研究課題/領域番号 |
22K05761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
川合 伸也 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90202027)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | リグニン / イネ / リグニン炭水化物複合体 / アラビノフラノシダーゼ / 矮化 |
研究開始時の研究の概要 |
リグニンが構造性多糖と結合したLignin Carbohydrate Complex (LCC)を開裂するCoprinopsis cinerea由来のアラビノフラノシダーゼCcAbf62Aの遺伝子をイネに導入したところ、作出された組換えイネは著しい矮化と極めて多数の分げつをして、芝生の様な形質を示した。そこで、そのような組換えイネとコントロールの組換えイネを比較して、遺伝子の発現パターンと形質の関係をトランスクリプトーム解析し、LCCのヘミセルロースとリグニン間の結合数の関連を確認する。また、この形質の変化がCcAbf62Aに特有かどうかを他のアラビノフラノシダーゼ遺伝子についても調べる。
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研究実績の概要 |
リグニンと多糖類間の結合を減らすことによる易脱リグニン含有植物作出という新たなアプローチを試みた。リグニンはフェルラ酸残基を介したエステル・エーテル結合によりセルロースやヘミセルロースのような構造性多糖と結合し、lignin carbohydrate complex (LCC)を形成している。このLCCを開裂する担子菌であるCoprinopsis cinerea由来のアラビノフラノシダーゼCcAbf62Aの遺伝子をイネに導入したところ、作出された組換えイネは著しい矮化と極めて多数の分げつをして、芝生の様な形質を示す系統が約1/3の頻度で得られた。イネ科植物にはアラビノキシランが多く、それとリグニンが結合したLCCの存在様式がイネの生長や分げつに係わっている可能性があり、興味深い。著しい矮化を示した形質転換イネは馴化できなかったため、そのような著しい矮化と極めて多数の分げつを示す組換えイネと中間的形質を示す組換えイネとコントロールの組換えイネを比較して、遺伝子の発現パターンと形質の関係をトランスクリプトーム解析するとともに、LCCにおけるヘミセルロースとリグニンの間の結合数の関連を確認することを目的とした。また、この著しい矮化や分けつの増加がCcAbf62Aに特有のものかどうかを他のアラビノフラノシダーゼ遺伝子をイネに導入して調べることにして、Coprinopsis cinerea由来の他のアラビノフラノシダーゼの遺伝子であるCcAbf62B, CcAbf62Cの遺伝子を単離してイネへの発現導入ベクターを構築した。これらの遺伝子を導入された組換えイネからも著しい矮化を示したものが得られた。なお、馴化できた中間的形質を示すイネの遺伝子発現パターンを調べたが、コントロールと明確な差はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、Coprinopsis cinerea由来のアラビノフラノシダーゼCcAbf62A, B, Cの三種類の遺伝子が単離され、植物内で発現できるようにアグロバクテリウムを用いた形質転換のための発現ベクターをイネに導入して形質転換イネが得られた。CcAbf62A, B, Cを導入されたイネの内、それぞれ約1/3, 1/5, 1/7程度のものが著しい矮化を示した。そのため、アラビノフラノシダーゼの導入が、アラビノキシランを主成分とするヘミセルロースを細胞壁に含むイネにおいては、形態変化を引き起こすことが確認された。特に興味深い著しく矮化した形質転換イネを馴化することを試みているが、成功していない。中間的形態を示したイネの後代を取って、生育させるとほぼ野生型と同じ成長パターンを示し、野生型のイネと遺伝子発現パターンを比較したが、有意な差は見受けられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Coprinopsis cinerea由来のアラビノフラノシダーゼCcAbf62A, B, Cの三種類の遺伝子が発現している形質転換イネを得てから、同じ条件で生育させてトランスクリプトーム解析等を一気に行う予定であるが、馴化に手間取り、特に興味深い著しく矮化した形質転換イネの馴化に成功していない。この部分に遅れが生じてしまったので、中間的な形態を示す形質転換イネの後代を取ったがほぼ野生型と変わらなかった。 形質転換体の解析では、同じ条件で生育させたものを用いなければならないため、発芽や大きさなどその条件を同一にする必要があり、試行錯誤する必要がある。そこで、馴化が困難であるのであれば、培養瓶中の著しく矮化した形質転換イネから直接RNAを単離することにした。ただ、植物量が少ないため、同じ系統のものを増やすことにしたが、そこが難航している。
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