研究課題/領域番号 |
22K06014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
根尾 櫻子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (50532107)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 人工肝臓 / 犬 / 肝細胞 / 長期培養 / 代替法 |
研究開始時の研究の概要 |
わずか1g以下の微量の肝臓組織から長期培養可能な犬の人工肝臓作製の基盤技術を開発する。犬では、人に類似した肝炎や肝硬変といった難治性肝疾患が多く発生するため、ごく微量な犬肝組織から人工肝臓を作出できると、病態解析や治療薬の開発が進む。方法として、採取した肝組織から肝細胞を誘導し、肝細胞周囲組織に存在する細胞群と共に培養して細胞凝集塊(スフェロイド)を作製する。最終的にスフェロイドを3Dプリンターで積層し、生体内環境を長期間再現する実用性の高い犬人工肝臓を作出することを目的とする。本研究の成果は、多くの肝疾患の症例で病態解明や新規治療薬の探索を可能とし、創薬プロセスの迅速化に大きく貢献する。
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研究実績の概要 |
わずか1g以下の微量の肝臓組織からでも長期培養可能な犬の人工肝臓作製の基盤技術を開発することが本研究の目的である。犬では、人に類似した肝炎や肝硬変といった難治性肝疾患が多く発生している。すなわちごく微量な犬肝組織から人工肝臓を作出できると、病態解析や治療薬の開発が進む。その方法として、採取した肝組織から肝細胞を誘導し、肝細胞周囲組織に存在する細胞群と共に培養して細胞凝集塊(スフェロイド)を作製する。最終的にスフェロイドを3Dプリンターによって積層し、生体内環境を長期にわたり再現できる実用性の高い犬人工肝臓を作出することを目的とする。本研究の成果は、多くの肝疾患の症例で病態解明や新規治療薬の探索を可能とし、創薬プロセスの迅速化に大きく貢献する。 2022年度は、生体由来の肝前駆細胞を肝細胞に誘導する条件を検討する予定を立てていたが、犬では肝臓の薬物動体評価系が確立されていないことから、作製人工肝に関する薬物動体評価系を構築するところを先に着手するように計画を変更した。そこで、すでにスフェロイドの作製に成功している正常臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、脂肪由来幹細胞(ASC)とイヌ肝細胞を用いてスフェロイドを作製し、3Dプリンターで肝組織を構築することを試みた。3Dプリンターでの安定した積層を成功させるためにはスフェロイドの大きさおよび形態を一定にする条件を確立する必要がある。そこで、実際に生体由来肝細胞を使用する際にも応用できるように条件の検討を行った。犬人工肝に関する肝薬物代謝機能の評価系構築に関しては、質量分析装置を用いて肝臓の代謝機能を測定する方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
犬人工肝臓の作出においては最終的には生体由来肝細胞と肝周囲組織を今日培養してスフェロイドを作製し、それを3Dプリンターで積層する計画である。3Dプリンターでスフェロイドを積層するためには、スフェロイドの形態及びサイズを一定にする必要がある。そのため、培地(Willium’s E, DMEM)の検討および添加因子に関して検討し、直径500umで球形のスフェロイドを安定して多数作製することを試みた。 質量分析に関しては、犬肝癌細胞(平面培養)、犬肝細胞(平面培養)に対して、肝細胞の薬物代謝における第一相反応の酵素であるチトクロムP450(CYP)が代謝することが報告されているテストステロンを100uMまたは50uMの濃度で添加し、0,2.4.6.8時間後に培養上清を回収した。各培養上清は、質量分析装置にてテストステロンとテストステロンが代謝された場合に出現するヒドロキシテストステロンの濃度を測定した。質量分析装置を用いた薬物代謝能の検討においては、テストステロンの至適添加濃度および添加後に回収する最適時間の検討を行った。現時点ではテストステロンの添加濃度は100uM、50uMで結果に差はないことがわかった。質量分析に関しては現在も継続して検討をしている。
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今後の研究の推進方策 |
3Dプリンターで積層するために最適なスフェロイドロイドを作製し、さらに長期間人工肝が生存を維持するためには、 肝細胞周囲組織との共培養および酸素の供給やアポトーシスの抑制が有効と考えられる。したがって、スフェロイド作製の際にエリスロポエチン、増殖因子(HGF、FGF7など)やサイトカイン(IL1, 6など)を加え、長期生存を目指す。細胞内ATPレベルを測定して生存率の指標とし、肝細胞のアルブミン発現量を定量的PCRで評価し、長期生存に最適な環境を検討する。 人工肝臓の性状は、組織学的評価(光学顕微鏡、電子顕微鏡)に加えて、肝細胞特異的マーカー(AFP, アルブミン, HNf4a, CK18, CK19)と犬で報告されているCYP3A12, CYP2E1を含めて9つのCYP450s(Shou et al., 2003)発現を遺伝子およびタンパクレベルで詳細に解析することで肝細胞の性状を確認する。細胞の機能発現は、糖・脂質・薬物代謝をPAS染色、LDL取り込み能、CYP450活性の測定で確認する。 薬物代謝機能に関しては、現在はテストステロンを用いてCYP活性の有無を検討しているが、その後、アセトアミノフェン、ミタゾラム、フェノバルビタールなどの薬物を人工肝に添加し、動態を検討する。これらのことで薬物を投与する際に必須となる薬物代謝評価系を確立する基盤技術を構築する。
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