研究課題/領域番号 |
22K05730
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
岡田 慶一 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (70882025)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 倒木更新 / 天然更新 / 菌根菌 / 栄養分解酵素活性 |
研究開始時の研究の概要 |
倒木上で更新した実生が繁殖可能な成木に至るには、倒木上から土壌への定着を成功させなければならない。本研究では、生育基盤である倒木の理化学性と、樹木成長や生理応答の関係性を解明するを目的とする。北海道の針広混交林を対象として、針葉樹倒木実生の根系が土壌に到達することによる、成長応答の変化を年輪解析から明らかにする。さらに、土壌根圏の栄養状態と共生する菌根菌の有機物分解能を倒木上と比較し、地下部における栄養吸収と成長変化を解析する。倒木更新の成否に関わるプロセスを明らかにすることで、森林動態の一端を明らかにし、倒木や人為的な伐木根株残置が樹木更新に果たす意義を示す。
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研究実績の概要 |
本研究では倒木更新稚樹の樹木成長と環境変化に対する生理応答の関係性をから、土壌への到達によって倒木更新が成功する仕組みを明らかにする。2022年度に調査した倒木更新状況を踏まえ、本課題の主要な研究内容となる、土壌到達前後における更新稚樹の成長応答、および土壌到達による栄養条件や根の共生微生物の栄養獲得能力の調査を2023年度に実施した。 北海道東部に位置する阿寒湖周辺の針広混交林において、根が土壌到達後数年経過したトドマツの倒木更新稚樹5本を対象に調査を行った。根が土壌到達した前後での成長変化を調査するために、主幹基部の年輪を採取し年輪幅を計測した。また、同一個体の細根クラスターと周辺基質を倒木上と土壌中からそれぞれ5つ採取し、根端部の外生菌根の有機物分解酵素活性と基質のCN比、pH、無機態窒素量を測定した。 測定した5個体の樹齢は15-31年で、土壌に根が到達してからの経過年数は2-8年であった。これらの個体について、ある年の前後5年間の年輪幅の差を検定したところ、根が土壌到達している年代になると、過去5年間よりもその後の5年間の方が有意に高い成長を示した。倒木上と土壌での栄養環境は、倒木上の方が土壌中よりも有意に酸性化し硝酸態窒素が低かった。また、セルロース分解酵素であるβグルコシダーゼ(BG)とロイシンアミドペプチダーゼ(LAP)が土壌中で高い傾向を示し、特に両者の酵素活性比は、窒素獲得に関わるLAPの方がBGよりも土壌中で活性が高まっていた。このことから、土壌到達による成長の加速は、土壌到達による栄養可用性の改善と、菌根菌による窒素獲得能力の強化によって引き起こされた可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で、当初想定していた仮説を支持する主要な成果を得ることに成功した。主に、土壌到達前後での更新樹木の成長促進と、それに対応する土壌中での栄養獲得能力(特に窒素)の上昇という結果が得られ、土壌到達による栄養環境改善と共生微生物の栄養獲得能力の上昇が寄与して、生長が促進されていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
課題の仮説を支持する結果が得られた。今後この結果の発表や公表のための準備・解析を字進めていく予定である。また、結果から類推・想定する倒木更新木の成長促進プロセスの解釈をより強固にするため、光環境など栄養以外の条件を管理した際の成長応答に関する実験し、プロセスの説明をより確実にするための知見取得を目指す。
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