研究課題/領域番号 |
22K05972
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42010:動物生産科学関連
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
増田 豊 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (80514728)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | ゲノミック選抜 / 遺伝子型と環境の相互作用 / 遺伝的パラメータ / 乳用牛の健康 / 量的遺伝学 / 乳用牛 / 脂肪酸 / 飼養効率 / ゲノム育種 |
研究開始時の研究の概要 |
乳中の脂肪酸組成は、搾乳牛の飼料摂取と健康を反映する。特に乳中de novo脂肪酸割合が多いとき、粗飼料の利用性が高く、栄養状態が良好であるとされる。脂肪酸組成には、飼養形態の影響があり、遺伝要因も関与するとされる。本研究は、日本の乳牛集団から収集した、乳中脂肪酸組成の大規模フィールドデータを用いて、遺伝要因の関与がどの程度あるかを調査し、遺伝型(ゲノム)と飼養形態との相互作用の存在について解明する。遺伝と環境の相互作用を想定してゲノミック選抜を応用し、選抜の正確度を検証する。本研究は、乳用牛の飼料効率改善に向けた育種選抜の実現と、持続可能な酪農業の発展に寄与すると期待できる。
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研究実績の概要 |
乳中の脂肪酸組成は、搾乳牛の飼料摂取と健康を反映する。特に乳腺上皮細胞で生合成されるde novo脂肪酸は粗飼料の利用性が高い場合に、飼料や体細胞から移行するpreformed脂肪酸は、泌乳によるエネルギー不足の際に、それぞれ乳に多く分泌される。脂肪酸組成には、飼養形態(つなぎ、フリーストール、放牧など)の影響があり、遺伝要因も関与するとされる。本研究は、乳中脂肪酸組成に遺伝要因の関与がどの程度あるかを調査し、遺伝と飼養形態との相互作用の存在について解明する。日本のホルスタインから収集した、乳中の脂肪酸組成のフィールドデータを用いる。 2023年度において、乳量比de novo脂肪酸割合(DnM)、乳脂肪量比de novo脂肪酸割合(DnF)、乳脂肪量比preformed脂肪酸割合(PrF)のそれぞれについて、産乳および乳房の健康(体細胞スコア)に関する形質との遺伝相関を推定した。各形質との遺伝相関は、泌乳開始初期において中程度であり、泌乳期間の進行とともにゼロに近づいた。また、各脂肪酸組成に関して、泌乳期全体にわたる変動を説明する統計モデル(変量回帰モデル)を開発した。さらに、遺伝と飼養環境の相互作用の解明、ならびにゲノムワイド関連解析のための予備的な分析を実施した。各飼養形態において測定された乳中脂肪酸組成を、それぞれ異なる形質とみなして遺伝相関を予備的に推定した。推定された遺伝相関は1に近く、遺伝と環境の相互作用が小さいことが示唆された。続けて、各脂肪酸組成についてゲノムワイド関連解析を行った。期待通り、脂肪酸産生に関する遺伝子領域が検出されたが、特に泌乳最初期においてのみ、健康および長命性に関連する領域との関係が見いだされた。以上の結果は、泌乳最初期の乳中脂肪酸組成がエネルギーバランスを反映し、乳用牛の健康をあらわす指示形質になり得ることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定では、2023年度には、以下の3つの課題を遂行する予定であった。すなわち、1)乳中脂肪酸組成と産乳・健康・繁殖に関する形質との遺伝相関の推定、2)各乳中脂肪酸組成の飼養形態間の遺伝相関の推定および種雄牛育種価間の相関の検証、3)乳中脂肪酸組成のゲノミック育種価の推定であった。 1)について、繁殖を除く形質について遺伝相関が推定した。繁殖形質については、2024年度に調査を行う予定である。 2)について、飼養形態間の遺伝相関を推定したところ、遺伝子型と飼養形態間の相互作用は非常に小さいと判定された。そのため、種雄牛の育種価推定を行うまでもないと判断した。 3)について、ゲノミック育種価を推定する統計モデルを提案し、予備的なゲノムワイド関連解析を行うことができた。ゲノミック育種価の検討は次年度の課題である。 以上に加え、本年度では、各乳中脂肪酸の経時測定モデル(変量回帰モデル)の検討を行った。これは、泌乳期内の遺伝分散および遺伝共分散の構造が独特である一方、そのモデル化に関する研究がほとんど無く、その特定が高い新規性をもつと判断したためである。また、そのモデルは、今後の遺伝評価の実用化において重要な示唆を与えるものであった。 以上、当初の想定および追加的課題の研究成果から総合的に判断すると、本課題の進捗状況が概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
以下の手順で分析を行う方針である。まず、乳牛の乳中成分、繁殖性、血縁情報、ゲノム情報のデータを保持する諸団体に対して、直近のデータの提供を依頼し、より多くの情報に基づく解析が可能な体制を整える。続けて、より多くのデータに基づき、昨年度では予備的解析に留まった解析を遂行する。すなわち、各飼養形態において測定された乳中脂肪酸組成を、それぞれ異なる形質とみなし、血縁関係に基づいて遺伝相関を推定する。続けて、相互作用がないと仮定したモデルから種雄牛の育種価を推定し、これが、どの飼養形態でも同一の能力値として発現するかを、統計モデルによって調査する。さらに、ゲノミック育種価推定の一手法であるシングル・ステップ法を用いて、乳中脂肪酸組成のゲノミック育種価を推定する。推定育種価の正確度は、交差検証によって算出する。また、ゲノムワイド関連解析により、ゲノム遺伝子型と飼養環境間の相互作用を示す領域を探索する。
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