研究課題/領域番号 |
22K05798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤森 康澄 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40261341)
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研究分担者 |
富安 信 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (50837101)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 集魚 / LED光 / 魚群行動 / 画像解析 / バイオテレメトリー / 魚類行動 / In-Situ計測 |
研究開始時の研究の概要 |
漁業における光の利用は,特に集魚灯という形で発展してきたが,最近では,人工光の誘導効果により特定の種の漁獲だけを減少させることに成功した事例も報告され,資源保全のための漁業技術開発における光の利用に注目が集まっている。 本研究では,光によって魚を集めるだけでなく,その行動を制御できる質的操作を行うための技術開発に資する知見収集を目的とした実験環境の構築を目指し,実際の自然環境において生息する多様な魚種を対象として,刺激源である光に対する分布や行動をカメラ,魚群探知機,バイオテレメトリー手法を用いて空間的に観測,解析するためのIn-Situ計測手法を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究では, LED光の特性の変化が魚の行動に与える影響を定量的に評価する方法を確立することを目的とし,光に対する魚類の行動について,①カメラ観測による映像データを用いた解析,②魚群探知機による音響データを用いた分布量の解析,③バイオテレメトリーによる集魚灯周囲の魚の行動解析を行い,光の特性と行動パターン,個体の特徴の関係(映像データ:光近傍の集魚量・遊泳状態・個体サイズ,バイオテレメトリー・データ:集魚灯を中心とした広範囲での行動パターン),集魚効果(音響データ:集魚密度・集魚範囲)の変化を総合的に解析することを計画している。本年度は,本研究で提案する観測プラットフォームを試作し観測の可能性を確認するとともに,紋別市オホーツクタワーにおいて①と②に関連する実験を実施した。概要を以下に示す。 ①観測プラットフォームの試作と検証 アルミ鋼材により集魚用LED灯を内蔵する観測用プラットフォームを試作し,夜間タワーにおいてカメラを装着して水中に垂下し,集魚の状態を確認し,カメラ画像による集魚量の計測が可能であることを確認した。 ②魚群探知機を用いた集魚状況の観測 タワー海底階観測窓の内部に白色LED灯を設置してカメラによる魚類観測を行うとともに,タワー外部海面から魚群探知機を垂下して観測窓周辺を含む範囲を対象として計測を行い,両観測結果の比較から本計画における魚群探知機の有用性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,実績概要に示した①と②について以下の実験により計測の妥当性を検証した。 1)観測用プラットフォームの試作 アルミ鋼材により集魚灯を内蔵する観測用プラットフォームを試作し,夜間,タワーにおいてカメラを装着して水中に垂下し,集魚の状態を確認し,カメラ画像による集魚量の計測が可能であることを確認した。 2)オホーツクタワー観測窓を利用した魚群探知機による計測の妥当性の評価 タワー海底階の観測窓(水深約7m)の窓枠内部に集魚用の白色LED灯(出力20W,50W)と窓付近に集魚される魚類を記録するためのカメラを設置するとともに,タワー外部の渡海橋から魚群探知機(周波数:90kHz,記録間隔1s)を垂下して観測窓周辺を含む範囲を対象として計測を行った。 カメラ画像については,得られた静止画像中において魚影を確認できるものを1尾として計数し,同時に魚種の判別を行った。また,魚群探知機のデータに関しては,1時間ごとのエコーグラム画像を抽出し,MATLABを用いてHSV色空間において魚と判断される反応について閾値を設けて二値化処理を行い,魚と判定された部分のピクセル数を算出した。カメラ観測によって得られた5分ごとの魚の個体数と魚群探知機から得られた魚影のピクセル数の5分ごとの平均値を比較した結果,カメラ観測では,11時間での延べ個体数は20Wで1992個体,50Wでは3045個体となり,魚群探知機から得られた魚影のピクセル数は20Wで41861,50Wでは87010となった。このように,いずれの観測でもLED灯の出力にともない集魚された個体数を示す数値が1.5~2倍程度増加した。このことから,魚群探知機は光の出力による空間的な集魚量の増加を十分にとらえており,集魚観測における魚群探知機の有用性が確認された。 以上より,計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
プラットフォームの試作・検討では,想定以上に魚類が集魚灯近傍に集まることにより,カメラの撮影範囲を塞ぎ観測不能となる状況が生じることが確認された。そのため,今後はカメラの装着位置を変更するなどの対応を検討する。 なお,プラットフォームを用いた観測では,近距離での撮影が可能となるため,比較的精度よく個体サイズを計測できることがわかった。そのため,今後は個体数の計測だけでなくサイズ計測も検討に加えたい。また,本年度の実験において魚群探知機の有効性が確認できたため,次年度はプラットフォーム上方に魚群探知機を位置させて実験を行い,集魚灯を中心とした魚の分布密度,分布範囲の計測を行う。また,同時にタワー近傍で釣獲された複数の個体にピンガーを装着して放流し,バイオテレメトリー・データを収集する。同データから,特に夜間のLED灯光時の個体の遊泳行動を抽出・解析することで,集魚時の行動パターンを調べる予定である。
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