研究課題/領域番号 |
22K05714
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
小林 昭裕 専修大学, 経済学部, 教授 (60170304)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 文化的景観 / 山岳信仰 / 生態系サービス / 社会生態系システム / 戸隠 / 熊野 / 信仰 / 文化的資源 / 自然公園 / 文化的生態系サービス / 社会生態学的システム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,地域社会の中で何を契機に価値観を付与し,価値観が付与された資源特性に対し,地域社会がどのように共有・認識・記憶してきたのか,受け継がれてきた仕組みをもとに,自然公園の文化的景観の持続的管理を行うための知見を得ることを目的とする。文化的生態系サービスの視点を導入し,文化的景観の持続的保全管理の術を見出すことは,文化生産プロセスや観光市場などの交換システムを含む経済システム,技術や技能などの技術システム,さらにそれらを規定する規範や制度などの社会システム形成の解明にも繋がる可能性を秘めている。
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研究実績の概要 |
「文化的生態系サービスの視点から捉えた、自然公園における文化的景観の持続的管理」という研究テーマに関連する投稿論文として造園学会に「高岡古城公園の開設過程に対する社会文化的観点からの史的考察」に投稿受理されました。本論文で、近世における高岡城下について、その構造、廃城後の軍事的・経済的対応および廃城後の城址の保全・利用管理について捉え、城跡に対する施策、住民による城址の保全・利活用で培われた成果や場所への愛着を契機に、新たな意義や意味が重ねられ、公園開設に至る過程を明らかとした。 また、妙高戸隠連山国立公園内にある山岳信仰地の戸隠を対象として、日本観光研究学会全国大会論文集に「戸隠における山岳宗教地の文化景観の生成と保全に関する考察」を投稿、発表いたしました。本論文で、地理的・地形的・水文的特性に対する価値づけ,戸隠縁起等に見る地形の解釈及び立地選択の観点から検討した。その結果,山岳信仰地として,立地する自然環境の視認特性に対する意味の付与と同時に,山岳修行という行動を媒介とした価値の共有化,対象地の環境に対する縁起を基にした解釈や働きかけの往還関係が山岳修行を基軸として展開されたことが読み取れました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会生態学視点から,自然環境を構成する要素を見ると,景観に見らる特徴を,物的な歴史的痕跡だけでなく,物語や知識体系,伝統といった非可視的要素をも含むという視点でとらえる点で戸隠の研究(2022)は一定の成果を上げることができたことから、眼前の自然環境に対し、僧侶や信仰衆徒が与えた宗教的解釈、その解釈に基づく働きかけや行為の集積としての履歴を踏まえ、山岳信仰地の文化的景観の生成や変化の過程を史的にとらえ直す必要があると判断いたしました。 現在、5月末に投稿予定の研究論文では、山岳信仰対象に示された宗教的解釈と信仰対象への行動・操作等の働きかけに見られる、主体との相互作用、相互作用から信仰者が得る利益およびこれらの関連性に着眼し、山岳宗教地である戸隠における文化的景観の構成と仕組みを史的観点から考察いたしました。 また、現在査読を受けて修正作業を行っている論文に於いて、江戸期から明治期を対象に、白山神社の近世における位置づけや白山神社境内での白山公園の開設および管理における住民や統治主体等との関わりを、行政史料や文献に基づき、社会文化的視点から史的考察を行っております。 さらに、本年度の研究予定として、山岳信仰地を含む自然公園として予定していました、羽黒山・月山(磐梯朝日国立公園),弥山と厳島(瀬戸内海国立公園)両子山・文殊山(瀬戸内海国立公園)に加え、伊勢熊野参詣道(吉野熊野国立公園)、英彦山(耶馬日田英彦山国定公園)、さらに近世から近代における文化的景観の発見、維持、管理を対象として大沼(大沼国定公園)を対象に加え、持続可能な文化的景観管理に向けた課題や未解明な点について,自然環境と地域社会との間で生じる相互関係のシステムについて,地理的視点や歴史的視点,自然立地的視点から空間の履歴を紐解き,実態解明を進める予定です。
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今後の研究の推進方策 |
文化的ESの視点を導入して,文化的景観の形成・安定・消失過程を住民と自然環境との相互作用を通じて,自然公園における文化的景観の価値・評価がどのように変化したのかを読み解き,文化的景観の持続的保全管理における学術的基盤の構築を図ることを目的として、研究を進めます。 まず、大沼国定公園を事例倒した、近世から近代にかけて、湖・島嶼・火山・森林が織りなす景観にどのような価値や評価が生成し、公園としてどのように管理を行い保全に努めたのかを明らかにし、11月に学会投稿を予定しています。 同時に、伊勢熊野時の参詣道を対象として、参詣道沿いの宗教的文化資源の成立した時代的背景や、地理的分布、それが参詣者に及ぼした宗教的体験に着眼し、世界文化遺産である熊野伊勢路の保全管理に貢献する知見を展開する予定です。 さらに、2017年6月に文化芸術基本法が成立し、国の方針が従来の保護、振興から、観光を含む活用に転換し、急速に、資源化、観光化、遺産化が進む山岳信仰は、新たな視点から考え直す岐路に立たされていることから、山岳信仰地として、羽黒山・月山(磐梯朝日国立公園),弥山と厳島(瀬戸内海国立公園)両子山・文殊山(瀬戸内海国立公園)、英彦山(耶馬日田英彦山国定公園)を対象として、修験道がもたらした山岳文化景観を事例として文化的景観の持続的保全管理における学術的基盤研究を進める所存です。
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