研究課題/領域番号 |
22K05698
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
中本 敦 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (80548339)
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研究分担者 |
中西 希 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (40452966)
布目 三夫 岡山理科大学, 理学部, 講師 (40609715)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | ノウサギ / 半自然草原 / 蒜山 / GPSテレメトリー / 火入れ / 里山 |
研究開始時の研究の概要 |
ニホンノウサギLepus brachyurusはかつては昔話を代表する身近な草原棲哺乳類であったが、人々が草(茅・萱)を資源として利用しなくなった1950年代以降に草原が森林に徐々に遷移したことによって生息地の多くを失い、現在では身近な動物とは言えないほどに生息数が減少した。本研究では、近年容易に利用することが可能になったGPSテレメトリー機器による詳細な個体追跡を導入することで、人為的な草原管理手法のひとつである火入れが半自然草原に生息するノウサギの行動や生息数にどのような影響を与えてきたのかを、伝統的な火入れ文化の残る岡山県の蒜山草原をモデルとすることによって科学的に評価する。
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研究実績の概要 |
本研究は、GPS テレメトリー法を用いて、草原管理手法のひとつである火入れが半自然草原に生息するノウサギの行動や生息数にどのような影響を与えているのかを、岡山県の蒜山草原で明らかにすることを目的としている。半自然草原のような里山環境において、人と生き物の具体的な関係性の維持機構を明らかにすることは、過去の人々の暮らしが意図せず果たしてきた歴史的な意味を理論化することにつながり、今後、自然との共生を考える上で重要な意味を持つ。 本研究では、大きく、1)ノウサギの行動追跡・食性調査(基礎生態の解明)、2)ホンドギツネの糞分析(捕食圧の評価)、3)糞粒法・INTGEP 法・自動撮影カメラ・糞DNA 分析(個体数推定)の3つの調査項目を4年間で継続して実施する計画である。昨年から引き続き今年度も、ノウサギの捕獲作業、ノウサギの糞のサンプリング、調査地の植生調査、ノウサギの雪上トラッキング、糞粒法によるノウサギの個体数推定、ホンドキツネの糞のサンプリングを実施した。ノウサギの捕獲作業は、昨年度の失敗を教訓として、年間を通して、罠の改良や、餌の嗜好性試験を行い、さらに調査地である蒜山以外の県内の他地域でもテストを繰り返しながら捕獲作業を進めたが、捕獲には至らなかった。ノウサギの捕獲経験を有する複数の研究者や地元の猟師さんにも問い合わせてみたが、やはりいずれも捕獲は困難であり、捕獲率が極端に低いとの返事が返ってきた。ノウサギとキツネの糞のサンプリングは生息密度の関係から少数ではあるが順調に行えており、一部についてはDNAによる集団遺伝学的な分析を進めている。2023年度は冬期の気温が高く積雪がほとんど生じなかったが、短い積雪期においてタイミングよく糞粒法とINTGEP 法による個体数推定を複数回実施することができた。これらのデータについては現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
申請段階よりある程度予測していたことであるが、予想以上にノウサギの生体捕獲が難しく、GPS送信機の装着による個体追跡を研究の骨子としているために、捕獲がうまくいかない以上、研究が遅れていると言わざるを得ない状況にある。先行研究ではくくり罠や追い出し法による捕獲の成功率が高いことがわかっているが、生体を傷つける怖れのあるこれらの手法は、GPS送信機の装着による個体追跡を前提としている本研究においては使用できない。このため我々は安全性の高い箱罠による捕獲を試みてきたが、罠場に設置した自動撮影カメラの映像解析から、ノウサギは箱罠による捕獲が困難な動物であることが判明した。現在は、代表者の所属する大学の周辺の森に、実際にノウサギの捕獲を試みながら、捕獲方法を検討する捕獲サイトを設営し、様々な調整を試みながら捕獲作業を進めたが、結局捕獲には至らなかった。ノウサギの捕獲経験を有する複数の研究者や地元の猟師さんにも問い合わせてみたが、やはりいずれも冬期の積雪地以外での捕獲は困難であり、これまでの経験から比較的個体数の多い東日本においてさえ捕獲率が極端に低いと考えられるとの返事が返ってきた。現在、箱罠とは異なった新しい網罠(無双罠)を導入し、捕獲許可証の変更申請を行っているところである。さらに他県においてノウサギの捕獲に成功している事例の情報が得られたため、捕獲にどのような条件が必要なのかを洗い出すための罠場を視察するために現地の方との日程調整を行っている。捕獲以外の調査項目は順調にサンプル数を増やすことができている。
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今後の研究の推進方策 |
申請段階よりある程度予測していたことであるが、予想以上にノウサギの生体捕獲が難しく、GPS送信機の装着による個体追跡を研究の骨子としているために、捕獲がうまくいかない以上、研究が順調に進んでいるとは言えない状況にある。先行研究ではくくり罠や追い出し法による捕獲の成功率が高いことがわかっているが、生体を傷つける怖れのあるこれらの手法は、GPS送信機の装着による個体追跡を前提としている本研究においては使用できない。このため我々は箱罠による捕獲を試みてきたが、罠場に設置した自動撮影カメラの映像解析から、ノウサギは箱罠による捕獲が困難な動物であることが判明した。地元の猟師さんに捕獲を依頼してみたが、生体の捕獲は難しすぎるとの返答が返ってきている。今後は箱罠とは異なった新しいタイプの網罠(無双罠)の導入を予定している(罠は購入済)。さらに、他県においてノウサギの捕獲に成功している事例の情報が得られたため、罠場を視察するための日程調整を行っている。現在は、他県も含めてノウサギの生息密度が高そうな複数の地域でも捕獲作業を試みる計画を立てており、いずれかの地域で捕獲方法を確立させることで、最終的に本研究の調査地である蒜山での捕獲につなげたいと考えている。捕獲以外の調査項目は順調にサンプル数を増やすことができているため、今年度はなんとか捕獲を成功させたいと考えている。なお、2023年度は冬期の気温が高く、例年に比べ積雪量が著しく少なかったことが調査可能な期間をかなり制限してしまった。野外調査である以上、気候は我々にコントロールできるものではないがが、今年度は十分な積雪があることに期待したい。
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