研究課題/領域番号 |
22K05768
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
星 徹 日本大学, 理工学部, 准教授 (30513973)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ナタデココ / セルロースナノファイバー / 活性炭 / 尿毒症 / 経口吸着炭 / カプセル化 / 吸着炭 / 経口吸着剤 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,飲みこみやすく,消化管内壁に吸着しない経口吸着剤の開発のために,申請者が開発した『セルロースゲル膜によるカプセル化技術』により調製した吸着炭内包中空球状ナタデココの消化管内環境における安定性や尿毒症毒素の吸着特性の評価を行う.さらに,『セルロースゲル膜によるカプセル化技術』のプロセスを見直し,従来よりも内包量を多くすることで,吸着炭内包中空球状ナタデココ1粒当たりの尿毒症毒素の吸着量増大を達成する.これらの研究成果と市販されている経口吸着剤の比較を行い,吸着炭内包中空球状ナタデココの特徴を明らかにし,吸着炭と消化管が接触しない新たな複合型経口吸着剤を提案する.
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研究実績の概要 |
① 吸着炭内包中空球状ナタデココの尿毒症毒素前駆体であるインドールと,インドールの前駆体であるトリプトファンの吸着を純水および模擬腸液(pH6.8)中で行い評価した.インドールの吸着において,Langmuirプロットより求めた飽和吸着量の平均値は模擬腸液中の方が低くなったが,明確な有意差があるとは言えず,模擬腸液中のイオンの影響は小さいことが明らかとなった.対して,トリプトファンでは,模擬腸液中での飽和吸着量が純水中の約半分となった.pH6.8下では,トリプトファンはほぼ100%双生イオンとして存在しており,模擬腸液中の無機イオンとの相互作用により活性炭への吸着が抑制されたことが示唆された. ② 吸着炭内包中空球状ナタデココは,活性炭を含む前駆体ゲルの表面にナタデココを産生することで調製される.2022年度は前駆体ゲルにアルギン酸ゲルを用いていたが,内包量を多くすることが困難であった.熱により溶解-ゲル化を制御できる寒天ゲルを前駆体に用いることで,内包活性炭量は1.8倍程度増加した.2023年度は活性炭内包寒天ゲルを再現性良く大量に調製する方法を開発した.この方法は活性炭内包寒天ゲルの調製と同時に球状成形も可能となり,調製プロセスの簡略化を達成した. ③ 内包量の多い活性炭内包寒天ゲル表面では,ナタデココが産生せず,活性炭の内包ができなかった.活性炭量が多いと寒天ゲル表面に活性炭が露出し,前駆体ゲル表面の疎水化により,ナタデココの産生が阻害される.そのため,内包量の多い活性炭内包寒天ゲル表面をアルギン酸ゲルでコーティングすることで,ナタデココによるカプセル化に成功した.アルギン酸ゲルコーティングすることで,活性炭内包量を従来法と比較して2.5倍程度まで増やすことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 吸着炭内包中空球状ナタデココのin vitroでの安定性評価:模擬胃液と模擬腸液中の安定性は評価済みである.消化酵素を含む系での安定性は今後実施予定である.また,ナタデココを形成しているセルロースナノファイバーの安定性をSEM観察により評価する予定であったが,大学内共通機器の故障により実施していない.外部機関に装置を借りることができたので,今後セルロースナノファイバーの形態観察を行う. ② 吸着炭内包中空球状ナタデココの消化管環境での吸着特性評価:インドールとトリプトファンの吸着評価は実施済みであり,純水および模擬腸液中での吸着特性の比較を進めている.活性炭の内包量を増やしたナタデココカプセルの吸着評価も進めている.また,製造元より市販の吸着炭を入手でき,こちらの評価も進めている. ③ 内包吸着炭量を向上させたカプセル化法の確立:前駆体ゲルをアルギン酸ゲルから寒天ゲルに変更し,さらにアルギン酸ゲルコーティングを施すことで,ナタデココに内包する活性炭量を増やすことに成功した.ゲル化前の溶液の粘度が高く,ハンドリング性が低下するため,これ以上内包量を増加することは難しいと考えられる.また,内包量が少ないときに観察されていたナタデココカプセルの内部の空隙が見られなくなったことから,十分量が内包されていると示唆される. 以上より,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は以下の2つを計画している. ① 吸着炭内包中空球状ナタデココのin vitroでの安定性評価 消化酵素を含む模擬腸液中での安定性評価を行った後に,ナタデココを形成しているセルロースナノファイバーの安定性をSEM観察により評価する. ② 吸着炭内包中空球状ナタデココの消化管環境での吸着特性評価 再現性の確認を行うとともに,尿毒症毒素またはその前駆体の純水および模擬腸液中での吸着評価を進める.また,市販の吸着炭との比較を進める.
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