研究課題/領域番号 |
22K05969
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
笹崎 晋史 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50457115)
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研究分担者 |
川口 芙岐 神戸大学, 農学研究科, 助教 (00879968)
万年 英之 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20263395)
大山 憲二 神戸大学, 農学研究科, 教授 (70322203)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 脂肪交雑 / 和牛 / 黒毛和種 / 遺伝子 / ウシ |
研究開始時の研究の概要 |
これまでに牛肉の脂肪交雑を支配するゲノム候補領域については多くの報告がなされているものの、主要な責任遺伝子変異は未だ解明されていない。申請者らは先行研究においてゲノムワイド関連解析を行い、責任変異の位置する有力な候補領域を同定した。さらに、全ゲノムリシーケンスを行い、候補領域内に存在する全てのDNA変異を網羅的に検出した。本研究では、一度に多くの遺伝子座を判定可能である集積流体回路を活用し、上記で検出した候補多型を検証することにより、脂肪交雑に関わる遺伝子と責任変異の同定を試み、脂肪交雑形成機構の解明に向けて新たな知見を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
脂肪交雑QTL候補領域(7番染色体10-30Mbp)について、前年度に領域内の96SNPについて関連解析を行うことにより、宮崎県集団において候補領域は0.3Mbp(15.8-16.1Mbp)にまで大幅に絞られた。今年度はあらためて宮崎県集団でゲノムリシーケンスを行うことにより本領域の候補多型を網羅的に検出し、それらから有力な候補SNPに対し、改めて効果の検証を行い、原因多型および原因遺伝子の同定を試みた。 宮崎県黒毛和種個体8頭を用いてゲノムリシーケンス解析を行い、候補領域内の全多型1846SNPを検出した。そのうちannotation-impactがmoderate以上である13SNPを候補多型として選出した。それらに対して宮崎県集団529頭を対象に、KASPあるいはPCR-RFLP法による遺伝子型判定を行った。BMSとの関連を分散分析によって算出したところ、BMSに対する有意な効果(p<0.05)を示した多型は8SNPであった。その中でも特にp値の低かった多型(p<0.001)は5SNPあり、いずれもICAMファミリー遺伝子(ICAM1, ICAM3, ICAM5)に存在する多型であった。ICAM(Intercellular Adhesion Molecule)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、ICAM1からICAM5の5つで構成されている。これらは、細胞同士あるいは細胞と細胞外マトリックスの接着因子として知られている。近年の研究において、ICAMが脂肪細胞への分化過程で特徴的な発現が見られることや、脂肪細胞分化を促進させるMAPK経路を活性化させることが報告されている。以上のことから、ICAMが脂肪交雑の原因遺伝子である可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、宮崎県個体でゲノムリシーケンスを行い、あらためて候補多型の検出を行うことになったが、前年度の解析により候補領域は20Mb(7番染色体10-30Mbp)から0.3Mbp(15.8-16.1Mbp)大幅に縮小されており、検出された全多型の時点で1846SNPまでに絞られていた。さらにこれら多型をannotation-impact(各多型のアノテーションを、タンパク質の機能や構造に与える影響が大きい順にHIGH、MODERATE、LOW、MODIFIERの4段階に分類したもの)により分類すると、ほとんどが遺伝子の機能に影響する可能性が低いLOWおよびMODIFIERであり、MODERATE以上の多型は13SNPのみであった。事前の計画より大幅に候補多型が絞られたため、これらの全ての多型について集団解析を行い、脂肪交雑への効果を算出したところ、ICAMファミリー遺伝子(ICAM1, ICAM3, ICAM5)に存在する5多型にのみが非常に高い有意性を示した(p<0.001)。以上により、本年度の解析により、責任多型はこれら5多型までに絞られたと考えており、進捗は順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析により、脂肪交雑の責任多型はICAMファミリー遺伝子(ICAM1, ICAM3, ICAM5)に存在する5多型にまで絞られた。これらは機能的に同様の働きをもつと考えられるため、原因多型はこれらのうちの単一ではなく複数の可能性も考えられる。これらの検証を行うに際し、今年度用いた宮崎県集団においては5SNP間の連鎖不平衡が非常に高いことが明らかとなったため、個々のSNPの効果の検証を行うには別集団による解析が必要であると考えられる。そこで今後は、他県集団として岐阜県集団415頭、および全国の都道府県から収集された現場後代検定牛集団449頭の2集団を用いて同様にこれら5SNPの効果を検定する。 また、これら3遺伝子(ICAM1, ICAM3, ICAM5)について、遺伝子データベース(Genbank、Genecards、KEGGデータベースなど)を参照し、それぞれのオーソロガス遺伝子について遺伝子の機能、パスウェイ、発現様式(発現量)などの情報を収集し、比較検討を行い、脂肪交雑形成機構への影響を推察する。
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