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殺蚊Btトキシンの小孔形成と殺虫活性-殺虫活性コントロール技術の開発に向けて-

研究課題

研究課題/領域番号 22K05676
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分39050:昆虫科学関連
研究機関岡山大学

研究代表者

早川 徹  岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 助教 (30313555)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード殺虫トキシン / 蚊の防除 / Bacillus thuringiensis / Mpp46Ab / Cry4Aa / 電気生理学的解析 / アカイエカ幼虫 / 人工脂質平面膜 / 微生物殺虫剤 / 小孔形成トキシン
研究開始時の研究の概要

土壌細菌Bacillus thuringiensisが産生するBtトキシンは、ヒトや環境に優しい微生物殺虫資材として利用されている。Btトキシンは感受性昆虫幼虫の中腸上皮細胞に小孔を形成して破壊すると考えられるが、「小孔形成」から「殺虫活性」に至るまでの道筋が未だに明らかでない。Btトキシンが形成する小孔の如何なる性状が殺虫活性の決定要因たりえるのか?この問いに答えるべく、本研究では様々なBtトキシンを対象に膜貫入領域を標的とする変異導入解析を進め、Btトキシン小孔の性状と殺虫活性の相関関係を明らかにする。最終的にはBtトキシンの殺虫活性をコントロールする技術の開発につなげる。

研究実績の概要

土壌細菌Bacillus thuringiensis由来の殺虫トキシンは小孔形成トキシンとして機能する。しかし「小孔形成」と「殺虫活性」の関連に不明な部分が多く、その解明が新規殺虫剤を開発する上での喫緊の課題となっている。課題解決のため、本研究では構造が異なる殺蚊トキシン(アエロリシン型のMpp46Abや3ドメイン型のCry4Aa)で小孔形成領域を標的とする変異導入解析を進めており、トキシン小孔のイオン透過性、特にカチオン選択性が殺虫活性と連動して変化することを観察している。特にMpp46Abの小孔形成βヘアピン構造(β8-β9)内に位置するK155残基はトキシン小孔のカチオン選択性、さらには殺虫活性を制御するためのホットスポットであることを示している。
本年度はMpp46AbのS153残基(K155近傍に位置する極性残基)を標的としたランダム変異体ライブラリを構築した。最終的に得られた11種の変異体についてアカイエカ幼虫を用いたバイオアッセイで解析した結果、殺虫活性が大幅に上昇した変異体(S153I)を見つかり、S153残基もK155残基と同様なホットスポットであることが考えられた。またMpp46Ab野生型は殺蚊Cry4Aaと協調して働き、殺虫活性が大幅に助長されることで知られるが、この効果が失われた変異体(S153FおよびS153L)も変異体ライブラリから見つけることができた。変異体トキシン小孔のイオン透過性を解析した結果、「殺虫活性」にはトキシン小孔の「シングルチャネルコンダクタンス」と「カチオン選択性」が、「Cry4Aaとの助長効果」にはトキシン小孔の「カチオン選好性」が連動して変化していた。殺虫トキシンの作用機構は小孔形成に基づくもので、トキシン小孔の性状によって様々な効果が発揮されていると示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度も昨年度に引き続き殺蚊Mpp46Abトキシンの小孔形成領域を標的としたランダム変異導入解析を行った。その結果、小孔形成β8領域に位置するS153残基を標的としたランダム変異体ライブラリからも「殺虫活性が大幅に上昇した変異体」を見つけることができた。変異体トキシン小孔の電気生理学的解析の結果から、殺虫活性がトキシン小孔のコンダクタンスやカチオン選択性(PK/PCl値)と連動することが判明した。この結果は以前作製したMpp46Ab変異体(K155EおよびK155I)での観察に類似しており、Mpp46Abの作用機構が主に浸透圧ショックであることを示唆していた。またトキシン小孔のイオン透過性が小孔形成領域の極性アミノ酸残基を置換することでコントロールできることを示唆していた。
一方、Mpp46Ab S153変異体をさらに詳しく解析した結果、本トキシンの特徴の一つである「殺蚊Cry4Aaとの助長効果」を喪失した変異体も発見することができた。本研究では「Cry4Aaとの助長効果」に連動する「トキシン小孔のイオン透過性」の変化も見つけており、「小孔形成」と「殺虫活性」の密接且つ複雑な関連性を明らかにしつつある。トキシン小孔の性状(イオン透過性)がトキシンの殺虫活性を反映する有効な指標になる可能性が強まっている。以上は本研究がおおむね順調に進展していると判断するに十分な成果と考えている。

