研究課題/領域番号 |
22K05816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
谷田 巖 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (00783896)
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研究分担者 |
奥山 隼一 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (80452316)
南部 亮元 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (90470129)
岩崎 隆志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主任研究員 (00522640)
三田 哲也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 研究員 (10820285)
手塚 尚明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (30371967)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ナマコ / 棘皮動物 / ベントス / 繁殖 / 産卵 / 生殖 / アリー効果 / 資源管理 / 産卵誘発 / 卵黄栄養型発生 / リラキシン / 繁殖生態 / バイオテレメトリー / 種苗生産 / 再生産 |
研究開始時の研究の概要 |
移動性の乏しいマクロベントスでは、乱獲による個体密度の低下が、放卵放精による繁殖成功率を低下させ、資源回復を阻害する「アリー効果」が指摘されている。しかし、先行研究の多くは理論的なモデル研究に留まり、実海域における物理環境やベントスの繁殖行動を反映したアリー効果の評価手法は確立していない。本研究では、チズナマコを対象に、①天然海域での産卵前の蝟集行動による密度効果、②産卵タイミング及び個体間での産卵の同調性、③現場海流モデルに基づく配偶子拡散、及び④人工採卵による配偶子の受精特性を明らかにし、これらを基にしたモデル解析により、繁殖に必要な個体密度の閾値(アリー閾値)を評価する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、石垣島川平湾でのチズナマコ個体群を対象に、生殖腺観察による繁殖期の推定調査を行った結果、昨年度と同様に11月に産卵盛期があると考えられた。また、自作水中インターバルカメラを野外に設置してチズナマコの産卵シーンを11月に撮影することに初めて成功し、これらのデータから、11月がチズナマコの産卵盛期であると考えて間違いないと考えられる。ただし、その他の時期にも成熟した生殖腺を持つ個体が確認され、また、ラボ試験での産卵誘発により産卵が可能であることも確認できたことから、産卵盛期以外の時期にどの程度の規模で産卵が起こっているかについては、さらなるデータの蓄積が必要である。このほか、野外でのタグ標識による個体の移動調査についても継続した。 水槽試験により、チズナマコのメス個体から採卵し、精子濃度を変えて受精率を調べる試験を行った。昨年度は48穴プレートで試験したが、小容量の容器では長期間胚を生きたまま維持することが難しく、卵黄膜形成で受精を判断する必要があるものの、チズナマコの卵黄膜形成は顕微鏡下で判断するのが比較的難しいため、今回は1L容器で試験を行い、胚発生の有無により受精率を判断した。 また、次年度に石垣島川平湾を対象とした海水流動モデルを利用する予定であるが、既存のデータはチズナマコの分布する潮間帯付近のデータが疎らであることから、同海域の一部でチズナマコの分布する浅場を中心にスキャンソナーを用いた推進調査を実施した。 このほか、水槽試験によりチズナマコ幼生の塩分耐性に関する試験を実施した。また、オオクリイロナマコ幼生を用いて、水温による発生速度の違いを調べる水槽試験も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外でのチズナマコの繁殖期を推定するために、生殖腺観察を定期的に実施してきたが、産卵盛期が11月あたりであることは判明したものの、ほぼ周年で成熟個体が一定数存在することから、これらの個体がその他の時期に産卵しているのか、あるいは成熟した状態を保ったまま産卵盛期まで産卵しないのか不明であるという課題が明らかになった。そのため、2024年度には生殖腺採取個体にタグ標識を行い、同一個体の生殖腺の状態を定期的に観察する調査を実施する予定である。また、2022年度に実施した発信機によるチズナマコの個体移動のデータ解析に時間を要したため、2023年度は発信機の調査は実施せず、2024年度に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
生殖腺観察及び水中カメラを用いた産卵期調査は継続して実施する。特に、生殖腺観察についてはタグ標識による個体識別を併用することで、より高精度に産卵期を推定することを目指す。また、昨年度に実施しなかった、発信機による個体追跡を用いた、産卵期のチズナマコの移動パターンの調査について、今年度の産卵盛期である11月に実施する。 また、石垣島川平湾のチズナマコを対象とした、放卵・放精での受精率に対する、親個体の密度の効果を推定するモデルを作成する。石垣島川平湾の海水流動については、潮汐流と波浪を考慮した赤土粒子の輸送モデルが過去に報告されており、それらのデータ・モデルをベースとしてAllee et al. (2017) Mar Ecol Prog Serによるオニヒトデを対象として仮想的な環境を想定した個体の蝟集・配偶子の流動・受精のモデルと組み合わせることで、石垣島川平湾の実際のチズナマコ個体群を対象としたモデルを作成する。これらに必要なパラメータとして、これまでの調査でチズナマコを対象に得られた、野外での個体密度及び産卵期の個体の蝟集の有無、産卵期・タイミング及び一回の産卵にかかる時間と放卵・放精数、配偶子の生存時間、精子濃度と卵の受精率の関係などを組み込む。
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