研究課題/領域番号 |
22K05706
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大窪 久美子 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90250167)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 草原・湿原生態系 / 環境評価 / 指標種 / 生物多様性 / 保全生態学 / 霧ヶ峰 / 阿蘇くじゅう国立公園 / 草原性植物 / 草原生態系 |
研究開始時の研究の概要 |
草原・湿原生態系における環境評価および生物多様性評価の新規手法を確立するため、日本の代表的な草原景観を有する霧ヶ峰および阿蘇くじゅう国立公園において、異なる立地条件の地区における指標候補種の群集構造を把握し、植生および土壌条件、管理等との関係を明らかにすることを目的とする。また、本研究によって新規評価手法を確立することは、失われていく草原・湿原の自然再生や保全に寄与するものと考える。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は草原・湿原生態系において、蛾類等の新規指標種を用いることにより、従来よりも的確で、かつ詳細な環境評価および生物多様性評価の手法を開発することである。 今年度から阿蘇くじゅう国立公園の「くじゅう地区(K・Y)」において湿原の3調査地点を追加した。その結果、蛾類群集調査ではヨシ群落やスゲ類群落、ネザサ群落、ヨモギ類群落、落葉広葉樹林(クヌギ林)、アセビ・ツツジ群落などの植生環境の指標となる種群を認めることができた。例えばトラサンドクガは環境省で準絶滅危惧種、大分県で情報不足に指定される草原性蛾類で、本種は指標性の高い種の一つとして考えられた。 「くじゅう地区」では規模の異なる湿原や湿地が複数分布する。これらの湿生草原も乾性的である半自然草原と同様に人為的な管理の影響下で維持されてきた群落も存在し、後者と同様に利用の停止等により、生物多様性の低下が懸念される。しかし本地域での湿生草原群落の知見は少なく、多様性の保全上、問題となっている。本研究で実施した湿原の調査地点ではイネ科のヨシやススキ、ヌマガヤ、トダシバの優占する群落型が多かった。これらの中間湿原ではイネ科のヨシやヌマガヤ、トダシバと共にマアザミやエゾアブラガヤ、ホソバサワオグルマ、エゾミソハギ、ヤチカワズスゲ等が各々優占する群落型が認識された。Y地区の湿原の地点ではヤチカワズスゲやマアザミの群落型でムラサキミミカキグサとミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、イヌセンブリ、チョウセンスイラン等の絶滅危惧種が多く出現し、種多様性の高い群落型が確認された。本地点では野焼きや輪地切が実施されているが、ニホンジカによる植生の食害が顕著なため、上記の群落型は防鹿柵内で保全されている。K地区の湿原では絶滅危惧種のヒゴシオンやツクシフウロも現存するが、ニホンジカによる食害を受け矮化している個体が観察され、多様性の低下が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまではコロナ禍の行動制限もあり、遠方への調査移動が難しい期間もあったため、進捗にやや遅れが生じてしまっていた。また新規に湿原の調査地の調査許可を得るため、地権者等への確認に時間がかかってしまったこともあり、これも進捗に影響を与えた。今年度5月からはコロナ禍の制限がなくなったが、年度の前半に悪天候が続き、特に「くじゅう地区」での調査の実施が難しく、研究の進捗に影響した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について大きな変更は無い。次年度は霧ヶ峰におけるオサムシ科の群集調査を湿原でも実施し、植生環境との関係性の考察を深める予定である。さらに蛾類群集を指標とする研究については引き続きくじゅう地区で調査を実施し、指標性の高い種群の抽出を可能とするよう努める所存である。群落調査についてはニホンジカやイノシシなどによる植生への食害や攪乱の影響が懸念されるため、獣害などの新たな視点からの研究も視野において考察を深める予定である。
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