研究課題/領域番号 |
22K05842
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
耕野 拓一 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20281876)
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研究分担者 |
桟敷 孝浩 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 主幹研究員 (10453250)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | スリランカ / エビ養殖 / 抗生物質 / 行動経済学 / 薬剤耐性 / BMP / 行動経済 |
研究開始時の研究の概要 |
アジアを中心にエビの生産量が増加している。エビ養殖農家は利益の最大化を求め,高密度での養殖を行い抗菌薬が利用されるが,ヒトや動物に抗生物質が効かなくなる薬剤耐性感染症が,食の安全・安心を揺るがす地球規模の課題となっている。 薬剤耐性の問題は経済学で学ぶ外部性の課題として捉えられる。この研究では,この背景にある人間行動に着目した学際的研究が可能ではないかと着想した。エビ養殖が拡大するスリランカを対象に,行動経済学の知見を応用し,疫学調査から薬剤耐性問題の外部性の影響を解決する方策を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年6月、スリランカ最大のエビ養殖地域であるプッタラム地区で80戸のエビ養殖農家から、ペラデニア大学農学部の協力を得ながらエビのサンプリング(疫学調査)を行った。抗生物質の残留検査はNARA(National Aquatic Resouces Research and Agenct)で行うこととした。分析の対象とするのはChloramphenicol, Ciprofloxcin, Enrofloxcinの3種類である。 聞き取り調査からはスリランカの抗生物質利用について、次の2点が明らかとなった。第1は、スリランカでは法律で3種類の抗生物質の利用が認められており、これは疾病予防目的にのみ限られていることである。養鶏では疾病予防のため抗生物質が使われていることが一般的であった。第2は、スリランカでは3種類の抗生物質の利用が法律で認められているが(疾病予防目的で)、BMP(Metter Management Practice)よ呼ばれる衛生管理手法のもとでは抗生物質の利用は認められていないという点である。法律では認められ3種類の抗生物質が、BMPでは認められていないという点が、エビ養殖農家に十分に理解されたいない可能性があることが示唆された。 エビサンプルの抗生物質残留検査はNARAで行う予定であったが、分析に使うELISAキットの輸入手続きに時間を要し、年度内に分析結果を得ることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NARA研究員のNirukshika氏が帯広畜産大学博士後期課程に入学(2022年10月)したことで、プッタラム地区の疫学調査(エビのサンプリング)をペラデニア大学の協力で終えることができたことが非常に大きい。 抗生物質残留の分析についてもNARAで行うことで目途がついた。分析に利用するELISAキットの輸入手続きについても、Nirukshika氏の調整によりスリランカに輸入され、分析は確実に実行できる状況になっている。 また、ここまでのデータを分析した結果を英文でまとめ、国際誌(IF1.4)に投稿し受理されており、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
抗生物質残留に関わる分析結果が2024年6月末までには得られる予定である。分析結果を考察し、どのような農家で抗生物質を利用しているのか統計的な解析から明らかにする。さらに、当初の研究計画通り、疫学調査を行った調査農家を2グループ(A・B)に区分し、Aグループには「BMPに従いエビの疾病が起きた時に迅速に報告しなければ周囲の農家に迷惑をかける」という「社会規範」の情報、Bグループには「BMPに従いエビの疾病が起きた時に迅速に報告しなければ自分の農場の被害が拡大する」という「損失回避」の情報を与える。2024年8月にスリランカに行く予定であるが、情報提供方法および内容の詳細は現地普及機関との議論から決定する。 これらの情報は行動経済学で応用が進むナッジであるが、異なるナッジを農家に与えることより、エビ養殖農家の行動(抗生物質の利用等)は変化するのか、再度の疫学調査を実施し確認を行う予定である。 疫学調査は同時期に行うことが望ましい。1回目の疫学調査は2023年8月に実施しているので、2回目の疫学調査は2024年8月に実施を予定する。
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