• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

父親の加齢リスクは胚のミトコンドリアに現われる

研究課題

研究課題/領域番号 22K05959
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分42010:動物生産科学関連
研究機関東京農業大学

研究代表者

岩田 尚孝  東京農業大学, 農学部, 教授 (50385499)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード加齢 / 父親 / 胚 / ミトコンドリア / テロメア長
研究開始時の研究の概要

本研究では、ウシとマウスを用いてこれまで明らかにされていない点、オスの加齢が精子のテロメア長、受精後の胚のMtの数や機能、テロメア長と両者の関係を調べる。また、そのMt変化の分子背景を明らかにする。父親の加齢が産子のテロメア長、Mtの数や機能、遺伝子発現や成長に及ぼす影響を検討する。そして、Mtの変化を指標に父親の飼養環境を評価する。

研究実績の概要

本年度は、オスの加齢による胚のテロメア長や(TL)ミトコンドリアDNAコピー数(Mt-cn)の減少の背景を検討した。加齢オスC57BL6(50週令以上)と若齢のメスマウス(8-10週令)との間に作成した胚と、同オスが若齢時(13-23週令)に作成した胚を用いてRT-qPCRを行った。父親の加齢により胚のTLやMt-cnは減少を惹起することを確認した。また、RNAseqを用いて父親が若齢時と加齢時の胚の網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、加齢による発現変動遺伝子は、有意に代謝や酸化的リン酸化反応経路や電子伝達系とミトコンドリアに関連付けられたためオスの加齢は胚のミトコンドリアに影響することが明らかになった。また若齢と加齢オスの間で精子のTLを比較すると、加齢で短縮する傾向が認められた(P = 0.07)。一方で、胚のガラス化保存などの物理的処理は、TLやMt-cnに影響しなかった。6頭のウシの精子を使い体外受精によって胚を作成しTLとMt-cnの関係を検討したところ、全ての個体で両者に正の相関が認められ、マウスの結果に加えて、Mt-cnとTLの間の相関は多くの動物種においても保存されていると考えられた。また体外受精胚を用いてTLをテロメアーゼの阻害剤(TMPyP)やsiRNAで短縮させるとテロメアの短縮と胚中のMt-cnの減少が認められた。この結果から,TLはMt-cnを制御している因子であると考えられた。TLの長い胚と短い胚を阻害剤で作成しRNAseqを行うとPGC1αがTLの短縮で有意に低下した。またTGFB-1などのシグナルに変動遺伝子が濃縮されたためこれらの知見は今後TLを伸長させるのに有効と考えられる。TLの長さが異なるウシの精液を用いて体外受精処理後の胚の発生率を検討するとTLが短い精子の受精率や発生率が低いことが分かり、TLは胚の発育能力にも影響する可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ミトコンドリアDNAコピー数とテロメア長の間に明確な関係性があることやテロメア長がミトコンドリアDNAコピー数や胚の発生能力に影響することが明らかになった。テロメア長の長短の胚からTLとミトコンドリアDNAコピー数を仲介する因子の探索ができている。またオスの加齢による精子の能力低下を、様々な動物種で示すことができ、マウスでは加齢オスへの特定の薬剤処理や生理的刺激が精子だけでなく胚のテロメア長や産子のミトコンドリア数に影響する予備知見も得ることができた。このことから加齢によっておこる変化だけでなくその対処方法の開発にもつながる知見が得られると期待している。

今後の研究の推進方策

胚のテロメア長が伸長する背景を解明する必要がある。またテロメアがミトコンドリア数を制御する候補因子の検証と分子背景を解明する必要がある。またオスの加齢が精子の何に影響しこれが胚の発育や産子のテロメア長に影響するのかを、さらに明確に示す必要がある。オスの生理状態と胚のテロメアやミトコンドリア数の変化の関係性について様々な要因について検討する必要がある。テロメアの伸長が起きる時期やそれを支える分子背景についても検討が必要である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Effect of paternal aging and vitrification on mitochondrial DNA copy number and telomere length of mouse blastocysts2024

    • 著者名/発表者名
      Aburada N, Ito J, Inoue Y, Yamamoto T, Hayashi M, Teramoto N, Okada Y, Koshiishi Y, Shirasuna K, Iwata H.
    • 雑誌名

      Journal of Reproduction and Development

      巻: 70 号: 2 ページ: 65-71

    • DOI

      10.1262/jrd.2023-079

    • ISSN
      0916-8818, 1348-4400
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Paternal aging impacts mitochondrial DNA content and telomere length in mouse embryos2023

    • 著者名/発表者名
      Ito J, Kageyama M, Hara S, Sato T, Shirasuna K, Iwata H.
    • 雑誌名

      Mitochondrion

      巻: 68 ページ: 105-113

    • DOI

      10.1016/j.mito.2022.12.002

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] レスベラトロールの飲水投与は父親の加齢に起因する胚中テロメア長の短縮を抑制する2023

    • 著者名/発表者名
      寺元 能子, 岡田 悠里, 伊藤 洵, 油田 奈緒, 林 正宗, 岩田 尚孝
    • 学会等名
      第68回日本生殖医学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 異なる時期に採取したウシ精液に由来する胚のミトコンドリア数とテロメア長の関係性2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤 洵, 沖村 匡史, 岩田 尚孝
    • 学会等名
      第68回日本生殖医学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ウシ精子のテロメア長が胚のテロメア長とミトコンドリア数に及ぼす影響2023

    • 著者名/発表者名
      髙橋司宰 青木漱吾 岩田尚孝
    • 学会等名
      第 7 回日本胚移植技術研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi