研究課題/領域番号 |
22K05708
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山中 啓介 鳥取大学, 農学部, 准教授 (60555431)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 海岸林 / 保護樹 / 広葉樹 / 植栽位置 / 地温 / 松くい虫被害跡地 / 海岸砂丘地 |
研究開始時の研究の概要 |
松くい虫被害を受けた海岸クロマツ林はその再生が課題となっている。広葉樹に樹種転換する方法も有力な手法であるが、海岸砂丘地は乾燥や飛塩などで植栽環境が厳しく、広葉樹の植栽技術は確立していない。 これまでは防風柵や客土といった土木的な手法を活用する研究が主体であった。本研究では世界各地の環境の厳しい地域で活用されているものの、我が国ではほとんど活用されることが無い保護樹に着目する。海岸砂丘地においても成長が良好なクロマツを保護樹とし、これによる植栽環境の改善効果の定量化と植栽対象とする広葉樹の環境応答を評価することによって海岸砂丘地における松くい虫被害跡地の樹種転換の学術的な基盤データを取得する。
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研究実績の概要 |
鳥取県の海岸砂丘地において植栽されたクロマツを保護樹と想定して調査を実施した。2022年9~11月,保護樹と想定したクロマツ(以下,「対象クロマツ」とする)を中心に,南北方向にそれぞれ20~100cmまで20cm毎と対照裸地を測定地点として気温および地温,土壌含水率を測定した。気温および地温は対照裸地との温度差を比較した。 対象クロマツより南側では,樹冠直下では対照裸地との温度差が見られたものの,対象クロマツから離れるに伴って温度差が小さくなっていった。一方,北側では対照裸地との温度差は対象クロマツから離れても南側のようには縮まらず,温度が低い状態になっていた。これは,北側では対象クロマツ樹体の影の影響を強く受けていたことが大きな要因であると考えられた。これに対し,土壌含水率は北側,南側を問わず,測定地点による顕著な差はみられなかった。今年度の試験ではこの原因を明らかにすることができなかったため,継続的な観測を行う予定である。 また,今後の植栽試験に使用する広葉樹を選定するため,鳥取県内の海岸砂丘地における松くい虫被害跡地に侵入してきた広葉樹について調査した。調査地は鳥取県中部の北条砂丘に3か所設定した。1調査地当たり15×15mの調査プロットを3個設定し,毎木調査を実施した。 高木性の落葉樹ではエノキ,センダン,アカメガシワといった樹種の侵入が多く,エノキ,センダンは胸高断面積合計の高い調査区も見られた。これらの樹種は目立った気象害や病虫害を受けていないことから,海岸砂丘地の環境においても生育が可能な樹種であると考えられた。常緑樹はタブノキ,シロダモ,モチノキが少数ながら確認されたものの,出現数は少なかった。これに対し,マサキ,トベラ,シャリンバイといった低木性樹種の侵入が多く見られた。今後,これらの樹種を使用して植栽試験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,調査対象地の選定(調査対象地の探索,森林所有者の了解,各種手続きなど)に時間を要すると想定していたが,鳥取県庁の協力が得られ,調査地の選定,設定が順調に進んだ。今後も鳥取県庁からの協力が得られる見込みであり,順調に研究が進むものと見込まれる。 気象観測に関しては機材準備などがやや遅れたため,9月からの観測となった。盛夏時の気象観測を行うことができなかったので,今後観測を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年の調査で気象観測の方法をほぼ確立した。植栽木の成長が阻害される可能性が高いのは盛夏,厳冬期であると考えられることから,2023年度ではこれらの時期に気象観測を行う予定である。 また,2023年3月に植栽されたクロマツを保護樹とし,その効果を実証するための植栽試験地を設定した。今後,植栽木の成長や気象害などを継続的に観察し,保護樹の効果を明らかにする予定である。
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