研究課題/領域番号 |
22K06016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
渡辺 俊平 岡山理科大学, 獣医学部, 准教授 (10621401)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | モルビリウイルス / 膜融合 / 麻疹ウイルス / イヌジステンパーウイルス / 種間伝播 / パラミクソウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
パラミクソ科モルビリウイルス属ウイルスは、宿主動物のSLAMを受容体として免疫系細胞に侵入・感染する。固有の宿主動物以外の動物SLAMを利用する際には、モルビリウイルスの受容体結合蛋白質(H蛋白質)に特定のアミノ酸変異が導入される。通常は、受容体とH蛋白質の強い結合刺激がある場合のみ、膜融合蛋白質(F蛋白質)の構造変化が誘導されてウイルス膜融合が完了する。一方で特定のアミノ酸変異を獲得したF(膜融合亢進型F)は、受容体とHの結合が最適化される前の弱い結合でも膜融合を誘起する可能性がある。本研究では、膜融合の亢進がモルビリウイルスの種間伝播や宿主域の拡大に与える影響について検討する。
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研究実績の概要 |
モルビリウイルスとして麻疹ウイルス(MeV)とイヌジステンパーウイルス(CDV)を選択して、ヒトおよびイヌ由来培養細胞への感染性について検討した。野生型ウイルスをヒトまたはイヌのSLAMを恒常的に発現するVero細胞(Vero/hSLAM細胞またはVero/dogSLAM細胞)に感染させてウイルスの増殖性について検討を行った。その結果、MeVは両者の細胞に効率的に感染できるのに対して、CDVはVero/dogSLAM細胞にのみ効率的に感染できることがわかった。従って本研究では、今後CDVがヒト細胞に感染するようになるためには、どのような変化が必要かに注目して検討を行う。 MeVについては膜融合を促進するF蛋白質のアミノ酸変異(T461I、N462K等)をこれまでに同定しており、同アミノ酸変異がMeV神経感染に寄与することをこれまでに報告している。(Watanabe et al., 2013, and 2015)。こうした変異蛋白質を哺乳類細胞で発現するプラスミドを既に確立している。同プラスミドを野生型MeVのH蛋白質を発現するプラスミドと共に培養細胞に形質導入して膜融合を誘起するfusion assayを実施した。同アッセイを用いてアミノ酸変異の機能解析を行ってきた。一方でCDVについては膜融合を促進するF蛋白質のアミノ酸変異は、V447Tを除いて報告がない。そこでMeVのF蛋白質とCDVのF蛋白質(CDV-F)の機能ドメインの比較を行い、MeVの461および462番目に相当するCDV-Fのヘプタッドリピート (HR) 領域に1アミノ酸変異を導入した発現プラスミドを作製した。また野生型CDV(5VD株)のHまたはFを発現するプラスミドを作製して、fusion assay を実施した。その結果、CDV-FのHR-B領域に1アミノ酸変異を導入することにより膜融合を促進することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにfusion assayを実施するのに必須のプラスミド(野生型のCDV-H, Fならびに膜融合を促進するアミノ酸変異を保有するCDV-Fを発現するプラスミド)を作製することができた。そのため今後、これらのプラスミドを用いて、CDVの変異型F蛋白質を発現させる実験により、当初の計画の実験が遂行できるため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた結果から、CDV-F HR-B領域に1アミノ酸変異を導入することで変異型CDV-F蛋白質は膜融合を亢進することがわかった。MeVのHR-B領域に1アミノ酸変異を導入した変異型MeV-Fは、膜融合が完了するまでに引き起こされるFの構造変化に必要とされる活性化エネルギーを低減して(destabilization)、pre-fusionからpost-fusion formへの構造変化が容易に進行すると考えられる。また膜融合を阻害する既知の低分子化合物やペプチドに対して耐性を持つようになることが知られている。一方でCDVの膜融合を促進する既知のアミノ酸変異や、本研究で同定した変異については、上記の性質を同様にもつかどうかわかっていない。そこで今後は、CDVの変異型F蛋白質についての機能解析を行う。またfusion assay をVero/hSLAM細胞、Vero/DogSLAM細胞で実施して、変異型CDV-Fの膜融合または細胞侵入への影響について検討を行う。加えて、CDVの組換えウイルス合成系の確立を行い、Fに変異を持つ組換えウイルスを用いた解析を目指す。
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