研究課題/領域番号 |
22K05705
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
高橋 俊守 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (20396815)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | シチズンサイエンス / 市民参加モニタリング / 協働型管理運営 / 国立公園 / 小規模生態系拠点 / 生物多様性保全 / 外来生物 / 鳥獣被害 / 参加型モニタリング / 自然生態系保全 |
研究開始時の研究の概要 |
国立公園では、野生鳥獣の増加や外来生物の侵入による生物多様性劣化の問題が顕在化している。しかし、国が主導して対策を推進している特別保護地区等の一部の地域を除いては、複雑な土地の権利関係や管理運営主体の曖昧さの課題があり、保全対策が停滞しがちである。本研究では、大規模な人的・資金的資源が投入されていない国立公園内の複数の小規模生態系拠点に着目し、研究者が地域の多様な関係者と連携して管理運営に参画する参与研究を行う。地域主体の取り組みを促進するために効果的な要因を明らかにしながら、国立公園の協働型管理運営の実現に向けた「参加型モニタリング」手法の研究開発を行うことを目的とする。
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研究実績の概要 |
国立公園のうち、手厚い管理が実施されている特別保護地区は15%に満たない。それ以外を占める第1種~第3種特別地域及び普通地域に内包される比較的規模の小さな生態系拠点(以下、「小規模生態系拠点」とする)においては、地元自治体や自然保護団体、自然愛好家、ボランティア等の多様な主体に管理運営の取り組みが委ねられているのが実態である。このため、小規模生態系拠点においては、多様な主体による協働型管理運営を促進するための具体的な仕組み作りが極めて重要である。 筆者は、小規模生態系拠点において研究者が実施するような調査研究を、市民が参加可能なモニタリング手法として実用化することが、協働型管理運営を促進するための科学によるブレークスルーになる可能性があると考えている。そこで、調査フィールドとしている日光国立公園において、喫緊の課題となっているシカ被害や外来生物対策に適用可能な、地域内外の多様な主体が関係する参加型モニタリング手法を研究開発する。これらを関係者の協力を得て社会実装することで、協働型管理運営を促進する効果を評価することを研究目的とする。 研究2年目は、初年度のアンケート調査をもとに、自然公園の協働型管理運営体制に及ぼす影響要因について検討するとともに、管理運営体制と地域関係者の協働意識の関係性を示す構造モデルを可視化した。この結果、自然公園の意義や地域住民へのメリットを創出すること等を通じて自然公園の管理・運営体制の強化を図ることが重要であることが明らかになった。一方で、特定外来生物オオハンゴンソウの駆除対策をはじめとする諸課題に取り組む地域関係者を支援するため、Web-GISを用いた参加型モニタリングシステムを構築し、これと連動した調査用アプリを開発して社会実装に向けた試験的な運用を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、初年度に対象とする小規模生態系拠点の抽出と、参与研究を実施するための多様な主体との連携関係を構築するとともに、従来の管理運営のあり方や課題を整理する。2年目は、既往の手法をもとにモニタリング手法を再検討し、得られた科学的知見を共有するための空間情報プラットフォームを構築する。一方では、協働型管理運営を構築する際の課題を明らかにするためのアンケート調査を実施する。3年目は、進捗しつつある科学的知見を関係者にフィードバックすることで、生態系被害の管理や協働型管理運営の構築に与える影響を評価する。また、関係者のボトムアップの取り組みにより運用可能な調査項目と手法を選定し、PDCAサイクルに則った参加型モニタリングを試行する。4年目は、改善した手法をさらにフィードバックするとともに、全国の国立公園において実用可能な参加型モニタリング手法の一般化について検討することとしている。 研究2年目は、日光国立公園全域を対象フィールドとして、生物多様性やランドスケープの諸要因を共有するための空間情報プラットフォームを、Web-GISを用いて構築した。また、特定外来生物オオハンゴンソウの分布状況を調査するためのアプリケーションを開発して、スマートフォンを用いた、大学と市民科学による協働調査を試験的に行った。この結果、科学的な精度を確保した上で、日光国立公園全域におけるオオハンゴンソウの分布情報をシチズンサイエンスのアプローチにより把握できることを示した。市民参加による駆除活動が各所で行われているオオハンゴンソウについては、対象地域においてドローンによる観測を行い、分布情報を把握した上で効果的な対策を実施するための科学的な方策を検討しているところである。なお、これらの活動への協力者には、事後にアンケート調査を実施し、協働参加への意識変容についてもあわせて調査中である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、初年度に実施した社会学的調査に加えて、連携関係を構築した地域団体との協働によるモニタリング調査を実施することができた。具体的には、特定外来生物オオハンゴンソウのWeb-GISとスマートフォンを用いたモニタリング調査方法を試験開発し、地域団体に協力を呼びかけて国立公園全域の調査を実現させた。この結果、国立公園全域に適用することが可能な、シチズンサイエンスによるモニタリング手法について見通しが立てられている。3年目は、アンケート調査の分析や開発した手法を継続して適用することで、調査精度をさらに向上させるとともに、日光国立公園以外のサイトでも導入可能とするように手法の一般化を進める。また、各所で実施されている市民参加による活動の参加者の体験の質を向上させて、内発的で持続可能な保全活動に繋げるため、インタープリテーションの手法を用いた学術成果の還元方法についても検討していく予定である。一方では、本研究に関連した調査活動が契機となり、シカ侵入防止柵の導入が決定した小規模生態系拠点においても、シカ柵の見廻りや補修を市民活動によりボトムアップの取り組みで実現するための方策について、並行して調査研究を進めることとしている。
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