研究課題/領域番号 |
22K05914
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
八田 泰三 崇城大学, 工学部, 教授 (40208533)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | 有機EL / スイゼンジノリ / 人工培養 / 深青色光源 / イミダゾール / ビナフチル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、絶滅危惧種であるスイゼンジノリの完全人工光型屋内人工培養の実現可能性を明らかにするための研究である。そのために、3つの取組み、①白色有機EL照射下で標準的生育環境の検討、②新規深青色発光材料の開発とデバイス化による深青色有機EL光源の作製・評価、③本光源を追加した屋内人工培養評価試験、を行うことによって、有機EL深青色光補完型人工培養の有用性について評価する。 本研究の成果により、スイゼンジノリの効率的で安定的な培養と生産が可能になることが期待される。
|
研究実績の概要 |
本研究を遂行するために、今年度は(1)白色有機EL照射下で標準的生育環境の検討、および(2)新規深青色発光材料の開発を行った。(1)については、小スケールでのスイゼンジノリの増殖評価方法を確立するために、蛍光光度セルを培養容器とする液体培地4 mL中でスイゼンジノリに市販の白色有機EL光源を照射して増殖評価を検討した。培養後、液体培地と共にスイゼンジノリを3000 rpmで1分間のホモジナイザー処理を行い、660 nmの濁度より算出した重量(Wt)と実測による湿重量(Ww)を比較した結果、WtとWwの相関係数がR2≧0.99の良好な比例関係となり、濁度法でスイゼンジノリの増殖評価が可能であることを明らかとした。さらに市販の白色有機EL光源を用い、照射光量と増殖度の関係を評価した結果、光量子束密度で40 μmol/m2・sがスイゼンジノリ培養の標準条件として最適であることを明らかにした。 一方(2)については、先に開発した有機EL深青色発光材料であるテトラアリールイミダゾール(TAI)の合成法を応用して、1,2-ジフェニル置換フェナントロイミダゾール(PI)の6,9-位にビフェニル基またはトリフェニルアミノ基を持つ、新規PI誘導体BD1-1およびBD1-2を合成後、UV・FL、DSC・TG-DTA、CV・DPVの各種測定およびGaussianによるDFT計算を行った。BD1は、いずれもTAIより深青色で強蛍光性かつ熱的安定性に優れ、TAIと同様にバイポーラ性があることも判明した。なおBD1については、今後有機ELデバイス評価を検討する予定である。 また、新規にビナフチル基の6,11-位にビフェニル基を導入した架橋型ビナフチル誘導体(BB1)が、TAIと同様な深青色強蛍光性、高い熱的安定性と電気化学的安定性を示し、BB1も新規候補材料となることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規作製予定の深青色有機EL光源に合わせた小スケールでの培養では、スイゼンジノリの湿重量による増殖評価が困難、さらに寒天質コロニーの形成程度による受光性の差異が問題になると予想されたが、ホモジナイザー処理でスイゼンジノリが液体培地中に高度に分散した状態から人工培養を行うことで小スケールでの培養評価を可能とし、白色有機EL光源照射下でスイゼンジノリの標準的生育環境を明らかにした。従って、今年度の実施計画の「(1)白色有機EL照射下で標準的生育環境の検討」については、計画通りの進展が得られたといえる。 一方、「(2)新規深青色発光材料の開発」については、先に開発した有機EL深青色発光材料のテトラアリールイミダゾール(TAI)に比べて、熱的および電気化学的に優れた特性を持ち、より深青色で強蛍光性のバイポーラフェナントロイミダゾール体BD1を計画通り2種類開発した。さらに、TAIと同様な深青色強蛍光性、高い熱的安定性と電気化学的安定性を持つ6,11-ジビフェニル置換架橋型ビナフチル誘導体BB1を見出したことは、新規候補材料の開発において新展開をもたらすものであり、その意義は大きい。 なお、デバイス評価を行う際、発光材料の高純度化のための昇華精製は必要不可欠であるため、研究室所有の故障中の昇華精製装置を修理する予定であったが、国内外の物流停滞の影響を受けて 代替品や部材が入手できず修理できなかったため、BD1の有機ELデバイス試作・評価の実施には至らなかった。これが当初の計画の中で、唯一実施できなかった点である。 以上のように、一部計画通りに進んでいない点もあるが、新規材料の開発においては計画以上の成果も得られていることから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究を遂行するための実施計画の中で、「(1)白色有機EL照射下で標準的生育環境の検討」については、令和4年度に白色有機EL光源でのスイゼンジノリの標準的生育環境と増殖評価方法を明らかにしたので、令和5年度は新規作製予定の深青色有機EL光源の使用に先立ち、昼光色および紫色などの複数色の市販有機EL光源を組み合わせた多色光照射下でのスイゼンジノリの増殖評価を行う。複数の有機EL光源の組み合わせで得られる照射スペクトルとスイゼンジノリの増殖度の関係から、スイゼンジノリの増殖に寄与する波長域に関する知見の獲得を目指す。 一方「(2)新規深青色発光材料の開発」については、スイゼンジノリの成長促進に有効な430~440 nmに発光極大を持つように、令和4年度に開発したフェナントロイミダゾール誘導体BD1の2-位のフェニル基へ電子求引性基やアリール基を導入したBD2を開発して、発光色の最適化と発光強度の増大を目指す。さらに、新たに見出した6,11-ジビフェニル置換架橋型ビナフチル誘導体BB1については、6,11-位のジビフェニル基への置換基導入効果と架橋部の構造改変により光学的特性の向上を目指す。 また、上記の研究に並行して昇華精製装置の修理を行うと共に、BD1およびBD2の有機ELデバイス評価を行い深青色有機EL光源の発光材料としての可能性についても検討する。
|