研究課題/領域番号 |
22K06005
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
矢吹 映 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (10315400)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 慢性腎臓病 / 猫 / 高齢 / 酸化ストレス / 腎臓 / 犬 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、犬と猫の慢性腎臓病の発生や進行に酸化ストレスがどのように関与するのかを明らかにすることを目的とする。酸化ストレスとは、生体内で活性酸素が過剰に産生され、それを消去する抗酸化能とのバランスが崩れた状態である。近年、酸化ストレスは腎疾患における新規の治療ターゲットとして注目されているが、犬と猫の慢性腎臓病では研究が進んでいない。慢性腎臓病はヒトだけでなく犬と猫でも増加の一途を辿っており、飼い主にかかる心労および医療費の負担は相当なものがある。本研究では、犬と猫の慢性腎臓病で起こる酸化ストレスの機構を解明し、さらには本疾患の進行、予後および治療効果を予測するバイオマーカーの開発に挑む。
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研究実績の概要 |
本年度は、猫の慢性腎臓病(CKD)、特に加齢により自然発生した猫の慢性腎臓病について、腎臓組織の酸化障害を免疫組織化学的に検索した。当研究室が所有している組織ブロックから10歳以上の猫の症例を抜粋し、高窒素血症を示すCKDの高齢の猫 (n = 13) と非高窒素血症の高齢の猫 (n = 7)を設定した。組織の酸化障害のマーカーとして8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OHdG)および4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)について免疫染色を行った。8-OHdGの陽性反応は、糸球体、近位尿細管、遠位尿細管、ヘンレのループおよび集合管の核で観察された。4-HNEの陽性反応は遠位ネフロンの細胞質で観察された。 腎臓組織におけるこのような酸化障害は、高窒素血症の CKD 猫だけでなく、非高窒素血症の猫でも認められた。 定量分析では、計測したすべてのパラメータにおいて、高窒素血症CKD群と非高窒素群との間に有意差は認められなかった。 この結果から、高窒素血症、非窒素血症を問わず、高齢猫の腎臓では組織の酸化障害が発生しており、CKDの初期の病理メカニズムとして重要であることが示唆された。 さらに、猫の腎疾患の原因として腎アミロイドーシスについて検索を行った。当研究室が所有している組織ブロック56症例について検索を行った。アミロイドの検出はコンゴレッド染色で行った(明視野および偏光顕微鏡)。その結果、40症例の腎臓組織にアミロイドの沈着が認められた。沈着部位は髄質の間質が多かったが、皮質の間質や糸球体にアミロイドが沈着する症例も多かった。アミロイドの沈着が認められる症例のカルテ情報を精査したところ、多頭飼育環境で腎不全により死亡した猫で特にアミロイドの沈着が顕著であった。このことから、猫の腎臓へのアミロイド沈着は、環境に依存する腎疾患の発生要因である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腎臓組織の酸化ストレスの検索は概ね順調に進んでいる。血清や尿などの臨床サンプルの収集も順調に進んでいる。一方、腎生検および病理解剖によるサンプルの収集は今年度は適応となる症例に遭遇しなかったため、収集できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
猫の慢性腎臓病の酸化障害については、組織の酸化ストレスに関連する因子について解析を進める予定であり、次年度はまずアポトーシスとの関連を検索する予定である。犬の慢性腎臓病における酸化障害についても、猫と同様の検索を開始する予定である。血清や尿の生化学分析のためのサンプル収集は継続して実施する。腎生検および病理解剖によるサンプルの収集も積極的に実施する。
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