研究課題/領域番号 |
22K05960
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
野村 こう 東京農業大学, 農学部, 教授 (60277241)
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研究分担者 |
高橋 幸水 東京農業大学, 農学部, 准教授 (50408663)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ヤギ / リソースファミリー / 季節繁殖 / 周年繁殖 / 連鎖解析 |
研究開始時の研究の概要 |
世界的に飼養されている乳用ヤギザーネン種は高泌乳量を誇るが、春季に集中して出産(季節繁殖)し、冬季に乳生産が途絶える。そこで年間を通じて出産(周年繁殖)する日本在来種シバヤギの形質を高泌乳ヤギに導入するために両者の実験家系を作成し、家系解析によりヤギの周年・季節繁殖性に関連する遺伝子の同定を試みる。本研究により得られるヤギ個体は年間を通しての持続的ヤギ乳生産を可能にし、季節・周年繁殖関連遺伝子の同定はヤギのみならず動物の繁殖コントロールへの応用に発展する可能性がある。
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研究実績の概要 |
ヤギは牛に比較し小型で扱いやすく、今後は女性や高齢者による管理が容易な家畜として特に山間部農村の地域おこしやSDGs達成のための家畜として有力であると期待される。日本におけるヤギ乳普及の第一のネックは、年間を通じた生産ができないという欠点である。すなわち乳用ヤギザーネン種は春季にしか仔を生まず(季節繁殖性)、泌乳期間は出産後10ヶ月であるので、冬季には乳の生産が無い。 乳用ヤギに一年を通じて出産する形質(周年繁殖性)を付与するために、周年繁殖性を示す日本の在来種シバヤギと季節繁殖性のザーネン種を交配する実験家系を作出した。雄シバヤギ1頭、雌ザーネン6頭を用いてF1世代の雌14頭を作出したところ、未同定の2頭を除いて全ての雌個体が周年繁殖性を示し、この形質の乳用種への導入に成功した。繁殖性が明らかになったF1の雌と、ザーネンへの戻し交配を行い得たN2世代の雌36頭のうち、19頭(53%)が周年繁殖、17頭が季節繁殖性を示した。このN2世代雌にさらにザーネン雄を戻し交配して得られたN3世代の雌28頭のうち、周年繁殖性を示した雌は1頭(3.6%)のみであった。以上のことからシバヤギの持つ周年繁殖性はザーネン種に対して優性であり、その発現には同義遺伝子として働く複数の遺伝子が関与している可能性が示された。 上記個体を含む実験家系ヤギ178個体につき、167種のマイクロサテライトマーカーを用いて解析し、連鎖地図を作製したところ、地図の全長は3565.2cM、平均マーカー間距離は23.6cMとなったが、マーカー間が100cMを超えた位置も観られた。QTL解析では染色体ワイズで10番、17番、29番染色体が5%の水準、14番および26番染色体が1%水準で有意であった。これらのLOD値は1.74(29番)~2.97(26番)となり、有意とされる3を超えるものはなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N3までのリソースファミリー178個体の作成、周年および季節繁殖形質の記録と整理、家系整理を行い、遺伝様式を把握した。これらに対し、167種のマイクロサテライトマーカーを用いて連鎖地図の作成ならびにQTL解析を行ったところ10、14、17、26、29番染色体が周年・季節繁殖性に関連している可能性が示された。しかしこれら領域のLOD値は1.74~2.97であり、有意とされる3に及ばなかった。 N3までのリソースファミリー各個体の周年・季節繁殖性が判明し、DNAサンプルの調整が整ったため、N2世代の周年繁殖性を示した19個体、および季節繁殖性を示した17個体のDNAをそれぞれプールしてバルクとし、次世代シーケンサーによる全ゲノムリシーケンスを行った。また同じ個体につきSNPチップによる検査も行った。次年度はこれらデータの解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
周年繁殖性・季節繁殖性に関連する遺伝子領域を明らかにする。 周年繁殖性を示すシバヤギと季節繁殖性を示すザーネンを交配したリソースファミリー178頭のマイクロサテライトマーカーを用いたQTL解析の結果、10、14、17、26、29番染色体が候補領域として挙がったが、これらのLOD値はファミリーの頭数やマーカーの配置の不均一さから有意ではなかった。 このためリソースファミリーの戻し交配第1世代の周年繁殖個体19頭および季節繁殖個体17頭をそれぞれバルク化し、全ゲノム解析を行った。合わせて同じ個体について個体ごとにヤギSNPチップによる解析も行った。今後は両バルクのプロットパターンの比較ならびに個体ごとのSNP解析により繁殖性関連遺伝子の候補領域を推定する。 また文献上ヤギの周年・季節繁殖性に関連すると考えられるプロラクチン、黄体形成ホルモン(LH)、メラトニン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、2型脱ヨウ素酵素 (DIO2)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)などの遺伝子について、ザーネン種およびシバヤギそれぞれ25頭を用いた多型解析を実施する。
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