研究課題/領域番号 |
22K05930
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
南雲 俊之 静岡大学, 農学部, 准教授 (70362184)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 茶園土壌 / 土壌有機物 / 炭素貯留 / 重液分離 / 選択溶解法 / 土壌動物 / 軽比重画分 |
研究開始時の研究の概要 |
茶園は森林に匹敵するCO2吸収源である。茶園土壌には整枝・せん枝残渣や敷き藁など多量の有機物が投入され,安定な腐植物質とともに,分解途上の微細有機物片として多量の土壌有機物が貯留されている。しかし,茶園土壌の有機物・炭素動態は未解明のままである。土壌有機物の存在状態と分解抵抗性を解明し,微細有機物片からなる軽比重画分の土壌有機物全体に占める割合の大きさを検証するとともに,この軽比重画分を生み出す担い手として土壌動物に注目し,その現存量とともに残渣分解における役割を解明する。これらの成果をもとに未解明の茶園土壌炭素動態の全貌解明に資するとともに,茶園土壌の炭素貯留機能の強化につながる知見を得る。
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研究実績の概要 |
本研究は,茶園土壌で多量の炭素貯留をもたらす要因は何か,その貯留された炭素は持続的に維持されるものかである。本年度は,①茶園土壌にみられる多量の微細有機物片の生産に対する土壌動物の関与を調べ,②土壌中に集積する微細有機物片の定量化を試みた。また,③土壌有機物蓄積に対する非晶質鉱物成分の寄与に茶園とほかの地目で違いがあるか検討した。 ①土壌動物は,落葉食者のダンゴムシをおもな対象にした。ダンゴムシは落葉樹リターを好むと言われていたが(渡辺1978),常緑樹の茶葉リター,とくに若い葉をよく摂食した。このダンゴムシの摂食行動が冬季に停止するが,冬季でも室内で保温すると再開した。 ②土壌の微細有機物片の定量は,重液分離(ρ1.6)で行った。茶園の表層土壌2gを供して1.83gの重画分HFと0.076gの軽画分LFが得られ,回収率は95%であった。この結果から,茶園表層ではLFが土壌炭素の少なくとも15%を占めると推察され,ほかの事例と比べても多いことが裏付けられた。 ③非晶質鉱物成分は選択溶解法により定量した。母岩が同じで管理条件の違う隣接した圃場群で茶園か否かによらず,土壌有機炭素含有率はシュウ酸可溶Alo,Feoと有意な相関,ピロリン酸可溶Alp、Fep含有率と強く有意な相関があり,土壌有機炭素の大部分が土壌の非晶質Al,Fe成分と結合したAl・Fe複合体として存在すると示唆した。とくに茶園土壌ではpHが低いためAloが多く,より多くの腐植-Al複合体が形成されやすいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この研究では,例えば,土壌炭素分野では,茶園を含む,母岩が同じで管理条件の違う隣接した圃場群での比較により,茶園土壌の特徴づけを行う計画であった。土壌有機炭素集積に対する選択溶解法による非晶質鉱物成分の関与を明らかにできた。しかし,重液分離によるLFの定量は茶園土壌が先行して,一方茶園以外の土壌試料の分析ができていない。そのためデータセットが完成しきれていない。 土壌動物の摂食実験でも,ダンゴムシの茶葉食性は調べたが,同じ茶園にはヤスデやワラジムシなど他の落葉食者もいるものの,その茶葉食性を調べ切れていない。また,リターバッグ法も併用する予定であったが,バッグの準備が間に合わず時機を逃してしまった(R6年度に実施する)。 よって,「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
Al-腐植複合体形成による有機物集積メカニズムは,隣接する圃場間で茶園と茶園以外の違いがなく,より酸性で,整せん枝残渣や敷き藁で有機物供給が多いことが茶園の炭素集積に有利に働く実態が明らかになってきた。実験条件(材料と方法)として土壌の一般分析を進め,論文を目指す。 一方,遅れている,土壌中に集積する微細有機物片の生産と土壌への集積の実態解明,その分解抵抗性の解明を進めていく。実験を補助する学生の協力を得て,R5年度に進めてきた実験を継続して推進する。データセットを早期に完成させて論文発表につなげる。
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