研究課題/領域番号 |
22K05715
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
江口 誠一 日本大学, 文理学部, 教授 (00301789)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 景観変遷 / 植物珪酸体 / 微粒炭 / 植生 / 焼畑 |
研究開始時の研究の概要 |
自然との共生的側面のある農耕が、周辺域の森林景観にどのような影響を与え、種の多様性を維持させてきたかを歴史的・実証的に明らかにすることを試みる。また、地方の生業に関わる景観を、自然資源として明確化する過程で、地元市民に理解を得て、地域活性化のための活動に貢献する。さらに、若年層の多い首都圏都市域の若い世代へ、地方の生情報を発信することで、成果を具現化するための一助とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、鹿児島県内のトカラ列島に位置する十島村の悪石島、および大隅諸島の三島村の竹島にて現地調査をおこなった。焼畑とその周辺の昭和期から現在の植生については、悪石島の大部分をリュウキュウチク群落が占めており、高度経済成長期以降に焼畑が消滅しても分布を広げ続けていた。また一部、スダジイやタブノキなどの照葉樹林とリュウキュウマツ群落、ビロウ群落がみられた。竹島においても、ビロウ以外はそれらと同様の植物群落が確認された。昭和期以前の地域景観の復原については、悪石島の5地点で地形・地質調査を進め、堆積物サンプルについて、植物珪酸体分析、微粒炭分析をおこなった。堆積物の上位より現植生と対応した化石が産出し、タケ亜科珪酸体が顕著な層位では微粒炭も多く、焼畑を含めた火入れとの関係が示唆された。竹島でも、3地点にて同様の現地調査をおこない、地表より120~150センチメートルの層厚をもつ黒ボク土層がみられた。その層相は、黒色シルトや黒褐色細砂質シルトを主体とし、下部には灰褐色か黄褐色のシルト質細砂、さらにアカホヤ火山灰や基盤層と続いて観察された。それぞれ約10センチメートルごとの分析用サンプルとともに、黒ボク土の最下位層準にて放射性炭素年代測定用サンプルも採取した。地元住民との情報交換については、ジオパーク活動を担っている方や、地域活動の中心的役割の方などより、過去の生活と植生との関係についての情報とともに、今後の成果還元についての提案も得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他大学研究者や大学院生などの研究協力者による積極的な活動により、研究代表者側が当初見込んでいた科学調査の段取りが順調に運ぶことができた。一部、自治体によるコロナ感染予防対策や荒天による交通事情など困難な事情下でのこともあり、計画を変更せざるを得ない中でのことで有難いことであった。特に、普通地域内鉱物の採取行為届を県知事あてに、自然植物等採取許可申請書や土採取に関する許可申請書を村長あてに提出するにあたっては、現地の情報収集に尽力して頂いた。このことは地域内との情報共有化においても、円滑に進める上で意義深いことである。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者との連携をさらに深めながら、現地の情報を収集し調査を進める予定である。特に今後は、三島村にて得られた試料について、放射性炭素年代測定をおこなうとともに、同堆積物中に含まれる植物珪酸体と炭化物の分析について、過去の火入れ実態解明に向けて推進する計画である。これにあたっては、植生環境の異なる同村内の他島や他村に位置する離島での比較調査も検討中である。いずれも、火入れ後の時間的経過や代償植生の違いを明らかにすることで、地域景観の形成史解明にもつながることが期待される。
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