研究課題/領域番号 |
22K06000
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
小林 沙織 岩手大学, 農学部, 助教 (60566214)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 猫多発性嚢胞腎 / 個体別重症度 / 遺伝疾患 / PKD遺伝子 / 次世代シークエンス / 疫学調査 |
研究開始時の研究の概要 |
猫多発性嚢胞腎は、液体のたまった袋が無数に腎臓に作られる遺伝病で、人の自然発症モデル疾患である。平均8歳の中年齢で腎不全を発症するが、全ての猫が中年齢で末期腎不全に至るわけではなく、重症度や進行度に差が認められる。重症度や進行度に関与する予測因子は猫では解明されていないため、本研究では、遺伝子配列の変化による重症度や進行度との関連性を明らかにする。腎臓容積や血液・尿中の臨床バイオマーカーを用いて、若年時の死亡リスクを予想する精度の高い予後判別式の作成を進める。 本研究の遂行によって、猫多発性嚢胞腎の重症度や進行度の予測が可能となり、早期に治療開始すべき症例を明確にすることができると期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子配列の変化を検出し、生死判別式を作成することで、猫多発性嚢胞腎の重症度や進行度を予測する因子を明らかにすることを目的としている。 ①多発性嚢胞腎に罹患した猫の死亡年齢調査 まず、2015~2021年まで岩手大学附属動物病院でのPKD遺伝子検査が陽性判定だった症例を対象にフォローアップ調査を実施し、死亡年齢を疫学調査した。その結果、これまで経験則のみでの判断だった早期進行群の平均死亡年齢が明らかとなった。この年齢を基に、早期進行群と通常進行群にPKD陽性猫を群分けした。また、本症関連死のリスク因子を抽出した。 ②重症度の異なる猫多発性嚢胞腎における全ゲノム配列の解析 本症の個体別重症度や進行度の差異に既知のPKD1遺伝子変異の他の遺伝子変異が関与しているとの仮説を立て、次世代シークエンスを利用して、早期に死亡した多発性嚢胞腎猫(2頭)と老齢まで生存可能であった多発性嚢胞腎の猫(3頭)、本遺伝病を持たない猫(5頭)の全ゲノム解析を実施した。シーケンスリードは高いクオリティを示し、マッピングレートは94.7~98.15%と良好であった。3群において、SnpEffによるアノテーションで得られた各変異について群内共通遺伝子型変異を抽出し、プログラムggVennDiagramにて群共通・特異的遺伝子型変異を抽出した。その結果、PKD通常進行群とPKD早期進行群の比較では、早期進行群に特異的な遺伝子変異は3,286,984リードが検出された。今後は早期進行群でのみ見られた、アミノ酸配列への影響がHighかつトランケーティング変異を抽出して、これまで保存している早期進行型に分類されるPKD陽性猫のDNAを使用して、共通変異を検索していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期進行型の猫DNAが入手でき次世代シークエンスの変異解析が終了したため、計画通りに2年目では変異配列の特定ならびに多発性嚢胞腎DNAでの変異配列有無の確認に着手予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は早期進行群でのみ見られた、アミノ酸配列への影響がHighかつトランケーティング変異を抽出して、これまで保存している早期進行型に分類されるPKD陽性猫のDNAを使用して、共通変異を検索していく予定である。 また、同時にた0-3歳齢の多発性嚢胞腎猫のCT検査による腎容積、臨床データ(血中クレアチニンや尿素窒素、SDMAなどの腎機能マーカー、尿中のN-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)や尿比重、尿蛋白など)を、これまで作成した4~9歳齢における判別式に加え、より精度のある判別式の作成を試みる。
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