研究課題/領域番号 |
22K05779
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宇治 利樹 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (00760597)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アマノリ / 植物ホルモン / C/Nバランス / 遺伝子発現 / 1アミノシクロプロパンカルボン酸 / 有性生殖 / 炭素・窒素代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
気候変動などの影響により、安定的な海苔生産が厳しくなることが予想されており、多収性や色落ち耐性、高水温耐性といった新たな海苔の品種が望まれている。今までの研究成果から、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)が成熟を促進させる一方、生長を抑制させることが分かったが、ACCのシグナル伝達系を阻害することで、生長抑制が回復することを明らかにしている。またACCを処理することで高温耐性が向上することも分かっている。そのため、これらの生理作用の根幹に関わると予想されるACCのC/N調節機構を明らかにすることで、多収性やストレス耐性株といった新たな海苔の有用品種作出に向けた基礎的知見が期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、水産重要種であるスサビノリを材料とし、植物ホルモンの1種であるエチレンの前駆物質、1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)がどのような機構により、生体内の炭素と窒素のバランス(C/Nバランス)を制御し、生長、生殖、ストレス応答などをコントロールしているかを明らかにすることを目的としている。 令和5年度は、CHN analyzerにより、ACC処理した藻体におけるC/N比を測定した結果、葉状体においては、コントロール区7.27、ACC処理区6.61となり、ACC処理藻体においてC/N比が低くなることが明らかとなった。一方、糸状体においては、コントロール区5.57、ACC処理区5.75となり大きな違いは見られなかった。 また、令和4年度に実施したACC応答性遺伝子の網羅的な発現プロファイルの解析結果から、糸状体におけるACCの役割として、異化作用を促進し、同化作用を抑制することが考えられた。この現象は長期間の暗期条件下で見られる応答と類似している可能性が考えられた。そこで、長期間の暗期条件下での遺伝子発現解析を行い、ACC応答性遺伝子の発現プロファイルと比較したところ、ACC処理により増加がみられた遺伝子群は50%が、減少がみられた遺伝子群は77%が共通していた。共通していた応答としては、分岐鎖アミノ酸の分解、プロテアーゼの活性化、光合成系の抑制などがあげられる。 さらに、ACC応答性遺伝子の遺伝子発現制御にエピジェネティックな制御が関連しているかを明らかにするため、small RNA解析手法やクロマチン解析手法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海藻におけるACCの役割は不明な点が多いが、スサビノリ糸状体におけるACC応答性遺伝子群と長期間の暗期条件下での遺伝子群が類似していることが明らかとなり、ACCの役割として異化作用を促進し、同化作用を抑制することで窒素源の再配分を制御している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
ACC応答性遺伝子の遺伝子発現制御がどういったものなのかを明らかにするため、small RNA解析やクロマチン解析を行う予定である。また、今年度ACC測定のための設備が研究室で整備される予定であるため、様々な環境条件で培養した藻体内のACC含有量を測定する計画でいる。
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