研究課題/領域番号 |
22K05800
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀和 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90432062)
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研究分担者 |
神谷 充伸 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (00281139)
長田 敬五 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (10147829)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 底生珪藻 / 付着珪藻 / 汽水域生態系 / 河口域生態系 / 多様性 |
研究開始時の研究の概要 |
河口・汽水域という高機能生態系をいかに維持,修復,そして創出するかを検討することは水産学及び環境保全科学において重要な課題である。そのためには,河口・汽水域生態系の仕組みを総合的に理解し,調和を保ちながら,生産力を引き出す新しい技術の発想が不可欠である。底生珪藻類は河口・汽水域生態系の出発点である基礎生産者として複雑な食物網を支える重要な存在であり,その実態・動態を把握することは,これらの問題解決の糸口となる。本研究は,底生珪藻の多様な生存戦略と適応様式に係わる諸機能を解明し,それらに基づいた持続的な河口・汽水域の生物生産維持と環境保全技術の開発・改善へ結びつける基礎的取り組みである。
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研究実績の概要 |
2022年度は下記4項目を実施した。(1) フィールド選定と珪藻試料の採集:これまでに採集した試料に加えて,新たに鹿児島県奄美大島と北海道・道東にて珪藻試料の採集を行った。(2) 出現種の形態観察と同定,付着様式の把握:上記フィールド探査と同時に採集した試料をもとに,光学及び走査電子顕微鏡観察による形態学的情報を収集し,分類学的アプローチにより出現種及び付着様式を分析した。a) Seminavis属3種の葉緑体の形態と配置や殻微細構造の詳細な記載を行い,帯片構造に関する新知見を得るとともに,近縁種との形態学的相違点を明確にした。この成果は関連雑誌に3編の原著論文として報告した。b) 本州中北部日本海沿岸における海藻・海草付着珪藻相をより詳細に検討した結果,42属72分類群94未同定分類群が確認され,関東地方沿岸で行われた研究と比較したところ,両海域で共通する分類群が多く,種組成に大差はないことが示唆された。さらに,Gomphonemopsis属やCocconeis属に既存種と形態学的特徴の異なる分類群も確認された。この成果は関連雑誌に参考論文として報告した。c) 北海道東部沿岸で採集したアマモ類葉上における付着珪藻相調査からは, 22属67分類群8未同定分類群が確認されたとともに,Cocconeis属の特定の分類群が優占することが明らかになった。(3) 出現種の分子系統解析:汽水生種Nagumoea属2種の分子系統学的情報を収集・把握した。(4) 河口・汽水域生態系構成生物の相互関係把握のための基礎資料の収集:千葉県ふなばし三番瀬海浜公園において,コメツキガニの食資源として珪藻の種同定と現存量測定により探索した。その結果,コメツキガニは底生微細藻類が多い所に巣穴を形成することと底生微細藻類の現存量は判別するが,その種類は認識していないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,鹿児島県奄美大島,北海道道東に加えて,沖縄・南西諸島沿岸での河口・汽水域での多様な基質環境からの付着珪藻を採集し,出現種の同定と付着様式の把握及び出現種の分子系統解析用の単種培養株の確立に取り組む予定であった。しかし,新型コロナウイルス感染対策に伴う活動自粛により,予定していた当該水域での調査が実施できなかった。そのため,(1) 2022年度は採集した珪藻試料をもとに,出現種の形態観察と同定,(2) 付着様式の把握と環境因子との関係の考察,(3) 特定珪藻の分子系統解析を重点的に行った。その結果,河口・汽水域における新たな珪藻類の形態学的,生態学的情報を得るに至り,河口・汽水域生態系理解の貴重な資料となったと考える。なお,(1)と(2)に関しては,研究分担者・長田敬五・所属機関(新潟県)所有の高分解能走査電子顕微鏡(SEM)の使用によりなされた。経費は主に上記2地点での採集と新潟でのSEM使用(6回,延べ11名分)の交通・滞在費に充てた。(3)に関しては,研究分担者・神谷充伸によるDNA解析に依った。経費の物品費はその薬品代と分析費用に充てた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2022年度に実施できなかった(1) 沖縄・南西諸島沿岸での試料採集を行い,河口・汽水域の低次生産者としての微細藻類群集の構造解析,(2) 光学及び高分解能走査電子顕微鏡観察による詳細な形態学的情報の収集と低真空分析走査電子顕微鏡による付着様式を把握による,より詳細な分類学的検討,(3) さらなる単種培養株の確立と分子系統解析による珪藻の分類体系を再検討と系統解析,(4) 河口・汽水域生態系構成生物の相互関係把握のための基礎資料の収集として鳥類を対象とした珪藻類との関係把握を行う。さらに,それらから得られた情報のデータベース構築と情報公開(関連学会・学会誌への発表)の取り組みも併せて遂行する。
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