研究課題/領域番号 |
22K05837
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
吉原 静恵 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 助教 (20382236)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | cold shock protein / 褐虫藻 / 転写因子 / 低温ショックドメイン |
研究開始時の研究の概要 |
近年、海水温上昇などによるサンゴ死滅が問題とされており、サンゴの成長を支える共生藻(褐虫藻)の生態を分子レベルで理解することは非常に重要である。 代表者は、工業製品として利用される酸化亜鉛ナノ粒子を褐虫藻に暴露すると、細胞増殖が対照比3.5に増加し、暴露24時間以内に褐虫藻の転写因子候補である低温ショックドメインタンパク質(CSP)の発現が誘導されることを見出した。 本研究は、褐虫藻CSPについて、大腸菌発現タンパク質の核酸結合活性と、生体内における機能を調べることによって、褐虫藻CSPの機能解明に迫る。原核から真核生物まで普遍的に存在するCSPの研究に重要な知見を得ることができる。
|
研究実績の概要 |
研究代表者は、褐虫藻(Breviolum minutum, Bm)の遺伝子発現解析から、転写因子cold shock protein (CSP)が褐虫藻の増殖促進に関わる可能性を示唆する結果を得た。本研究では、2種類のBmCSP(BmCSP1、BmCSP2)による増殖促進の分子機構を明らかにすることを目的とする。 2022年度、以下3つの計画を立て、実施した。①BmCSPタンパク質の大腸菌発現系構築と核酸結合解析の実施、②BmCSPを発現するシロイヌナズナの作出、③BmCSPの核酸結合領域(cold shock domain, CSD)をシロイヌナズナCSP3 (AtCSP3)のCSDと置換したAtCSP3_BmCSD(AtCSP3_BmCSD1)を発現するシロイヌナズナの作出 計画①:BmCSP1タンパク質(282 amino acids)は、タグなしでは大腸菌で発現しなかったが、Glutathione S-transferase (GST, 226 aa)融合タンパク質として発現、精製することができた。2021年度に実施したChIP-seq解析から見出したBmCSP1の結合標的配列(12 baseから成る10種類)の配列を合成し、結合活性を調べた。現在、1種類の1本鎖DNAと結合することを確認した。 計画②:BmCSP1を35Sプロモーターの下で高発現するプラスミドを作成し、アグロバクテリウム方を用いてシロイヌナズナCSP3欠損株(Atcsp3)に導入した。現在、薬剤耐性の獲得を指標として、形質転換体の選抜を行っている。 計画③:BmCSP1のCSDをもつAtCSP3を35Sプロモーターの下で高発現するプラスミドを作成し、アグロバクテリウム方を用いてシロイヌナズナCSP3欠損株(Atcsp3)に導入した。現在、薬剤耐性の獲得を指標として、形質転換体の選抜を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、2種類の褐虫藻CSP(BmCSP1、BmCSP2)による増殖促進の分子機構を明らかにすることを目的としている。2022年度、以下3つの研究計画を実施した。計画①:BmCSPタンパク質の大腸菌発現系構築と核酸結合解析の実施、計画②:BmCSPを発現するシロイヌナズナの作出、計画③:BmCSPの核酸結合領域(cold shock domain, CSD)をシロイヌナズナCSP3 (AtCSP3)のCSDと置換したAtCSP3_BmCSDを発現するシロイヌナズナの作出 BmCSP1について、計画①ではGST融合タンパク質の大腸菌発現系を構築し、純度90%以上のGST-BmCSP1タンパク質を得ることができた。核酸結合解析を行うにあたり、転写因子の核酸結合解析で広く用いられているM13mp18との結合を調べる計画を立てていたが、2021年度に実施したChIP-seq解析からBmCSP1の標的候補配列(12 baseから成る10種類)を得ることができたため、これらの配列を合成して結合活性を調べた。その結果、BmCSP1は少なくとも1種類の1本鎖DNAと結合することを確認できたため、生体内における標的遺伝子を推測するなど、BmCSP1の具体的な機能解析が期待される。計画②BmCSP1を発現するシロイヌナズナの作出と、計画③のAtCSP3_BmCSD1を発現するシロイヌナズナの作出は、現在、形質転換体の選抜を行っており、順調に進んでいる。しかし、BmCSP2を褐虫藻cDNAライブラリーからクローニングすることができていないため、やや遅れていると報告する。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、2種類の褐虫藻CSP(BmCSP1、BmCSP2)による増殖促進の分子機構を明らかにすることを目的としている。2023年度は、以下に示す④、⑤を計画している。計画④:計画②と③では、低温感受性を示すシロイヌナズナAtcsp3株にSmCSP1、またはSmCSP1のCSDをもつAtCSP3(AtCSP3_BmCSD1)を導入した。これらの形質転換体を選抜し、BmCSD1、またはAtCSP3_BmCSD1がAtcsp3株の低温感受性に与える影響を解析し、BmCSP1の機能を評価する。計画⑤:計画④でAtcsp3株の低温感受性を相補した株を用いてmRNA-seq解析を実施し、BmCSD1、またはAtCSP3_BmCSD1の導入によって発現が変動した遺伝子を抽出する。2022年度に実施したChIP-seq解析結果と合わせて、褐虫藻におけるCSP1の機能、既知のCSPの機能との普遍性について考察する。 BmCSP2について、褐虫藻cDNAライブラリーからのクローニングは困難であったため、受託DNA合成を利用してBmCSP2の計画を進めている。BmCSP1と同様に、以下の計画を進める。計画①:BmCSP2タンパク質の大腸菌発現系構築と核酸結合解析の実施、計画②:BmCSP2を発現するシロイヌナズナの作出、計画③:BmCSP2の核酸結合領域(cold shock domain, CSD)をシロイヌナズナCSP3 (AtCSP3)のCSDと置換したAtCSP3_BmCSD(AtCSP3_BmCSD2)を発現するシロイヌナズナの作出
|