研究課題/領域番号 |
22K05794
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
山本 岳男 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (20524846)
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研究分担者 |
豊田 賢治 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 特任助教 (00757370)
大平 剛 神奈川大学, 理学部, 教授 (10361809)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ズワイガニ / 最終脱皮 / 幼若ホルモン / 脱皮ホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
甲殻類の多くは、一生脱皮を続けながら成長する。一方、ズワイガニ類には生涯で最後の脱皮が存在し、体サイズが小さい個体ほど最終脱皮を選択する割合は低い。しかし近年、小型の雄が最終脱皮を選択する傾向にあるため、成熟サイズが小型化している。我々は、餌環境が良いと最終脱皮を選択する可能性が高まると仮説を立て、給餌量の異なる試験区を設けて最終脱皮個体の出現率を比較する。さらに飼育個体の血リンパ中の脱皮と成熟に関するホルモン量の変動をモニタリングし、これらが最終脱皮に関わっているかを明らかにする。さらにこれらホルモンを小型個体へ投与し、最終脱皮の誘導を試みる。
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研究実績の概要 |
前年度、生体アミン関連経路が最終脱皮後個体で活性化されている事がわかった。そこで、生体アミン類が最終脱皮に関与しているのかを明らかにする前段階として、眼柄神経節や脳中から主要な生体アミン類を定量化する手法について検討した。その結果、HPLC-ECD分析およびLC-MS分析によって眼柄神経節や脳中からドーパミンやオクトパミン、セロトニンなどの主要な生体アミン類とその前駆体らを安定して定量できる条件を見出した。 最終脱皮前の雄ズワイガニを飼育して、脱皮直前の血中ファルネセン酸メチル(MF、幼若ホルモン)と20-ヒドロキシエクジソン(20E、脱皮ホルモン)濃度を調査した。その結果、MF濃度は、その後通常脱皮する個体>その後最終脱皮する個体となり、MFが幼若形質の維持に用いられていると考えられた。20Eは両脱皮群で顕著な差がなかった。最終脱皮後、長期飼育している雄ベニズワイガニの血中MF濃度を調査した。その結果、脱皮後日数が長いほどMF濃度が高かった。自然界では最終脱皮後日数の短い個体は交尾と交尾海域への出現頻度が低いことから、MFは最終脱皮後には生殖行動の制御に用いられていることが示唆された。 最終脱皮は通常脱皮よりもエネルギー要求量が大きいと推察されることから、飼育下で給餌頻度が異なる3試験区(3回/週、1回/週、1回/2週)を設け、最終脱皮率を比較した。その結果、最終脱皮率は給餌頻度が最低の区で32%、他の2区で44~47%となり、摂取エネルギー量の低下が最終脱皮率を下げる可能性が示唆されたが、有意ではなかった。 性成熟しているが形態的には未成熟な最終脱皮前の雄ズワイガニを用いて、最終脱皮前の交尾がその後の最終脱皮率に及ぼす影響を調査した。供試した11個体のうち6個体が交尾に成功した。このうち3個体が脱皮して全てが最終脱皮であったが、サンプル数が限られており、結果は不明瞭であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要なアミン類を定量化する技術が確立出来たことにより、生体アミン類によるズワイガニの最終脱皮制御機構を調べることが可能となった。また、MFが雄の最終脱皮と通常脱皮を選択する際に、幼若形質の維持に関係していること、最終脱皮後には生殖行動の制御に用いられていることを示唆する事ができた。飼育実験では、当初の予想通り、最終脱皮率が特に給餌量の少ない区で低くなることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
MFが最終脱皮に影響していることを確かめるため、通常では最終脱皮を選択しない小型の雄ズワイガニを用いて、MFの分泌量を制御することにより最終脱皮の誘導を試みる。
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