• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

ササラダニ類が産生する防御物質シアン化水素の生成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05683
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分39050:昆虫科学関連
研究機関京都先端科学大学

研究代表者

清水 伸泰  京都先端科学大学, バイオ環境学部, 教授 (30434658)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワードササラダニ亜目 / コイタダニ科 / 防御物質 / シアン化水素 / 生成機構 / 生合成 / ササラダニ / シアン化合物
研究開始時の研究の概要

ササラダニ亜目コイタダニ科の一種の外分泌物中に、猛毒のシアン化水素を検出した。シアン化水素はそのままの形では体内に蓄えられないため、その前駆物質の存在が疑われる。本研究では、シアン化水素の生成の原因となる前駆物質の化学構造を同定することを突破口として、防御物質の生成機構および生物機能の解明を試みる。シアン化水素の生成機構はヤスデ類で研究が進んでいるが、ダニ類では未解明であり、物質レベルでは新規な忌避剤・抗菌剤シーズとして、さらに生成機構に関わる酵素の有用性が認められれば、産業利用を視野に入れた生体触媒としての利用が期待できる。

研究実績の概要

ササラダニ類の化学防御に注目し、防御物質の探索を行うとともに、生成機構の解明を目的とする本研究において、今年度は以下のような実績をあげた。
1)昨年度の実績としてササラダニ亜目コイタダニ科に属するセンダンササラダニPhauloppia adjectraの油腺分泌物からセスキテルペン類のほかにシアン化合物を、また同科のサカモリコイタダニOribatula sakamoriiからはシアン化合物の類縁体とセスキテルペン類をそれぞれ同定した。シアン化合物を防御物質とする節足動物としてヤスデ類がよく知られているが、ヤスデはシアノヒドリンであるマンデロニトリルを分泌腺の貯蔵嚢に貯めて、体外に放出する際に反応室のリアーゼと混合することでシアン化水素が生成する。一方、ササラダニからシアン化合物は検出されたものの、実際にシアン化水素が生成するかは不明である。そこでササラダニ亜目コイタダニ科に属するセンダンササラダニ由来のシアン化合物の標品を用いて、シアン化水素への分解機構の検証を行ったところ、未知の酵素が関与していることが強く示唆された。
2)センダンササラダニの成虫および若虫におけるシアン化合物の生成量を定量したところ、本化合物は成虫特異的であることが判明した。
3)サカモリコイタダニからはセンダンササラダニ由来のシアン化合物の類縁体が見つかった。しかし、生息密度が低かったので、効率的に採集できる地点、採集方法の検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

センダンササラダニ成虫および若虫はケヤキの樹皮裏から採集した。ダニの油腺分泌物は成虫および若虫をヘキサンに浸漬することで抽出し、その抽出液をGC-MSで分析した。その結果、成虫からmandelonitrile octanoateが検出された一方で、本化合物は若虫からは検出されず成虫特異的な成分であることが明らかとなった。さらに成虫をすり潰すことによってシアン化水素が生成することをピクリン酸試験紙法で確認できたことから、シアン化水素の生成には酵素の関与が強く示唆された。サカモリコイタダニはセンダンササラダニと生息場所が異なり、腐植土やコケ中から採集できるが、生息密度は非常に低い。シアン化合物の定量や酵素実験を実施するためには頭数が不足していることから、随時、研究協力者により大阪、富山などから土壌やコケなどの材料を提供してもらい、ダニの分離作業を進めている。

今後の研究の推進方策

1) ヤスデ類がもつシアノヒドリンは特有のリアーゼによってシアン化水素に分解される。センダンササラダニで検出したシアン化物はエステルであり、シアン化水素に分解されるには2段階を要する。これらの反応に関与する酵素を段階的に明らかにしながら、シアン化水素への分解機構の全容を解明する。
2) センダンササラダニとサカモリコイタダニの間で異なるシアン化合物が検出されることからコイタダニ科内で種毎に防御物質を分析する必要がある。野外から土壌やコケの採取を進め、多種のコイタダニ科ダニの収集に努める。
3) シアン化物の自然生態系での役割の一端を明らかにする。捕食者に対する化学的な防御効果をはじめ、種内のフェロモン作用の有無等の検討を行う。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Antibacterial Activity of Defensive Secretions from the Lace Bug Stephanitis?svensoni (Drake) (Hemiptera: Tingidae)2024

    • 著者名/発表者名
      Shimizu Nobuhiro、Takahara Chihiro、Ogami Hiroki
    • 雑誌名

      Insects

      巻: 15 号: 4 ページ: 257-257

    • DOI

      10.3390/insects15040257

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Do ‘cheese factory-specific’ mites (Acari: Astigmata) exist in the cheese-ripening cabinet?2022

    • 著者名/発表者名
      Shimano Satoshi、Hiruta Shimpei F.、Shimizu Nobuhiro、Hagino Wataru、Aoki Jun-ichi、OConnor Barry M.
    • 雑誌名

      Experimental and Applied Acarology

      巻: 87 号: 1 ページ: 49-65

    • DOI

      10.1007/s10493-022-00725-8

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Mite secretions from three traditional mite-ripened cheese types: are ripened French cheeses flavored by the mites (Acari: Astigmata)?2022

    • 著者名/発表者名
      Shimizu Nobuhiro、OConnor Barry M.、Hiruta Shimpei F.、Hagino Wataru、Shimano Satoshi
    • 雑誌名

      Experimental and Applied Acarology

      巻: 87 号: 4 ページ: 309-323

    • DOI

      10.1007/s10493-022-00734-7

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] カニムシ由来のケトミウム属真菌が産生する抗菌活性物質の単離・構造決定2023

    • 著者名/発表者名
      森山太介, 太田ことり, 田中優子, 高原千尋, 清水伸泰
    • 学会等名
      日本農芸化学会 中部・関西支部合同大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] バッタのフンに含まれるアズキゾウムシ産卵抑制物質の探索2023

    • 著者名/発表者名
      金子光輝,高原千尋,宇川賢人,宮地亮太,森山太介,管原亮平,清水伸泰
    • 学会等名
      第35回日本環境動物昆虫学会年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ササラダニ類におけるシアン化水素生成のメカニズムに関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      森山太介、高原千尋、島野智之、清水伸泰
    • 学会等名
      日本農芸化学会2024年度東京大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ササラダニ類が産生するシアン化合物からシアン化水素の生成機構2023

    • 著者名/発表者名
      森山太介、高原千尋、島野智之、清水伸泰
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 土の中の生き物たちのはなし2022

    • 著者名/発表者名
      島野 智之、長谷川 元洋、萩原 康夫
    • 総ページ数
      168
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      9784254171792
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi