研究課題/領域番号 |
22K05751
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
市橋 隆自 九州大学, 農学研究院, 准教授 (60594984)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | つる植物 / 冷温帯 / 通導 / 正の導管圧 / 根圧 / 通導機能 / エンボリズム |
研究開始時の研究の概要 |
つる植物は熱帯から温帯にかけて密度・種数が大きく減少するが,これは「つる植物の通導構造が凍結に弱く,氷点下の気温がその成長を制限するため」と考えられている.そうであれば,温暖化に伴う冬期の気温上昇により,温帯林においてもつる植物の影響が顕在化してくる可能性があるが,これまでこの仮説に対して充分な検証は成されていない.本研究では,暖温帯,冷温帯の2地点において,つる植物と樹木の通導・水利用に関する基本特性とその季節変化を評価する.つる植物と樹木の比較,また寒冷の程度が異なる2地点の比較を通し,氷点下の環境が特につる植物の通導機能に対して阻害的に作用しているかを検証する.
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研究実績の概要 |
本研究課題は,温帯林に生育する木本性つる植物と樹木を対象に,冬期の低温に対する水分通導機能の反応を明らかにすることを目的としている.この目的のため,樹木とつる植物を対象に,樹液流速と茎通導度の季節変化,そして春先に発生する正の導管圧(根圧)モニタリングを行い,さらにその結果を冷温帯と暖温帯の2林分で比較することを目指している.前年度には、野外の樹木4種・つる植物2種を対象とする導管圧計測に初めて成功した。 今年度は、前年度に得られた導管圧データの一般性を確かめると共に、樹種間・個体間に見られた導管圧プロファイルの違いの意味を検証すべく新たな観測を準備していたが、前夏の豪雨災害の影響で調査地へのアクセスが制限されたために断念した。 対象種の木部構造に関して、茎の水分通導度を測定したサンプルの木部薄片からそれぞれの種の(通導度で重みづけした)平均導管径を決定した。これまでの結果と併せ、樹木9種の間に、冬期の通導度欠失率と導管径の間に正の相関があった。その関係の中で、「導管が小さく、冬に通導度をあまり失わない」種は導管圧がない散孔材種(3種)、「導管が大きく、冬に通導度をほぼ失う」種は環孔材種(2種)、両者の中間に導管圧を作って通導機能を回復させる種(4種)が分布するという傾向があることが明らかになった。つる植物4種は環孔材樹種よりさらに導管径が1.5~2倍程度大きく、やはり冬期に通導度をほぼ失っていた。ここまでに得られたデータ全般の解析をすすめ、生態学会で発表を行うと共に、冷温帯種を対象にした論文作成を進めている。 さらにこれまでの結果から、より寒冷の厳しい環境に生育する樹木・つる植物の同種(あるいは同属別種)個体の情報を得ることの意義が高いと判断し、九州大学北海道演習林において調査地と対象種の選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
豪雨災害の影響で、今年度予定していた観測を一つ実施できなかったため。ただし一通り必要なデータが揃ってきており、解析と論文化は順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は第一にこれまで九州大学宮崎演習林で行ってきた冷温帯種の研究結果をまとめて論文発表を行う。その他、今年度実施できなかった春先の導管圧観測を実施する。同時に、より寒冷な気候である九州大学北海道演習林に生育する(これまでの対象種と同種、同属を含む)樹木(カンバ3種、エゾイタヤカエデ、ミズナラ、ヤチダモ、ハルニレなど)・つる植物(サルナシ、ツルウメモドキ、ヤマブドウ、チョウセンゴミシなど)において同様のデータを蓄積していく。
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