今後の研究の推進方策

前年度までの結果からBt菌に由来するトキシンの殺虫活性は「小孔形成」に依存することが示唆されている。これはトキシン小孔の性状を以って殺虫活性が評価できることを示唆しており、新規殺虫トキシンの開発を大幅に簡略化・加速化できる可能性を示している。一方、トキシン小孔の性状(主にイオン透過性)をコントロールするには小孔形成領域全体を網羅的にカバーする解析、特にトキシン小孔のイオン選択性に関与する機能構造の特定などが必要と考えている。殺蚊Mpp46Abについては、解析が小孔形成領域の一部(β8)に留まっており、今後は膜貫入領域全体(β8-loop-β9)に拡げて、トキシン小孔の構造とイオン透過性の関係、さらにはイオン選択に関わる機能構造の特定を進める。またMpp46Abのようなアエロリシン型構造の殺蚊トキシンだけでなく、Cry4AaやCry11Baのような3ドメイン型の殺蚊トキシンについても同様の解析を進め、ホットスポットや機能構造の特定を進める。
トキシン小孔の性状で殺虫活性を評価する系を構築するためには、トキシン小孔の電気生理学的解析の効率化が必要となる。そこでアガロースで作製した支持体を用いて人工脂質膜を簡易に作製する方法の開発と、トキシン小孔解析への応用などデバイス開発に関わる基礎的な研究を進める。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Mutational analysis of the transmembrane α4-helix of Bacillus thuringiensis mosquito-larvicidal Cry4Aa toxin2024

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Hirokazu、Asakura Mami、Ide Toru、Hayakawa Tohru
    • 雑誌名

      Current Microbiology

      巻: 81 号: 3 ページ: 80-80

    • DOI

      10.1007/s00284-023-03602-8

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Random Mutational Analysis Targeting Residue K155 within the Transmembrane β-Hairpin of the Mosquitocidal Mpp46Ab Toxin2023

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki Midoka、Asakura Mami、Ide Toru、Hayakawa Tohru
    • 雑誌名

      Biology

      巻: 12 号: 12 ページ: 1481-1481

    • DOI

      10.3390/biology12121481

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Crystal structure of the in-cell Cry1Aa purified from Bacillus thuringiensis2023

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Junko、Abe Satoshi、Hayakawa Tohru、Kojima Mariko、Yamashita Keitaro、Hirata Kunio、Ueno Takafumi
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 685 ページ: 149144-149144

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2023.149144

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 新しい殺蚊トキシンMpp46Abが形成するチャネル小孔の変異導入解析2023

    • 著者名/発表者名
      早川徹、住奥きあら、今田愛海、朝倉真美、井出徹
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 殺虫Cryトキシンが形成するチャネル小孔の性状を簡単に解析するための方法2023

    • 著者名/発表者名
      奥田翼、竹内智哉、平野美奈子、井出徹、早川徹
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Bt菌が生産する殺蚊Cry46Abトキシンを高機能化する試み2022

    • 著者名/発表者名
      早川徹、住奥きあら、宮﨑美登香、朝倉真実、井出徹
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 細胞内結晶鋳型設計を志向したBt菌由来Cry1Aaの構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      田中潤子、安部聡、早川徹、上野隆史
    • 学会等名
      第16回バイオ関連化学シンポジウム名
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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