研究課題/領域番号 |
22K05813
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
児玉 圭太 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主幹研究員 (90391101)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 底棲魚介類 / 個体群動態 / 生活史特性 / 環境変動 / 東京湾 |
研究開始時の研究の概要 |
資源減少と環境要因が生活史特性の変化を引き起こし、その結果、個体群の再生産力が低下して、資源回復が阻害される「逆補償的減少(depensation)」に着目し、底棲魚介類の資源が回復しない要因を解明する。東京湾産シャコの資源減少にともない生じた生活史特性の変化が資源回復の阻害に及ぼす影響を、野外調査(1)、室内実験(2)、および数理モデルによる個体群動態シミュレーション(3)により明らかにする。そして、環境要因と生活史特性の変化が個体群の再生産力を低下させ、資源回復阻害につながる可能性を検証する。
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研究実績の概要 |
東京湾内において、底棲魚介類群集の優占種であるシャコを対象として、再生産期において野外調査を毎月実施した。特に親の成熟状態ならびに生活史初期の幼生および稚シャコの生態に着目して、幼生の空間分布の日周変化、および雌成熟個体の産卵量と幼生および稚シャコの個体数密度の関係を解析した。 幼生の個体数密度と、当歳の稚シャコの個体数密度は異なる変動傾向を示しており、幼生の浮遊期間から稚シャコに変態して着底するまでの生活史段階における生残率が加入量を規定しているものと推察された。当歳の稚シャコの個体数密度は2010年代には低水準で推移したが、2021年に大きく増加し、その後再び減少傾向を示した。稚シャコ個体数密度と翌年の年間産卵量には有意な正相関が認められた。この結果は、生後1年の個体の再生産により資源が支えられている現状を示唆する。最小成熟体長は6.2㎝であり、資源量高水準期(1980年代)の8㎝、資源量低下期(2000年代)の7.4㎝より成熟個体の小型化が進行していることが分かった。しかし、6㎝台の成熟個体は2021年に1個体採集されたのみであり、主として7㎝以上の個体が産卵する状況であった。今後、6㎝台の成熟個体の出現頻度が増加するか注視する必要がある。 一方、シャコ幼生の水平分布調査において、幼生は6~10月に出現したが、年平均個体数密度は昨年に比べ減少傾向を示した。また、8月に5m間隔で幼生鉛直分布および昼夜分布変化を調査した。昼夜ともに幼生は水柱全体に広く分布した。水温躍層下では溶存酸素濃度(DO)の低下が見られ、底層付近でDO 2mg/L未満の貧酸素が認められた。過去の幼生の貧酸素耐性実験結果も考慮すると、貧酸素に遭遇した幼生は24時間程度の短期間曝露であれば忌避あるいは斃死しないと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天候状況のため野外調査を予定通り実施できない期間があったが、再生産期においては調査を計画通り実施して試料の採集と解析を行うことができた。一方、資源量水準が著しく低いため、室内実験の供試個体が確保できない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査を継続してデータを蓄積し、幼生および稚シャコの個体数密度の長期変化を解析する。また、水平・鉛直分布の季節変化および日周変化も明らかにする。生態影響因子を冗長性解析等により推定し、生活史初期段階の生残率に関与する要因の候補を推定する。また、親の小型化にともなう成熟期の晩期化の可能性についても検討し、水温上昇や貧酸素水塊の資源量低下への寄与も推定する。また、餌料条件を検討するため、動物プランクトンおよびマクロベントスの群集解析を行い、過去の群集組成に関する文献情報と比較して、近年の餌生物利用可能性についても検討を行い、生活史初期の生残率との関連解明を行う。一方、資源量水準が著しく低いため、室内実験の供試個体の確保が困難な状況だが、引き続き野外調査で実験供試個体の採集を試みる。
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