研究課題/領域番号 |
22K05822
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
天野 勝文 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (10296428)
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研究分担者 |
阪倉 良孝 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (20325682)
高谷 智裕 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90304972)
山本 直之 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (80256974)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | フグ毒テトロドトキシン / フグ毒結合タンパク質 / 脳 / 下垂体 / フグ毒 / フグ |
研究開始時の研究の概要 |
フグはフグ毒(テトロドトキシン;TTX)を含む餌を摂取して毒化する.我々は,有毒フグの脳内にTTXが存在することを発見し,さらにTTXがフグ脳内で重要な生理機能を果たすことを提唱した.定説ではTTXは脊椎動物の血液脳関門を通過しないとされるが,摂餌で取り込んだTTXをフグが脳に蓄積する事実は,この定説を覆す機構をフグが有することを意味する.通常,TTXはフグ毒結合性タンパク質(PSTBP)と結合して有毒部位に運ばれる.我々は最近,有毒トラフグ稚魚の脳内の血管にPSTBPを認めた.本研究では,「TTXはPSTBPと結合することで血液脳関門を通過して脳に入り生理機能を発揮する」との仮説を検証する.
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研究実績の概要 |
[実験1.トラフグ中枢神経系におけるPSTBPの分布] 令和4年度は,トラフグのフグ毒結合タンパク質(PSTBP)に対するウサギポリクローナル抗体を用いて,フグ毒テトロドトキシン(TTX)含有餌を経口投与した養殖トラフグ稚魚(TTX投与群)と無毒餌を経口投与した養殖トラフグ稚魚(対照群)の頭部の免疫組織化学を行った.PSTBP免疫陽性反応は,両群において腺下垂体に相当する領域に検出されたが,脳内には検出されなかった.令和5年度は,切片に抗原賦活化処理(10mM クエン酸バッファー,110℃, 15 min)を施したところ,PSTBP免疫陽性反応は小脳のプルキンエ細胞,下垂体柄,脳内の血管等にも広く検出された. [実験2.トラフグ視床下部の神経葉ホルモン細胞体とTTXとの関連] TTXはTTX投与群のみで,神経下垂体,下垂体柄,視索前野の一部などの内分泌系に関与する領域で検出された.神経葉ホルモンは視床下部に存在する細胞体で合成され,神経軸索によって神経下垂体を経て神経葉から放出される.そこで,メラニン凝集ホルモン(MCH)を例として,TTXとMCHの視床下部―下垂体における分布を予備的に調べた.その結果,下垂体柄にMCHとTTXが近接して検出され,さらに視床下部の一部のMCH免疫陽性細胞体でTTXが共存していると考えられる染色が観察された.以上より,下垂体に到達したTTXが逆行性に視床下部に輸送されて作用することが示唆されたが,さらに検討を要する. [実験3.PSTBP非保有魚における経口投与TTXの動態] PSTBPの生理機能について推定するために,PSTBP非保有魚のメダカを用いて,経口投与したTTXの動態を免疫組織化学染色で調べた.メダカは致死量以下のTTX含有餌を摂餌したが,脳と肝臓を含む魚体前半部にTTXは検出されなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は,養殖トラフグ稚魚の中枢神経系におけるPSTBPの分布を明らかにすることができた.さらに,経口投与されたTTXが下垂体に到達したのちに,逆行性に視床下部に輸送される可能性を示すことができた.PSTBP非保有魚における経口投与TTXの動態についても,研究を開始することができた.
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今後の研究の推進方策 |
養殖トラフグ稚魚で得られた以上の知見が天然の有毒フグについても当てはまるか否かを検討する.予備的実験では,神奈川県江の島で釣獲したクサフグの下垂体においても,二重免疫組織化学染色でPSTBPとTTXが検出されたので,さらに個体数および種数を増やして詳細に調べる.肝臓の毒性も測定し,毒性との関連についても考察する. 令和5年度の研究で,下垂体に到達したTTXが逆行性に視床下部に輸送されて作用することが,TTXとMCHの二重免疫組織化学で示唆されたが,さらに他の神経葉ホルモンと視床下部ホルモンについても検討する. 令和5年度は,PSTBPの生理機能について推定するために,PSTBP非保有魚のメダカを用いて,経口投与したTTXの動態を免疫組織化学染色で調べた.メダカは致死量以下のTTX含有餌を摂餌したが,脳と肝臓を含む魚体前半部にTTXは検出されなかった.令和6年度は,TTX含有餌の投与期間,固定のタイミングなどを検討する. 令和4年度の研究で,養殖トラフグ稚魚のTTX投与群では下垂体にTTXが検出されたことから,TTXが下垂体ホルモンの分泌に関わる可能性がある.そこで,TTX投与群と対照群における下垂体ホルモンの遺伝子発現量をRT-PCRで調べて検討する.
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