研究課題/領域番号 |
22K05992
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
蒔田 浩平 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (40588133)
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研究分担者 |
大森 亮介 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (10746952)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 感染症数理モデル / 豚流行性下痢 / 牛伝染性リンパ腫 / 地方自治体 / 高病原性鳥インフルエンザ / 豚サーコウイルス感染症 / ヨーネ病 / 豚熱 / 過去の流行解析 / 家畜感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
感染症数理モデリングは、集団における感染症の発生状況をリアルタイムに近いタイミングで把握し、適切な対応方法を選択するのに大変有用なツールである。COVID-19対応に医療分野では力を発揮しているが、日本の家畜衛生分野においてはその応用が限定的である。 本研究では、獣医疫学者と数理科学者が協力することにより、公表情報や地方自治体などに蓄積された動物感染症の発生記録から詳細な数理解析を試みる。これにより、申請者らの危機対応能力、情報提供機関における家畜感染症疫学の理解が向上し、研究基盤が形成される。この取り組みは、国内外で次々発生する家畜感染症に対するわが国の対応能力を強化する重要な一歩になる。
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研究実績の概要 |
本研究は、地方自治体および農業共済組合の家畜診療所等の職員と、家畜感染症まん延防止のため数理モデルを活用する事例を作り出し、人材育成しようとするものである。 初年度に引き続き、いくつかの道県を訪問し、共同で研究計画をし、解析を進めている。 北海道では、全国の酪農場および肉用牛農場に広くまん延する牛伝染性リンパ腫を対象に、2戸の酪農場における過去9年間の追跡調査データから、母子感染に着目し、牛トレーサビリティのための個体識別番号を基に親子関係を特定し、牛伝染性リンパ腫ウイルス感染牛と、感染後リンパ球増多症を呈した牛の水平感染および垂直感染の程度を定量化した。2酪農場担当獣医師への聞き取りから、1農場で初乳加温による垂直感染防止が行われていたが、もう1農場では徹底されておらず、垂直感染は徹底されていない農場で顕著であった。また有意差は検出できなかったがリンパ球増多症を発症している母牛からの方が垂直感染がおこりやすいことが示唆された。本研究は2024年3月の獣医疫学会にて発表した。年度内に、さらに年齢別感染率の解析準備を進めてきた。同じく全国でまん延するヨーネ病について、石狩家畜保健衛生所を研究打合せを重ねてきた。 鹿児島県においては2013-2014年に特に流行した豚流行性下痢(PED)の発生記録の提供を県庁に依頼したが、過去に廃業されてしまった農場が多く、遡りが不可能であることが分かった。2022-2023年シーズンに多発した高病原鳥インフルエンザの家畜保健衛生業務に関連する課題に関連して研究打合せを始めた。 さらに岐阜県においては、豚熱による養豚場の殺処分後に再導入した豚集団において発生拡大した豚サーコウイルス感染症についての研究打合せを行った。また担当者の豚熱ワクチン解析で支援し、学術誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題が過去に発生した家畜感染症を対象としているため、特に力を入れて取り組んだ鹿児島県のPEDについては、養豚生産者の出荷と畜場、飼料の購入元、家畜排せつ物運搬サービス等の情報がある程度収集された段階になって、PED発生や農場主の高齢化に伴い廃業された農場の位置や流通などの情報がもう入手できないことが明らかになった。PED発生後、近年データ収集システムが大幅に更新されたため、紙媒体の情報を多忙な県庁職員に探して頂いたが、九州での豚熱発生に伴い、九州全体の豚の豚熱ワクチン接種が始まったこと、また調査期間中に多発した高病原性鳥インフルエンザの影響により、PED情報収集は頓挫してしまった。 また家畜伝染病予防法の対象疾病については、情報管理の観点からどうしても道県との調整に時間を要する。しかしながら、2年間かけて信頼関係を構築し、手続きを進めているため、最終年度に成果を残したい。
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今後の研究の推進方策 |
北海道については酪農場2戸における牛伝染性リンパ腫ウイルス母子感染に続き、年齢別感染力の解析から、それぞれの農場での感染動態の基礎情報が揃った。感染症数理モデルを構築する前に、統計モデル(統計モデルも数理モデルである)にてある程度詳細な解析は済んでおり、2024年9月の獣医学会にて発表予定である。本年度は最終年度であり、これまでの知見を統合した解析を行う。またヨーネ病解析について、北海道との調整が進んでおり、数理モデル解析を行う。 岐阜県については中央家畜保健衛生所から豚サーコウイルス感染症発生概要を入手し、導入した豚のワクチン接種中止により感染拡大した事例を検討した。これからデータを入手し、解析を行う。 鹿児島県については家畜保健衛生所職員が高病原性鳥インフルエンザ解析に取り組んでおり、現在高度な数理モデル解析に発展させるための研究打合せを行っている。年度内にこれら複数疾病の解析を終了させ、学術誌に投稿する。
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