研究課題/領域番号 |
22K06007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
向本 雅郁 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (80231629)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | NetB / 受容体 / ウェルシュ菌 / 小腸上皮細胞 / ニワトリ / siRNA / ウエルシュ菌 / 鶏 / 壊死性腸炎 |
研究開始時の研究の概要 |
鶏壊死性腸炎の原因菌であるClostridium perfringens(ウエルシュ菌)G型菌が産生するNetBは本病発症における主要な病原因子である。NetBは酵素活性を持たず、孔を形成して細胞に穴を空け、壊死させる孔形成毒素である。NetBの毒素活性は鳥類、特にニワトリに限定され、非常に種特異性が高い。この高い種特異性を含めたNetBによる病原性発現機構を分子レベルで解明することを目的として申請者は研究を実施している。本申請では、種特異性を規定するNetBの細胞への結合に関与する細胞側分子を特定することで、NetBによる鶏壊死性腸炎発症メカニズムの一端を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で作製したLMH細胞の細胞膜に対するモノクローナル抗体の中からNetBのLMH細胞への結合を阻害する抗体を選別した。LC-MS/MSにより、この抗体が認識する分子をNetB受容体候補分子とし、受容体の特定を行った。LC-MS/MSの結果からニワトリデータベースを用いて解析し、哺乳類との相同性が低い分子を検索した。その結果、同定確率が100%で哺乳類との相同性が低かったミクロソームトリグリセリド輸送蛋白(MTTP)とトランスフェリン受容体蛋白(TFRC)を受容体の第1候補として、これらのsiRNAを用いて蛋白発現を抑制されたLMH細胞におけるNetB感受性を評価した。MTTPおよびTFRCのmRNAを標的とするsiRNAを各5種類合成し、RT-qPCRによりmRNA発現量を比較することで使用するsiRNAを決定した。5nMのMTTP siRNAではsiMTTP-3は33%、siMTTP-4は37%のmRNA発現量を抑制した、TFRC-1および-2ではいずれも55%の抑制を示した。siRNA量を50nMに増量したとき、これらのsiRNAはいずれもmRNA発現量がさらに低下したため、siRNAは50nMで以降の実験に使用した。なお、LMH細胞にこれらのsiRNAを導入したとき、細胞生存率の減少がみられなかったことから、いずれのsiRNAも細胞の生存・増殖に影響しないことが明らかとなった。それぞれのsiRNAをLMH細胞に導入し48時間後に5EC50/mlのNetBを加え、24時間反応後、MTT法により細胞の生存率を測定した。その結果、無関係のsiRNAを導入したネガティブコントロール群と比較して、いずれのsiRNA導入群で生存率に有意な違いは見られなかった。以上の結果より、今回選定したMTTPおよびTFRCはNetBの受容体でないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究成果からNetB受容体はリン脂質やコレステロールではなく、鶏に特異的な動物種特異性を有していることから、蛋白あるいは蛋白を含む分子であることはほぼ間違いないと考えている。LC-MS/MS解析により100以上のニワトリ由来分子が候補分子としてヒットした。哺乳動物との比較において、MTTPは67%程度の同一性と93%以上の類似性、TFRCでは51%前後の同一性と85%前後の類似性を示し、ヒットした上位10分子の中で最も相同性が低かった。しかしながらsiRNAを用いた抑制実験において、NetBのLMH細胞への結合は抑制されなかった。今回の研究はLC-MS/MS解析によりヒットした分子を順位付けし、網羅的にNetB受容体を探索するものであることから、今回の2分子がNetB受容体でないことは想定内である。今後はデータベースでヒットした分子の中から①哺乳動物とのアミノ酸相同性の低い分子②細胞膜上に存在する分子の2点を基準にして、候補分子を絞り込み、siRNAを作製する。解析方法については今年度ほぼ確立できたので、siRNAの種類を増やし、NetB受容体の特定に努めていく。
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今後の研究の推進方策 |
ニワトリデータベースより哺乳動物とのアミノ酸相同性が低く、細胞膜上に発現する分子に的を絞ってNetB受容体候補選定する。候補分子としてS-ギセリン前駆体、FAM234A蛋白、カルシウム活性化クロライドチャネルレギュレーター1、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ-8、Eカドヘリンの5種類を選定し、それぞれ5種類程度のsiRNAを合成する。今年度と同様にLMH細胞にsiRNAを導入後、特異的mRNAの発現抑制が高いsiRNAを用いて蛍光抗体法によるLMH細胞へのNetB結合抑制あるいはMTT法による細胞致死活性の減少を指標に候補分子を探索する。受容体候補分子が見つからない場合は、さらにデータベースより新たな分子を選別しSiRNAを合成し、同様の実験を繰り返す。受容体の可能性が考えられる分子を特定した場合、アミノ酸解析によりニワトリ特異的な領域のペプチドを合成し、マウス等に免疫して抗体を作製し、さらに受容体であることの詳細な解析を進めていく予定である。
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