す幼虫脱皮)を想起させる。おそらく絶食下でもJHが上昇もしくは維持された後に分解され、エクジステロイド濃度が上昇することで、幼虫脱皮と蛹脱皮が誘導されたと考えられ、現在これを解析している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の候補遺伝子の絞り込みはおおむね終わった。今後はRNAiによって蛹変態の割合が変化するか、および内分泌系の変化が起こるかどうか、などの解析が中心となる。今年度は引き続きそれらの解析を遂行する。 また、実験当初に候補遺伝子を選ぶために行ったRNA seq.であるが、詳細な解析のため、体重を前回よりも細かく分類して再度比較するため、改めてRNA seq.を検討している。 想定とは違った現象が確認された。本研究の目的と関係するかはわからないが、体内で何が起きているか、内分泌学的および分子生物学的に解析する。
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