研究課題/領域番号 |
22K05986
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松尾 栄子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40620878)
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研究分担者 |
松野 啓太 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (40753306)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 二本鎖RNAウイルス / 複製機構 / 変異 / 相補現象 / イバラキウイルス / フリーライダー / 変異株 |
研究開始時の研究の概要 |
ウイルスは宿主の機能だけでなく、時には同種・他種のウイルスの機能を拝借して生き延びる。ウイルス複製時に生じた膨大な変異ウイルス株には「淘汰されるべき不全なウイルス株」が含まれるが、これらも相補と呼ばれる「正常なウイルス機能の無断拝借」によって生き延びる場合がある。このような不全なウイルスは、ウイルス集団中でうまく制御されているはずだが、その分子機構は不明である。そこで本研究では、分節型二本鎖RNAウイルスを用いてウイルス複製中に作出される変異子孫ウイルス集団から「どのように生存戦略的に有効なウイルス株が選択されるか」を経時的に可視化し、各ウイルス株の「淘汰」と「生存」の分岐点を明らかにする。
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研究実績の概要 |
今年度は、まず、昨年度に引き続き、先行研究で観察された赤色蛍光タンパク質mCherry遺伝子を挿入したイバラキウイルス(IBAV)をハムスター腎臓由来細胞(BSR細胞、BHK-21細胞)で継代した時に生じる欠失パターンについて解析を進めた。まず、MiSeqでの解析を困難にしている細胞由来のRNAの混入を最小限にするためRNA抽出方法の見直しをするとともに、継代実験を一部やり直した。また、mCherry遺伝子の欠失が起こる機序を解明するため、先行研究で得られた欠失パターンをもとに、RNA二次構造を解析したところ、IBAV RdRpが読み飛ばしてしまう異常な対合候補をいくつか発見した。現在、これらの異常対合が起こりにくくなるように改変したmCherry遺伝子を挿入したIBAVをリバースジェネティクス(RG)法で作出し、欠失パターンの解析を進めている。さらに、先行研究で見つかったフリーライダー化しそうな変異株、優先化する変異株および淘汰された変異株を、RG法により人工的に作出し、性状解析を始めた。 次に、昨年度シマカ由来細胞(C6/36細胞)で継代することでC6/36細胞に細胞変性効果(CPE)をより起こすようになった野生型IBAVについて性状解析を進めた。C6/36細胞でCPEを起こすようになったIBAV集団はBSR細胞やBHK-21細胞などの哺乳動物細胞にCPEを起こしにくくなることがわかった。このウイルス集団のBHK-21での感染性ウイルスの産出量とRNA複製能は、ともに、継代前のウイルス集団と比較して低下したが、C6/36細胞でのRNA複製能は上昇した。さらに、C6/36細胞では、BHK-21細胞に感染しにくい不完全なウイルス粒子を産生するようになることを示唆するデータを得た。現在、これらのウイルス集団のRNAについて網羅解析を行うため準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も昨年度に引き続き、IBAV RNA由来のデータが十分得られず、本年度に予定していたMiSeqの解析を終了することができなかった。また、当研究室で使用している安全キャビネットに予想外の不具合が発見され、当該機器の使用を一時中止していたため、当該機器を用いる実験に遅れが生じてしまった。しかし、現在は新しい安全キャビネットを購入し、元通りの研究体制を整えることができている。また、変異集団の解析についてもMiSeqでの網羅解析に加えて従来通りの遺伝子クローニング法での解析も進めている。よって、遅れているものの、R6年度は挽回できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
R6年度も引き続きmCherry遺伝子などの外来遺伝子を挿入したIBAVおよび野生型IBAVを哺乳動物細胞や節足動物細胞で継代し、新たに生じた変異集団のRNA組成の解析を試みる。特にC6/36細胞への順化によって生じた変異について、ウイルスの形態変化を含めた解析を行うとともに、C6/36細胞をはじめとした節足動物細胞に対する感染性ウイルス力価の測定方法の開発も進める。また、本年度RG法を用いて作出したさまざまな変異IBAVの解析を進めるとともに、in vivo解析と並行して、in vitroでのIBAVの変異パターンのモデリングを試みる。
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