研究課題/領域番号 |
22K05876
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41020:農業社会構造関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
鈴村 源太郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (90356311)
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研究分担者 |
中尾 誠二 福知山公立大学, 地域経営学部, 教授 (20625991)
山田 崇裕 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (40625076)
中村 貴子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70305564)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 農的体験活動 / Covid-19禍 / 少人数分宿型教育旅行 / 農村ワーキングホリデー / 農業体験農園 / 援農ボランティア / 農家民宿 / 都市農村交流 / 滞在型市民農園 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題で扱う、少人数分宿型教育旅行などの互酬的農的体験活動は、特に受入農村側と都市住民側の双方に効用をもたらす「互酬性」を特徴とするグリーン・ツーリズムである。2000年代以降盛んになったこれらの活動は、農村地域活性化に大きく貢献してきたが、COVID-19による事業停止により、運営の要である地域コーディネート組織が破綻するなどしたため、事業再構築が喫緊の課題である。しかし、従前からの受入側の高齢化・担い手不足も深刻なことから、既存システムの単なる再生のみでは事業再構築は達成し得ない。本研究課題の目的は、こうした互酬的農体験活動の事業再構築に向けた対応と方向性を解明することにある。
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研究実績の概要 |
COVID-19 禍により、農的体験活動が全国各地で活動休止などに追い込まれたが、2022年度には一部の事業の再開が見られ、本課題の研究成果は、予備的調査が中心となった。科研メンバーの研究会としては、農村地域活性化の実践アドバイザーである長野県飯田市の井上弘司氏を講師とする研究会を実施した。また、2021年度までの前回科研(17K07993)調査で得られた情報整理も併せて行った。 農村ワーキングホリデーについては2022年度中に2回現地調査を実施し、ワーキングホリデーの中止による雇用代替の進展度と受入農家の人件費負担の増加について具体的な分析を行った。 少人数分宿型教育旅行に関しては、少人数分宿型教育旅行の受入組織等(沖縄観光コンベンションビューロー・南城市観光協会・八重瀬町観光物産協会・糸満市観光まちづくり協議会・旧大分県西部地区教育旅行受入協議会・安心院町グリーンツーリズム研究会・国東市観光協会・兵庫県豊岡市いのちの教育推進協議会・姫路市家島諸島都市漁村交流推進協議会・森の京都地域振興社)及び関係する小規模交流型宿泊施設へCOVID-19禍が及ぼした影響について、現地で聞取調査を行った。 農家民宿については、複数の現地調査を行った。滋賀県高島市の農家民宿四季の森および大分県玖珠町のさかもと村、安心院町の中山ミヤ子の農家農泊「舟板 昔ばなしの家」、国東市安岐町農家民宿「まるか三代目」の実態調査、国東市の元職員へのヒアリング調査を行った。 滞在型市民農園については、農林水産省「全国市民農園リスト」に基づき滞在型市民農園の開設組織、運営・管理組織、施設等を整理した。また、関連記事やHP情報等から、①欧州の滞在型市民農園とは形態の異なる取組事例が少数ながら存在すること、②COVID-19禍の滞在型市民農園はワーケーション等の需要拡大に伴い新規利用者が増加したこと、等を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の進捗が概ね順調である理由は以下の通りである。農村ワーキングホリデーについては、予定していた現地調査を2回実施することができ、分析に必要なデータが概ね入手できた。過去5カ年間のワーキングホリデー受入実績と雇用労働力のトレードオフ関係の整理は2023年度以降の課題となるものの、進捗は順調である。 少人数分宿型教育旅行については、受入組織および関係する小規模交流型宿泊施設に対する予備的な現地聞取調査が実施できている。 農家民宿については、既存文献の収集およびHPサーベイ等に基づく全国の農家民宿の情報収集が進んでいるほか、各農家民宿に関する予備的ヒアリング調査結果より、本格的な農家民宿ヒアリング調査ならびにアンケート調査を行う準備が進んでいる。 滞在型市民農園に関しては、国内の開設、運営・管理に関する動向と経営的特徴、COVID-19禍における利用状況と経営対応を網羅的に把握するため、農林水産省が公表する2次情報を用いた分析、関連文献、先行研究のサーベイが進んでいる。これにより、2次情報の補足等を主目的とするプレ調査と、複数の開設主体・管理運営主体別農園を対象とする現地調査にむけた素地が概ね整った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降は、2022年度の予備的研究の実績を踏まえ、COVID-19発生から5類感染症指定に至る社会情勢の変化も考慮しつつ、本格的な現地調査、アンケート調査等、本研究課題の核となる調査分析を適宜進めて行くこととする。 農村ワーキングホリデーについては、現地ヒアリング調査を重ね、COVID-19禍における雇用労働代替の実態と受入農家側のコスト負担増について学会個別報告に向けたデータ分析の精緻化を行う。また、長野県飯田市における学生実習に合わせて、今後の農村ワーキングホリデー事業に関する受入農家の意向の聞き取りを行う予定である。 少人数分宿型教育旅行については、2017年3月に発表した論考、「鈴村源太郎・中尾誠二「農山漁村における少人数分宿型教育旅行受入組織の適正規模に関する考察」『農業経済研究』88(4)、pp426-431」で調査した全国67組織等へCOVID-19後の状況を電話で聞き取り、電子メール利用での簡易アンケート調査を行い、可能な範囲で複数地域への現地調査を予定している。 複数の農家民宿を抱える組織、10か所を対象に2015年に調査を行っているが(「グリーン・ツーリズム農家民宿の開業・運営の手引き」農林水産省農村振興局都市農村交流課、座長中村貴子)、その調査対象先に改めてアンケート調査を予定している。 滞在型市民農園については、第1に、東日本エリアおよび西日本エリアにて、開設年数が最も長い行政主導の農園を対象にプレ調査を行う。ここでは、開設者と指定管理者へのヒアリングを実施し、その結果を文献サーベイの補足と調査票の設計に活用する。第2に、行政主導、民間主導それぞれの滞在型市民農園を対象に現地調査を実施する。この調査より、5類感染症指定に至る社会情勢の変化に起因する農園の利用行動および経営方法の変容、コミュニティの変化の有無と実態を確認する予定である。
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