研究課題/領域番号 |
22K05993
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
井坂 光宏 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (10759301)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 心臓病 / 骨 / 心臓 / 多臓器円環 |
研究開始時の研究の概要 |
体は小宇宙と言われるように複雑な事象が絡んでいる。そのため、単一臓器だけではその病態を把握、強いては治療を実施する事が困難である事が多々存在する。 多臓器円環(ホメオダイナミクス)とは、各臓器、組織が免疫、代謝、自律神経などの高次ネットワークを介して、時間的・空間的に変動連携する事で生命体を維持する恒常性維持機構である。近年、心臓病は単純に心臓単独の問題だけではなく、様々な多臓器円環からの病態が報告されているが、獣医医療では未だその知見は乏しい。 本研究は、多臓器円環の中でも特に心臓病と骨機能との関連性を検証することで将来的に新しい治療に役立てるための基礎的な研究を実施する事を目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、犬の粘液腫様変性性僧帽弁疾患における血清オステオクリンとオステオプロテジェリンとの関連性を検討した。骨形成や骨代謝に関与するオステオクリン(OSTN)やオステオプロテジェリン(OPG)は、ヒトでは粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の重症度や各種心臓検査との関連が報告されているが、獣医領域ではまだ知識が不足しているのが現状である。 方法について 本研究では、犬において、OSTNおよびOPGとMMVDの重症度や各種心臓検査との関連性を検討した。47頭の犬を心エコーおよび胸部X線検査に基づきACVIMコンセンサスグループ(StageB1、B2、C/D)に分類した。健康な犬(H)も含まれ、4群に分けられた。全例で血清からOSTNとOPG濃度を測定し、各種臨床検査との関係を検討した。結果は以下の通りである: MMVDによる心不全の犬では、血清中のOSTN濃度はB1群がH群より有意に低く、B2群はB1群より優位に高く、C/D群はH群、B1、B2のいずれよりも有意に高い値であった。また、血清OSTN値と左心房(LA)、左心房・大動脈比(LA/Ao)、左心室内径拡張末期・収縮末期、左心室流入E波、左心室分画短縮との間に正の相関が認められた。一方、血清OPG値はB1群に比べB2群で有意に高かったが、他の群では有意差はなかった。結論 本研究の結果は、心臓病と骨代謝の関連を示すものであり、MMVDによる心不全の犬は、ACVIMの重症度が高くなるにつれて、血清OSTN濃度が高くなる可能性が示唆された。MMVDの重症度と血清OPG濃度との間には有意な相関は認められなかった。この研究内容を第38回のWorld Veterinary Association Congressにて発表し、現在、論文を投稿する準備中であり、研究計画に対し、概ね順調に進んでいる。そのため、今年度は兎のDCMモデル、ラットの心不全モデルにおける骨への影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
犬の僧帽弁疾患を対象に検討を実施した。骨形成や骨代謝に関与するオステオクリン(OSTN)やオステオプロテジェリン(OPG)は、ヒトでは粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の重症度や各種心臓検査との関連が報告されているが、獣医領域ではまだ知識が不足しているのが現状である。方法について 本研究では、犬において、OSTNおよびOPGとMMVDの重症度や各種心臓検査との関連性を検討した。47頭の犬を心エコーおよび胸部X線検査に基づきACVIMコンセンサスグループ(StageB1、B2、C/D)に分類した。健康な犬(H)も含まれ、4群に分けられた。全例で血清からOSTNとOPG濃度を測定し、各種臨床検査との関係を検討した。結果は以下の通りである: MMVDによる心不全の犬では、血清中のOSTN濃度はB1群がH群より有意に低く、B2群はB1群より優位に高く、C/D群はH群、B1、B2のいずれよりも有意に高い値であった。また、血清OSTN値と左心房(LA)、左心房・大動脈比(LA/Ao)、左心室内径拡張末期・収縮末期、左心室流入E波、左心室分画短縮との間に正の相関が認められた。一方、血清OPG値はB1群に比べB2群で有意に高かったが、他の群では有意差はなかった。結論 本研究の結果は、心臓病と骨代謝の関連を示すものであり、MMVDによる心不全の犬は、ACVIMの重症度が高くなるにつれて、血清OSTN濃度が高くなる可能性が示唆された。MMVDの重症度と血清OPG濃度との間には有意な相関は認められなかった。この研究内容を第38回のWorld Veterinary Association Congressにて発表を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後に関して、先に述べた犬での研究成果を投稿準備中である。 また、兎のダウノルビシン誘発性拡張型心筋症(DCM)モデルにて、対照群とDCMモデル群にて血清中のオステオクリンやオステオプロテゲリンを測定し、異心臓超音波検査を実施する事で、異なる病態の心臓病に対しても心臓病と骨の機能が関連するかを今年度検討し、今年度内にその成果を発表する予定である。 次に、年度の中盤から後半にかけて、ラットの圧負荷モデルを作製し心不全を誘発させ、その後、血清を採取し、血清中のオステオクリンやオステオプロテゲリン、各種心臓バイオマーカーを測定すると共に、骨密度や骨強度を対照群、心不全モデル群、昆虫食+心不全モデル群で測定する予定である。
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