研究課題/領域番号 |
22K05828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
河邉 真也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (60579415)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | リポキシゲナーゼ / 完全長cDNA / GC/MS / 香気分析 / cDNAクローニング / LOX / 魚臭 / 短鎖オキシリピン |
研究開始時の研究の概要 |
魚臭さは若年層の魚食離れの一因とも言われており、近年では果実等を加えた飼料で養殖して香り付けをした魚も開発されるようになってきた。しかし、鮮魚臭の生合成、即ち不飽和脂肪酸の酸化とそれに続くアルコール類やアルデヒド類(鮮魚の魚臭さを出す)の生合成の詳細は不明であり、魚臭さの根本的な除去は今も困難である。 本研究では、海産魚類において不飽和脂肪酸の酸化還元酵素リポキシゲナーゼの遺伝子クローニングと発現解析をするとともに、酵素の機能解析を実施する。加えて、各種リポキシゲナーゼの発現様式を魚臭生合成の指標として応用することを目指す。
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研究実績の概要 |
完全長cDNA配列を得るために、RACE-PCRに着手した。SMART法により3’-RACEを実施し、ポリA尾部を含むcDNAの3’-側の未知領域の解読を試みた。また、5’-キャップ構造を持つ完全長mRNAのみからRACE-ready cDNAを構築するoligo-capping法により5’-RACEを実施し、転写開始点を含むcDNAの5’-側の未知領域の解読を試みた。5’-および3’-RACEにより、ウマヅラハギ12S-LOXおよびEF-1α、マサバEF-1αのオープンリーディングフレーム(ORF)を同定し、さらに転写開始点を含む5’-非翻訳領域(UTR)とポリA尾部を含む3’-UTRの同定に成功した。マサバ12S-LOXにおいては、3’-RACEにより3’-UTRの同定に成功したが、5’-RACE産物は得られなかった。次に、遺伝子のプロモーター領域を同定するために、転写開始点より上流の未知ゲノムDNA領域の解析に着手した。ウマヅラハギとマサバの普通筋からゲノムDNAを精製し、制限酵素処理に供した後、アダプター配列を付加することでゲノムウォーキングのライブラリーを構築した。遺伝子解析と平行して、魚類組織の香気分析に着手した。マサバの背側と腹側の普通筋、鰓、皮、血合筋の5組織を封入したバイアル内に発生するヘッドスペースガスをSPMEファイバーに吸着・濃縮し、GC/MS分析に供した。また、ヘッドスペースガスをにおい識別センサーシステム(α-FOX)に供し、得られたセンサー応答値を主成分分析することで組織間の香気の識別を試みた。GC/MS分析により、アルコール類とアルデヒド類のピーク面積は鰓が最も大きいことから、鰓のLOX活性が他組織よりも高いことが示唆された。α-FOX分析により、5組織は全て識別が可能であり、血合筋の香気が他組織よりも強いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、RACE-PCRによりマサバおよびウマヅラハギの12S-LOX遺伝子とEF-1α遺伝子の完全長cDNA配列の取得を試みた。マサバの12S-LOXの5’-RACEからは目的のPCR産物は得られなかったが、他のRACE-PCRからは目的の遺伝子が増幅され、計画通りに完全長cDNA配列を取得することができた。これらの3遺伝子は転写開始点とORFが同定できたため、プロモーター領域の解析とタンパク質合成実験を行うための基盤が整ったことになる。平行して、鮮魚の魚臭さを構成するアルコール類やアルデヒド類(短鎖オキシリピン)の組織分布と組織間の香気の特徴を、マサバにおいて明らかにした。これらの知見から、遺伝子発現レベル、酵素活性および短鎖オキシリピン量との関係性を考察することが可能となる。これらの進捗状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質レベルで12S-LOXとEF-1αを検出するために、同定したORFから一次構造を予測し、抗原に適した箇所の合成ペプチドを用いて抗ペプチドポリクローナル抗体を作製する。また、ゲノムウォーキング法により、12S-LOX遺伝子の転写開始点より上流のゲノムDNAを解析し、プロモーター領域の情報を得る。さらに、無細胞系翻訳システムの条件設定に着手する。oligo-capping法とは原理が異なるが、SMART法においても転写開始点までPCRで伸長させることが可能と考えられる。そこで、本年度に情報が得られなかったマサバ12S-LOXの5’-RACEについては、SMART法を検討する。
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