研究課題/領域番号 |
22K05729
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
榎木 勉 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10305188)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 下層植生消失 / 樹木の資源利用様式 / 人工林化 / 生態系機能 / 脆弱性 / 土壌動物 / 物質循環 / 有機物分解 / 下層植生 / 生物群集 / 炭素動態 |
研究開始時の研究の概要 |
下層植生はバイオマスこそ小さいが,物質生産,生物多様性の維持,物質循環など森林生態系の機能への寄与は大きい。近年はシカなどの植食動物の個体数増加に伴う下層植生の衰退や消失が世界各地で観測され,下層植生の機能維持のための森林管理手法の開発がより強く求められている。本研究では,長期に渡る下層植生除去の実験結果から,林分の生産性,生物多様性の維持,物質循環,有機物分解,土壌の保水性などの森林の多面的な機能の変化を定量化し,森林生態系の感受性評価ならびに森林管理手法の模索を行う。
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研究実績の概要 |
九州大学北海道演習林に設定された下層処理試験地において,地上部生産量,細根量,土壌物理性ならびに林床での有機物分解様式の調査を行い,下層除去が森林生態系機能に及ぼす影響を明らかにした。下層除去によるカラマツの成長量減少は継続して観察された。その成長量の減少は広葉樹をカラマツ人工林化することで顕著になることが示唆された。リターフォール量は測定一年目では下層除去による減少が見られたが,2年間で評価すると処理による有意な影響は見られなかった。下層植生除去がリターフォールをかいした窒素循環量には影響しなかったことから,成長量の減少は窒素制限によるものではないことが示唆された。細根量は下層除去区で少なく,消失した下層植生の地下バイオマスを補填するほど樹木の地下バイオマスは増加していなかった。 リターバッグを用いた分解実験では,ミズナラ,カラマツいずれのリターも冬季の分解は下層除去区で早く,夏季の分解は下層除去区で遅かった。また,この傾向はカラマツ林で大きかった。冬季の分解は生物的な要因よりも物理的な要因の影響が強いため,下層植生がないこと,林床の有機物蓄積量が少ないことによる降雪や凍結融解などのプロセスの違いが分解に影響したと考えられた。一方,夏季は下層植生がないこと,林床の有機物蓄積量が少ないことで乾燥したことにより分解速度が減少したと考えられた。 表層土壌では下層除去によりシルト・粘土の割合が減少した。下層植生の消失およびそれにともなう林床有機物層による被覆の減少が,粒径の小さな土壌を流出させた可能性が示唆された。 以上の結果から,長期にわたる下層植生の消失は様々な生態系機能に影響することが示され,その影響はミズナラ二次林よりもカラマツ人工林で大きかった。人工林化による生態系の改変は下層消失という変化に対する脆弱性を増大させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していたことはすべて予定通りに実施できた。結果も概ね予想どおりであり,データ収取,解析なども問題なく進めることができた。地表面の土壌の移動が観察されたことから,土壌特性の評価として粒径組成の変化の測定を追加して実施した。その結果,下層消失が森林生態系に及ぼす影響には土壌の物理性の変化を介した効果があることが示唆された。また,リターバッグの実験結果から冬季の有機物分解プロセスにも凍結融解などのプロセスが重要であることが示唆され,3年目以降に地温等の環境測定をすることにした。合わせて,生物の季節変化への影響もあると考えられるため展葉過程等の測定を実施することにした。これらの追加測定は,2年目に試料の化学分析を概ね終えることができたため3年目以降の研究時間が確保できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度同様,得られた結果をそれ以降の計画にフィードバックさせながら継続する。また本研究終了後に計画しているスケールアップを視野に入れた準備を行う。
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