研究課題/領域番号 |
22K05763
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河内 護之 京都大学, 農学研究科, 特定准教授 (70771294)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 菌糸塊 / 木材分解酵素 / ヒラタケ / Pleurotus ostreatus / 担子菌 / 酵素生産 / 高密度培養 / 細胞壁 / 腐朽菌 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに、ゲノム情報、遺伝子組換え技術が最も整備された白色腐朽菌であるヒラタケPleurotus ostreatusをモデルに、細胞壁研究に取り組んできた。その中で、細胞壁合成遺伝子の制御に関与することが推測される、タンパク質リン酸化酵素遺伝子Xを破壊すると菌糸塊が分散することを突き止めた。しかしながら遺伝子Xの破壊により、なぜ菌糸塊が分散するのか、そのメカニズムは不明である。したがって本課題では、1. 遺伝子Xの破壊により引き起こされる細胞壁構造の変化、2. 遺伝子X破壊が細胞壁合成制御に与える影響、特にこの2点を中心に解析し、白色腐朽菌の菌糸塊形成機構を解明する。
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研究実績の概要 |
まず、本計画で使用予定であったゲノム編集により作製した菌糸塊分散株について、形質が非常に不安定であったため、相同組換えにより新たな菌株の樹立を行った。その結果、2株の形質が安定した菌糸塊分散株の取得に成功した。また、この菌株からのRNA抽出が完了し、遺伝子発現解析に向けた準備が完了した。 また、子嚢菌で菌糸塊分散に関わることが報告されている細胞壁多糖α-グルカンについて、ヒラタケでその生合成遺伝子であるags1を同定した。ヒラタケでags1破壊株を作製し、菌糸塊の分散性について検証を行ったが、菌糸塊は野生株と同様に形成することが明らかとなった。したがって、ヒラタケの菌糸塊形成はα-グルカン以外の細胞壁多糖が関係していることが示唆された。 続いて、菌糸塊分散株の細胞壁を経時的に観察する技術を構築する為、細胞壁壁多糖結合ドメインと蛍光タンパク質を融合した細胞壁多糖蛍光プローブ及びキチンに特異的に結合する低分子calcofluor whiteを用いてヒラタケ細胞壁のイメージングを行った。条件を検討することで細胞壁中のグルカンとキチンを同時染色する技術の確立に成功した。 また、木材分解酵素の大量生産系を持つジョージアと交渉を進め、共同研究が実行可能な体制を整えた。 以上の成果により、次年度に菌糸塊分散の要因を追及する為の基盤技術やサンプルの準備が完了し、加えて菌糸分散株の木材分解酵素生産における実用性を見極める体制の構築も完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた細胞壁表層イメージング技術が、初年度で完成しさらに当初は2種の多糖の検出を予定していたが3種の多糖の同時イメージングが可能になった。本技術により、菌糸塊分散株の細胞壁構造を経時的に観察可能になり、研究が大幅に進展すると考えられる。加えて、木材分解酵素の大量生産系を持つジョージアとの共同研究計画も開始でき、菌糸塊分散株の実用性についても新たに検討可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
取得したRNAを用いて、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施し、菌糸塊分散の原因遺伝子である遺伝子Xの下流で働く、細胞壁多糖合成酵素及び細胞壁合成制御に関わる転写因子の同定を進める。 また、菌糸塊分散株の細胞壁多糖の構成、及び細胞壁イメージング技術によるマクロな細胞壁構造の解析を進行し、菌糸塊分散の要因を追及していく。 さらに、ジョージアとの共同研究を開始し、菌糸塊分散株が酵素生産株として実用的なのか検証を進める。
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