研究課題/領域番号 |
22K05970
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山内 伸彦 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00363325)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | miRNA / 子宮内膜 / ウシ / 胚伸長 / 培養細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
ウシの妊娠過程における胚の消失のほとんどは、胚伸長期に起こることが報告されている。本研究はウシの受胎率向上を最終目標とし、近年注目されているmiRNAに着目し、そのウシ胚の伸長に対する機能的役割を明らかにする。三次元培養系で産生されたウシ子宮内膜エクソソームを回収し、そのmiRNAについて子宮灌流液と比較検討する。また、ウシ胚盤胞期胚由来の栄養膜細胞に対する影響を解析することで、胚伸長に対する影響を明らかにする。本申請研究によって、ウシ胚の伸長を制御して促進させる子宮内膜miRNAが明らかとなる。さらに、生体外で目的とするエクソソームを産生するための基礎技術を提供する。
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研究実績の概要 |
本研究では、近年細胞間の情報伝達において重要性が指摘されているmiRNAに着目し、子宮内miRNAのウシ胚伸長に対する機能的役割を明らかにすることを目標とする。 令和5年度は、培養ウシ子宮内膜細胞を用いてmiRNAの発現を解析し、性周期および着床期において主要な制御因子の影響について解析した。さらに、BT細胞を用いて子宮の細胞外小胞(EV)の機能と内包されるmiRNAについて解析した。その結果、本研究で解析した7個のDEmiRNAsはBEEとBESの両細胞で全て発現していた。さらに、それぞれの細胞のmiR-376c発現に対す制御因子(E2、P4およびIFNt)の影響をRT-PCRおよびqPCRで解析した結果、両細胞の全ての処理区でバンドが検出され、有意な差は認められなかった。解析するmiRNA数の増加や制御因子の濃度などの詳細な解析が必要と考えられる。 BT細胞をEVで24時間処理し、細胞増殖関連遺伝子の発現をqPCRで解析した。その結果、妊娠期EV群におけるPCNAの発現は血清処理群と同程度であり、コントロール群、卵胞期EV群、黄体期EV群よりも有意に高かった(P<0.05)。一方、CCND1(B)、cMYC(C)およびHMGA1(D)の発現は、いずれの群にも差は認められなかった。ついで、各時期のEV中のmiRNA量をqPCRで解析した結果、黄体期EV中のmiR-24-3pの量は、他の時期に比べて有意に高かった(P<0.05)。miR-375およびmiR-382のEV中の量は、妊娠期EVで有意に少なかった(P<0.05)。これらの結果は、妊娠期EV中のPCNA標的miRNAの発現が低下することにより、BT細胞のPCNA発現が増加し、胚伸長を促進する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、子宮内膜組織から全RNAを回収してmiRNAのシークエンス解析を行った。その結果、各時期に特異的に発現するmiRNAを同定することができ、リアルタイムqPCR解析によってその発現動体を確認している。今年度は各時期に特異的なmiRNAの詳細な解析(TPM変換、GO解析)を行い、差異miRNAをリスト化した。その結果、計43個の時期特異的な差異miRNAを特定し、TPM値の高いものからそのうちの7個のmiRNA(miR-34a, miR-125b, miR-204, miR-376c, miR-449a, miR-450b, miR2411-3p)について解析した。今後は残りの差異miRNAについても解析を行う予定である。 一方、細胞外小胞中(EV)のmiRNAに関して差異miRNAのリアルタイムqPCR解析を行ったが、明確な差は認められず再検討する必要があることが示唆された。その理由として、内因性コントロールとして用いたU6の発現が、子宮内膜組織と異なり、EV中では安定しないことが挙げられる。また、miRNAの発現が子宮内膜組織とEV中で異なっている可能性も考えられるが、これにはどの時期でも安定してEV中に発現しているmiRNAを同定する必要がある。 さらに、マトリゲル内培養による腺上皮細胞モデルを用いてmiRNAの発現制御機構を明らかにする計画である。腺上皮細胞モデルの作製方法はすでに確立しているが、ウシ胎仔血清(FBS)中に含まれるExoが障害となる可能性が示唆される。この対策としてExoフリーのFBSを用いる予定であるが、BSAの利用や無血清培養などより簡便な方法についても検討する。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に行なった研究により、研究計画書で項目1として示したウシ子宮内膜miRNAの網羅的解析はほぼ終了し、各時期に特異的に発現するmiRNAがリスト化できた。令和5年度は培養ウシ子宮内膜を用いてmiRNA発現制御機構の解析(項目2)を中心に研究を進めたが、培養細胞では大きな差は認められず、さらに子宮内膜組織とEVにおける発現差が示唆された。本研究では胚伸長を制御するmiRNAの特定を目的とするため、今年度はEVにおける発現解析および栄養膜細胞(BT細胞)スフェロイドを用いた機能解析(項目3)を行う。 EV中のmiRNAの発現解析における問題は、内因性コントロールとしてU6が使えない可能性があることである。現在Normfinder解析を行なっており、U6のstabilityがEVでは1.644と高い値を示しており(高いほど安定性が無い)、よりstabilityが低い安定性のある内因性コントロールが必要となる。これまでの結果ではmiR-26aのstabilityが0.612と安定している結果が得られているが、通常はstabilityが0.5以下となることが望ましいため現在他のmiRNAについても解析中である。この結果をもとに、子宮内EVにおける内因性コントロールを決定し、EV中のmiRNA発現解析を行う予定である。 さらに、栄養膜細胞(BT細胞)スフェロイドを用いた機能解析(項目3)については、細胞を三次元化しているため遺伝子導入が難しく、条件検討をおこなっている段階である。一方で、通常のBT細胞において子宮内EVの効果が認められたため、候補miRNAを同定すると共にmiRNA mimicを作製し、この系を用いてLipofectamine(Invitrogen)によって遺伝子導入を行う予定である。
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