研究課題/領域番号 |
22K05910
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平井 康丸 九州大学, 農学研究院, 准教授 (10432949)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | コンバイン / 収穫 / 脱穀 / 省エネ / こぎ歯 / 性能 / 設計 |
研究開始時の研究の概要 |
エンジン出力に依存したコンバインの処理能力の改善は、機械収穫によるエネルギ消費の増大を招いており、所要動力の4~5割を占める脱穀部の負荷低減が求められる。しかし、穀粒損失の性能を重視し、実機試験に基づくアプローチが採られる開発現場では、省エネの設計指針は明確でない。そこで本研究では、脱穀性能の予測に基づくこぎ室の省エネ設計理論を追究する。具体的には、こぎ室に搬送される刈稈層の空間分布を再現し、刈稈層へのこぎ歯の通過軌跡を解析する。この通過軌跡により脱穀性能の予測式を作成する。本研究は、試行錯誤的に行われてきたこぎ室設計を理論的に補完し、産業活動の持続的な発展を支える省エネ設計指針を提示する。
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研究実績の概要 |
本研究は我が国の米麦の収穫に用いられる自脱コンバインにおいて,所要動力の4~5割を占める脱穀部の省エネ設計理論を追究するものである。脱穀性能の予測の確立に基づく省エネの設計指針を提示するために,R5年度は「脱穀性能に影響するこぎ歯の機能解明」に取り組んだ。 こぎ室内でこぎ歯の作用を受ける稲の動的挙動を,(1)補強歯のみ,(2)整そ歯+補強歯(通常条件)を作用させた2条件で撮影した。撮影した動画をOpenPIV-Matlabを用いて解析し,輝度相関法により稲の速度ベクトルを求めた。また,整そ歯の脱穀補助作用について調べるために,ハーベスタ(井関農機,HMG83)を用いて脱穀性能試験を行った。整そ歯が稲に与えた運動による脱穀性能の違いを調べるために,1)運動あり:整そ歯と補強歯をどちらも取り付けた状態で1度脱穀,2)運動なし:整そ歯のみ取り付けた状態で1度脱穀する。続いて,整そ歯を取り外し,補強歯のみ取り付けた(整そ歯の作用による稲の運動が無い)状態で再度脱穀の条件で実験を行った。得られた成果は次の通りである。 1) PIV解析から得られた,こぎ歯作用時の稲の速さの平均の最大値と平均値および稲の運動範囲は,補強歯のみより整そ歯+補強歯(通常条件)の方が大きくなった。この結果より,整そ歯の作用後に補強歯が作用することで,稲がより速く,広範囲に運動する事が分かった。 2)整そ歯による稲への脱穀補助作用により,穂と受け網との間に働く摩擦が減るため,単粒率が増加し穂切れ率が減少することが示唆された。また,穂が持ち上げられる事により補強歯との接触回数が増加するため,未脱粒率が減少することが分かった。この結果から,整そ歯は稲に運動を与え,脱穀性能を向上させる機能を有することが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では脱穀性能の予測に基づく脱穀部の省エネの設計指針の提示を目指すものである。脱穀性能の予測には,こぎ室内での刈稈層の搬送姿勢の推定が重要である。このことから,R4年度は,刈稈層の搬送姿勢を,弾性はりのたわみ姿勢解析に用いられる大たわみ式を適用した解析式により推定しようとした。しかし,自動脱穀機を用いた刈稈層の搬送姿勢の撮影実験において,補強歯で脱穀される前に整そ歯で刈稈層の姿勢が乱されることが明らかになった。これを受けて,R5年度はこぎ室内の刈稈層の姿勢変化の特徴をPIV(粒子画像流速測定法)解析を用いて明らかにした。加えて,刈稈層の姿勢(運動)への影響が大きい,整そ歯の機能を解明した。R5年度の成果に基づき,刈稈層の搬送姿勢と脱穀性能の関係の定量化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では脱穀性能の予測に基づく脱穀部の省エネの設計指針の提示を目指すものである。脱穀性能の予測には,こぎ室内での刈稈層の搬送姿勢の推定およびこぎ歯の機能解明が重要である。R5年度にPIV(粒子画像流速測定法)解析によりこぎ室内の刈稈層の姿勢の特徴を明らかにしたことに基づき,刈稈の姿勢と脱穀性能の関係の定量化を進める。さらに,R5年度の成果として整そ歯が刈稈に運動を与え,脱穀を補助する機能を確認した。すなわち,本整そ歯の機能のモデル化と脱粒率との関係性の定式化がR6年度の課題となる。多変量解析や機械学習等の手法の適用も視野に入れながら課題に取り組む。
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