研究実績の概要 |
南相馬市小高区、相馬郡飯舘村など原子力事故被災地の営農再開状況について調査を重ねた。また岐阜県加茂郡白川町、秋田県横手市の農山村振興について比較研究を実施した。以下では、南相馬市小高区での広域的営農組織の営農再開の特徴について記す。 南相馬市小高区では,大震災により地震被害,津波被害に加え,原発事故により大きな被害を受けてきた.2016年7月に避難指示が解除されたが,子育て世代が戻ることは少ない.帰還した高齢農家の多くは,離農を選択した.かつての担い手経営や,集落営農も再開に至らなかったところもある.このようななか新たに少数の担い手が農地を集約してきた.農地復旧事業,圃場整備事業と並行して営農組織の再編・設立が進んだ.使用する農用機械は福島再生復興交付金等を活用して整備しており,最新のスマート農業技術が装備されている.行政主導で新たな組織が育成されている. 1階部分に地権者組織である営農改善組合(農用地利用改善団体)を位置づけた.これにより地区外居住者も含め,担い手の選定,地代などの地権者合意が形成されている.担い手が形成された集落では,2階建て方式で営農組織が運営される.しかも中心的な農業者の周年就業を確保するため,新作物を導入し,複合型の営農類型としている.経営の拡大とともに,地区外通勤者,県外からの移住者を新たに雇用している.広域的営農組織は,構成組織の自立化にともない,3階建て部分の機能は少なくなり,担い手不在集落での営農再開に重点を移行している.
|