研究課題/領域番号 |
22K05686
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
|
研究機関 | 株式会社生命誌研究館 |
研究代表者 |
小田 広樹 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 主任研究員 (50396222)
|
研究分担者 |
鈴木 勇輝 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50636066)
西口 茂孝 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 特任研究員 (50873121)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | クラシカルカドヘリン / 細胞間接着 / DNAオリガミ / 昆虫 / ショウジョウバエ / 分子進化 / アドへレンスジャンクション / カドヘリン / 原子間力顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
カドヘリンによる細胞間接着の構造的仕組みは脊椎動物と昆虫の間で大きく異なることが示唆されているが、脊椎動物以外でカドヘリン分子間の結合様態を説明するデータは乏しい。研究代表者は最近、ショウジョウバエDEカドヘリン細胞外領域の精製断片が自己集合体を作ることを見出した。本研究では、DNAオリガミ構造体を用いて昆虫カドヘリンの接着状態を再構成し、接着界面の分子様態を直接観察して、接着原理の解明を行う。
|
研究実績の概要 |
クラシカルカドヘリンを接着成分とする細胞間接着システムは動物細胞の自己組織化能力と形態形成能力の基盤を成す分子装置である。細胞間の接着界面を構成するカドヘリン細胞外領域は分子長の大きな状態を祖先として、脊椎動物と昆虫の系統で独立に起ったドメイン欠失で異なった短縮化を受けたと考えられている。このことから脊椎動物と昆虫の細胞間接着の構造的仕組みは大きく異なることが示唆されるが、脊椎動物以外でカドヘリン分子間の結合様態を説明するデータは乏しい。本研究では、ショウジョウバエの2つのクラシカルカドヘリン、派生型のDEカドヘリン(昆虫系統特異型、分子長が小さい)と祖先型のDNカドヘリン(左右相称動物広範分布型、分子長が大きい)に注目し、クラシカルカドヘリンの接着原理と進化原理の解明に挑む。22年度までに、直方体にデザインしたDNAオリガミ構造体のひとつの側面に等間隔に5カ所のビオチン(bio)修飾部位を設置し、そこにストレプトアビジン(SA) が結合したナノ構造体を準備したが、23年度では、そのDNAオリガミ構造体のbio/SA部位にビオチン化したDEカドヘリン細胞外領域を連結し、透過型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡で観察することによって、個々のカドヘリン分子の形と振る舞いを捉えることができた。さらに、bio/SA部位を14ヶ所に増やしたDNAオリガミ構造体を準備して、2つのDNAオリガミ構造体がカドヘリン断片の相互作用を介して対合した状態を作ることができた。しかし、オリガミ構造体間の接着領域においてひも様の構造物が所々観察されたものの、形態的に規則性のある接着界面を見出すことはできなかった。オリガミ構造体の向き合う表面間の距離を計測したところ、中央値が32.5nmであった。この値は両サイドのSA層の厚みが合わせて10nm程度と考えると、生体内の接着構造の細胞膜間の距離と同等の値であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、DNAオリガミにカドヘリンを連結し、オリガミ間にカドヘリンを介した接着状態を作ることができ、その状態を電子顕微鏡で観察することができた。一方、ビーズを使った実験では、ハエの上皮カドヘリン(DEカドヘリン)を連結したビーズとコオロギの上皮カドヘリン(Gb1カドヘリン)を連結したビーズを混合し、旋回した場合に、選択的に集合塊が形成されることを示すことができた。DNAオリガミを使ってナノスケールで選択的接着を再現する実験の準備が整った。接着に影響を与えるDEカドヘリンのアミノ酸変異を複数同定できた。DNカドヘリン(祖先型)の細胞外領域全長分子の発現と精製は効率が悪かった。そのためDNカドヘリンに関しては部分断片を使った解析を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
ストレプトアビジン (SA) を連結したDNAオリガミに夾雑物が混ざることと、そのためにDNAオリガミの濃度を高められないことが問題となっており、精製方法の改善を図る。DNAオリガミの形状を2種類にして、DNAオリガミとカドヘリンの連結のステップと、その後のカドヘリン間の相互作用のステップを区別して検出できるように実験系を確立する。選択的接着をDNAオリガミを使って再現する実験を行う。ひとつのアミノ酸変異でもDEカドヘリンの接着に大きく影響が出ることがあることがわかったのでより網羅的にアミノ酸変異の同定を行う。ビーズ及びDNAオリガミを用いたDNカドヘリンの解析を進め、祖先型カドヘリンと派生型カドヘリンの接着状態を比較解析できる状況を作る。
|